配信日時 2026/08/20 21:13

「頭の良さ」は一つではない ー流動性知能と結晶性知能の歴史から考えるー【カレッジサプリ】

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令和8年8月20日(第4559号)


「頭の良さ」は一つではない
 ー流動性知能と結晶性知能の歴史から考えるー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2543字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

今週は、3日連続で、
ストレングス・ファインダーの研修の実施でした。
(ありがたい限りです・・・!)

最近、ますますご依頼をいただくことが増えてきており、
その分、引き出しなども増えてきている実感があります。

もっと職場やキャリアに活用できるよう、
AIも含めた介入方法を模索していきたいな、と思った次第です。

また、朝から7kmのランニングでした。



さて、本日のお話です。

唐突ですが、大学院時代に、先生から聞いて、
救われた言葉があります。

それがこんな言葉です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「研究というのは、頭の良さは関係ない。
(ノーベル賞など目指す等なら別かもしれないけど)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

パッと質問されたときに、
複数の可能性を瞬時に思い浮かべたり、
複雑な情報を整理したり、
鋭い意見を返したりすることが得意な人がいます。

そうした姿を見るたびに「すごいなあ…」と憧れる一方で、
ちょっと悲しくなる自分にも、大学院時代にはよく出会いました。

一方、「強み」に関する質問であれば、
少し事情が変わります。

これまで何度も研修やコーチングを重ねてきたため、
「これは以前にも聞かれた質問だな」という
経験の蓄積から答えられることが増えてきました。

なるほど、もしかすると、
(ある領域をコツコツ深ぼっていくので)
「研究に頭の良さは関係ない」というのは
こういう話なのかもしれないな…などと思うのでした。


さて、そんな中、ふと思います。

我々が呼んでいる「頭の良さ」とは、一体何なのか?
知能って、一体何なんだ??…と。

そんな疑問が湧いたので、今日は、知能研究の歴史、
とりわけ「流動性知能」と「結晶性知能」について
まとめた論文からの学びを紹介してみたいと思います。

馴染みのない話ではありますが、一つのネタとして
ご参考いただけますと幸いです。それでは、どうぞ!

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<本日の論文>
タイトル:Fluid intelligence: A brief history(流動性知能:簡潔な歴史)
出版:Applied Neuropsychology: Child, 2017年
著者:Phillip Kent
所属:Private Practice, Bettendorf, Iowa
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■「知能は一つなのか」という長い論争

「知能とは何か」という問いは、
100年以上にわたって議論されてきました。

その始まりの一つが、チャールズ・スピアマンによる
「一般知能因子(g因子)」という考え方です。
(聞いたことがある人もいるかと)

要は、さまざまな知的課題の成績には
共通する傾向がある。

言語の問題が得意な人は、推理や計算の課題でも
比較的よい成績を収めることがある。

そこには、それぞれの能力の土台となる、
全般的な知能が存在するのではないか、という話です。

これが、g因子の基本的な発想です。
(我が父がいっていた「優秀なヤツは、何をやっても優秀なんだよ」
 という持論にも共通する話のようにも思える)

***

しかし、「知能を一つの能力として捉えてよいのか」
という反論も生まれました。

たとえば、サーストン(1936年)は、
知能を「言語理解」「語の流暢性」「数能力」
「空間視覚化」「記憶」「知覚速度」「推理」といった、
複数の一次精神能力に分けました。

また、ギルフォード(1967年)は、
知能を「扱う情報の種類」「頭の中で行う操作」
「そこから生み出される結果」という3つの軸に分け、
それらの組み合わせによって120以上もの知的能力があると
考えました。

このあたりは、ガードナーが提唱した
「多重知能理論」にも通じるところがあります。

私たちが普段ひとまとめにしている「頭の良さ」も、
実際には多様な能力の組み合わせなのかもしれません。



■「流動性知能」と「結晶性知能」

こうした知能研究の中で、
レイモンド・キャッテルが提唱したのが、
「流動性知能(Gf)」と「結晶性知能(Gc)」という考え方です。

ーーーーーーーーーーー
◯流動性知能とは・・

これまでに経験したことがない問題に向き合い、
規則性を発見したり、情報を一時的に保持しながら
考えたりする力。

いわば、初めて見る問題を、その場で解いていく力です。

冒頭で述べた、「質問された瞬間に複数の可能性を考える」
「複雑な情報を素早くまとめる」といった能力も、
こちらに関係していると考えられます。

◯結晶性知能とは・・・

教育や文化的活動、仕事や生活上の試行錯誤などを通じて
蓄積されてきた、知識やスキル、判断力を指します。

語彙や一般知識だけでなく、
「この状況では、こうするとよい」という経験則も、
その一部です。

(たとえば、私が強みに関する質問を受けたとき、
過去の研修やコーチングの経験をもとに答えられるのは、
まさに結晶性知能の働きといえそうです)
ーーーーーーーーーーーー

つまり、生まれ持った能力だけで知能が決まるのではなく、
学んだことを使い、試行錯誤し、積み重ねることで
育っていく知能(結晶性知能)もある、ということです。



■現在は「3層構造」で考えられている

その後、知能研究は、キャロルの「3層理論」によって
統合的に整理されていきました。

1)最も具体的な層に、語彙力や記憶、推理などの個別的な能力

2)中間層に、流動性知能や結晶性知能といったより広い能力

3)最上位に、それらに共通する一般知能因子(g)がある

という構造です。

つまり、「知能は一つである」という考え方と、
「知能には複数の種類がある」という考え方の
どちらか一方を選ぶのではなく、

大きな共通因子もあれば、その下には複数の能力があり、
さらに具体的なスキルへと枝分かれしているという、
階層的に理解しようとするのが、現在の代表的な知能観の一つとのこと。



■まとめと感想

正直に言うと、今回の論文は、
知らない研究者や理論が次々と登場し、
ぼんやりとしか理解できない部分も多くありました。

知能については、長い研究の歴史がありながら、
今なお多くの論争が続いているようです。

知能という身近なテーマでさえ、
まだ完全に統一された見解には至っていない、
そのこと自体が、なかなか興味深いと感じます。

そして、個人的に救いを感じたのが、
「結晶性知能」という考え方でした。

新しい問題を瞬時に解く力については、
年齢や生理的な影響を受ける部分もあります。

しかし、知識や経験、判断力は、
学習や実践を続けることで蓄積していくことができます。

これは、感覚的にもわかります。

一度で理解できなくても、何度も触れる。
うまく答えられなくても、経験を振り返る。
学んだことを、誰かに話したり、文章にする。

そうした地味なプロセスが、
自分の中で「結晶」になるのだと思います。
(というか、そう思いたい…!)、

たとえ歩みがゆっくりでも、
自分なりの学びの探求を続けていけばよいのだと、
少し勇気をもらえる気がした論文でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:223km

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