配信日時 2026/08/19 18:04

「マイクロカウンセリング」とは何か? ートレーニングのやり方とその効果ー【カレッジサプリ】

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令和8年8月19日(第4558号)


「マイクロカウンセリング」とは何か?
ートレーニングのやり方とその効果ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3156字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

先日より2日間で、某企業様にて
ストレングス・ファインダー研修の実施でした。

参加者が女性の一般職とのことで、
最近は管理職の皆様が多かった中で、
大変新鮮な時間をご一緒させていただきました。

改めてご参加頂きました皆さま、
立ち会いいただきました人事のF様、B様、O様はじめ、
誠にありがとうございました!

また研修後は、夕方から10kmのランニングでした。



さて、本日のお話です。

本日は「マイクロカウンセリング」という、
対話の技法についての論文をご紹介します。

「聞く技術」は、今でこそトレーニングで習得できるものだという
認識が広がっていますが、

その源流ともいえる1970年代からの
マイクロカウンセリングという技法が、実際にどう習得されていくのか、
そのトレーニング効果を検証した論文です。

(キャリアコンサルタントの資格を勉強したことがある方なら、
一度は目にしたことがあるはず…!)

聞く技術は本当に身につけられるんだ、という意味で
その方法論が参考になりましたので、ご紹介したいと思います。

それでは、早速中身を見てまいりましょう!

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■今回の論文
・タイトル:Integrating Research on the Microcounseling Program: A Meta-Analysis(マイクロカウンセリング・プログラムに関する研究の統合:メタ分析)
・出版:Journal of Counseling Psychology, 1989年, Vol. 36, No. 2, pp. 213–222
・著者:Stanley B. Baker, Thomas G. Daniels
・所属:Pennsylvania State University/Memorial University of Newfoundland
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・「聞く技術」を段階的に教えるマイクロカウンセリング・プログラムについて、
 81件の研究をまとめて分析(メタ分析)した論文

・全体としての効果は「効果大」と呼べるレベルで、
トレーニングとしてしっかり機能することが確認された

・模擬的な場面での評定に比べ、
 実際のクライエントを相手にすると効果はやや小さくなる

・基礎的なスキルであれば、
 短時間の訓練でも十分な成果が得られる



■研究の背景 ー「聞く技術」は、本当に教えられるのかー

カウンセリングのトレーニングは、
長い年月をかけて構造化されたアプローチへと進化してきました。

Rogers(1957)が体系的なパラダイムを打ち立て、
Carkhuff(1969)らを経て、
Ivey(1968, 1971)がマイクロカウンセリング・プログラムを
世に送り出しています。

このマイクロカウンセリングの手法は、
特定のスキルを一つひとつ段階的に統合していくもので、
モデリング(お手本を見て学ぶこと)、練習(リハーサル)、
フィードバック、模擬セッションを基本原理としています。

バンデューラの社会的学習理論などが、
その土台にあるようです。

これまでの「聞く技術」に関するレビューは、
文献選定の基準があいまいだったり、
レビュアー自身の主観が入り込みやすかったりと、
いくつかの限界を抱えていました。

そこでこの論文では、Glass(1976)のエフェクトサイズ(ES)という
統計指標を使い、プログラム全体の効果をできるだけ客観的に、
数字で統合してみようという試みがなされています。


■研究の方法 ーどうやって調べたのかー

データベース検索や引用文献の追跡、過去のレビュー、
IveyやBaker本人のコレクションなどから146件の研究を洗い出し、
そこから必要なデータが揃う81件
(実験デザイン65件、準実験10件、前実験6件)を
最終的な分析対象としました。


<主な結果(わかったこと)>

■わかったこと1:全体としては「効果大」

81件全体の効果量は0.83と、
Cohenの基準でいう「効果大」に分類される数値でした。

マイクロカウンセリングというトレーニングは、
統計的にみてもかなりしっかりと機能しているといえそうです。


■わかったこと2:誰を対象に、誰を相手にするかで違いが出る

対象となる受講者によって効果の大きさには差がありました。

学部生は、カウンセリングを学ぶ学生、成人、未成年よりも
有意に高い効果を示しています。

一方、実験デザインの違いや対照群の性質、
フォローアップまでの期間による差は、
いずれも有意ではありませんでした。

興味深いのは、評定の際に
どんなクライエントを相手にしたかによる違いです。

模擬的なクライエントを相手にした評定、
実際の(ナチュラリスティックな)クライエントを
相手にした評定よりも有意に高い効果を示していました。

練習場面ではうまくできても、
実際の現場では力を発揮しきれない、
ということが起こりやすいのかもしれません。



■わかったこと3:基礎スキルなら、短時間でも身につく

訓練時間についても比較がなされていますが、
短時間(平均1.14時間)、中程度(平均4.32時間)、
長時間(平均15.88時間)のあいだに有意な差は見られませんでした。

基礎的なスキルと、より高度なスキルの比較でも
有意差はなかったそうです。

少なくとも基礎的な「聞く技術」であれば、
短い時間の訓練でも十分に効果が期待できる、
ということを示しているように思います。

これまでの定性的なレビューにありがちだった主観的な偏りを排し、
マイクロカウンセリングの研究領域全体に
初めて体系的な定量分析(メタ分析)を適用した点に、
この研究の新しさがあるとのことでした。


■(補足)マイクロカウンセリングって、具体的には何を教えるの?

この論文自体は「個々の技法の解説」ではなく
「教育手法(トレーニング法)としての効果検証」に焦点を当てているため、
扱っているスキルが少しイメージしづらいかもしれません。

日常のコミュニケーションを小さな単位(マイクロスキル)に細分化し、
一つずつ段階的に身につけていく、
というのがこの手法の考え方です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1)基礎的なスキル(Lower-order skills/低次スキル)
・関わり行動:適切な視線、身体の向き、うなずき、声のトーンなど
・オープン質問:「どのように感じましたか?」など、自由に応答できる問いかけ
・言い換え・要約:相手の話の要点を整理して繰り返すこと
・感情の反映:「それはとても悔しかったのですね」と、感情を汲み取って伝えること

2)発展的なスキル(Higher-order skills/高次スキル)
・直面化:相手の言動の矛盾を優しく指摘し、自覚を促すこと
・解釈・再フレーム:別の視点や意味づけを提示すること
・情報提供やテスト結果のフィードバック:検査結果などをわかりやすく伝えること

3)トレーニングの手順
・講義・解説:スキルの意味や効果を学ぶ
・モデリング:お手本(ビデオや実演)を見る
・練習(リハーサル):ロールプレイを行ってみる
・フィードバック:映像を見返したり、指導者からアドバイスを受けたりして修正する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


■まとめと感想

これまでの定性的なレビューにありがちだった主観的な偏りを排し、
マイクロカウンセリングの研究領域全体に
初めて体系的な定量分析(メタ分析)を適用した点に、
この研究の新しさがあるとのことでした。

これまで私が学んできたコーチングのトレーニングを振り返ってみると、
やっていたことは、まさにこの構造そのものでした。

・講義・解説(スキルなどを学ぶ)
・講師のロールプレイを見て学ぶ(お手本を見る)
・練習(実際にロールプレイングをやってみる
・フィードバック(3人1組で伝え合ったり、映像に撮って後から見返したりする)

まさに今、コーチングの研修などで
当たり前のようにやっていることが、ここから来ているんだ、と、
なんだか歴史を感じておりました。

これから先は、AIを使った学習効果の研究なども、
きっと増えていくのだろうなと、そんなことも思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:223km

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