配信日時 2026/08/18 08:56

初対面の相手に「傾聴」だけでは、魅力が伝わらない?! ーアクティブリスニング研究からの示唆ー【カレッジサプリ】

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令和8年8月18日(第4557号)


初対面の相手に「傾聴」だけでは、魅力が伝わらない?!
ーアクティブリスニング研究からの示唆ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3456字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は朝から8kmのランニング。
また1件のアポイント、また研修の準備、執筆などでした。



さて、本日はある論文のご紹介をしたいと思います。

テーマは「アクティブリスニング(傾聴)」です。

論文の内容としては、初対面の会話における
「アクティブリスニング」がどういった効能を持つのか
ということに関する研究です。

コーチングや1on1などで、
「アクティブリスニング(積極的な傾聴)が重要である」
ということは、多くの方にご存知のことかと思います。

ただ、特に「初対面の相手」に対して、
「アクティブリスニング」とはどれほど効果的なのでしょうか?

初対面ではなんとなく、「傾聴」よりも、面白い話とか、
場を盛り上げたり、色んな情報提供の方が好印象なのではないか……
そんなふうに感じないこともありません。

そうした中で、初対面で
「アクティブリスニングを行った場合」と
「単純な相づち」と「アドバイスを行ったとき」、
どのような印象の違いが生まれるのかを検証した研究が本論文です。

一体どういった結果になったのでしょうか。
早速内容を見てまいりましょう。

それでは、どうぞ!

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今回の論文

・タイトル:The Relative Effectiveness of Active Listening in Initial Interactions(初対面のコミュニケーションにおけるアクティブリスニングの相対的有効性)
・出版:International Journal of Listening, Volume 28, Issue 1, 2014
・著者:Harry Weger Jr., Gina Castle Bell, Elizabeth M. Minei, & Melissa C. Robinson
・所属:セントラルフロリダ大学、ウェストチェスター大学、バルーチ校
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・初対面の会話で「アクティブリスニング」「助言」「単純な相づち」の3つの応答を比較した実験研究

・アクティブリスニングを受けた人は、他の2条件よりも有意に「理解されている」と感じやすかった

・会話満足度や社会的魅力度では、アクティブリスニングと助言はほぼ同等の効果を示した

・単純な相づちだけでは、理解度・満足度・魅力度のいずれにおいても評価が最も低かった



■研究の背景と目的

アクティブリスニング、つまり言い換えや適切な質問、
ほどよい非言語的な関与は、医療、教育、カウンセリング、
営業、危機交渉など、実に多くの実務・学術分野で
「必須のスキル」として推奨されてきました。

コミュニケーションの教科書でも、
もはや定番のテーマといっていいでしょう。

けれども、初対面の対話という場面において、
アクティブリスニングが本当にアドバイスや相づちよりも
優れているのかを、直接比較して確かめた実験研究は、
実はそう多くはなかったのです。

これまでの研究の多くは、
専門家とクライアントという非対称な関係や、
指導者による評価、あるいは自己報告に頼るものが中心でした。

そこで本研究は、
対等な立場(初対面のピア=同世代の学生同士)という、
ごくプレーンな対人コミュニケーションの場面において、
「アクティブリスニング」「助言」「単純な相づち」
という3つの応答戦略が、

⑴理解された感、⑵会話の満足度、⑶社会的魅力度

に、どのような違いをもたらすのかを
直接検証しようとしました。



■研究の方法

参加者は、米国南東部の大学で
コミュニケーション基礎講座を受けていた学部生115名。

彼らは3つの条件のいずれかにランダムに割り振られ、
訓練を受けたサクラ10名と、
3〜7分間の初対面の対話を行いました。

サクラは、視線や態度といった非言語的な関与のレベルは
すべての条件で一定に保ちつつ、
言葉の応答スタイルだけを次のように変えています。

⑴アクティブリスニング条件:
相手の話を自分の言葉で言い換え、
さらに詳しく話せるよう質問を投げかける

⑵助言条件:
話題や悩みに対して、
具体的な解決策や行動を提案する

⑶単純な相づち条件:
うなずきや「なるほど」「わかりました」
といった短い相づちのみ返す

対話のお題は「今週末の予定」と
「入学以来、大学で一番不満だったこと」の2つ。

この会話のあとに以下の3つを測定しました

・理解された感(FUMS)
・会話満足度(Com-Sat)
・社会的魅力度(Social Attractiveness Scale)

上記の3つの尺度で評価が測定されました。



■アクティブリスニングの「3つの構成要素」とは

ちなみに、アクティブリスニングとは、
以下の3つの要素から構成される
複合的な応答行動と定義されています。

1. 中〜高度の非言語的関与:
   視線や態度で関心を示す。

2. 言語的言い換え(パラフレーズ):
   話し手が言った内容や感情を自分の言葉で言い換えて打ち返す
   (例: 「〜ということで苦労されたのですね」)。

3. 質問による深掘り:
   話し手がさらに自分の体験や感情を詳しく話せるよう 質問を投げかける。



<主な結果(わかったこと)>

以下、論文における主な結果を整理いたします。


■わかったこと1:理解された感は、アクティブリスニングが頭ひとつ抜けていた

分析の結果、応答条件による有意な差が見られました。

アクティブリスニング条件を受けた参加者は、
単純な相づち条件はもちろん、
助言条件を受けた参加者よりも、
有意に高い「理解されている感覚」を報告していたのです。

つまり、相手の話を言い換え、
深掘りする質問を投げかけるという行為そのものが、
「あなたの話をちゃんと受け止めていますよ」という
メッセージとして、はっきり伝わっていたということですね。



■わかったこと2:会話の満足度は、アクティブリスニングと助言が同程度

会話満足度についても、条件間に有意差がありました。

アクティブリスニング条件は
単純な相づち条件よりも有意に満足度が高かったのですが、
興味深いことに、助言条件との間には
統計的な差が見られませんでした。


■わかったこと3:社会的魅力度も、アクティブリスニングと助言が拮抗

社会的魅力度についても同様の傾向でした

アクティブリスニング条件は
単純な相づち条件よりも有意に魅力度が高かった一方、
助言条件との差は有意ではありませんでした。



■考察:なぜ「助言」もここまで健闘したのか

本研究がとりわけ興味深いのは、
アクティブリスニングの最大の強みが
「相手に『理解されている』という確信を与える力」
にあると明確に示した点です。

言い換えと深掘りの質問は、
相手の体験を承認し、肯定する強い力を持っています。

一方で、会話満足度と社会的魅力度において、
「アクティブリスニングと助言がほぼ同等の効果を示したこと」
については、初対面の場面では人々が相手の
「積極的な関与そのもの」を評価しているのではないか、
と論文は考察しています。

単なる相づちを超えて、言い換えるにせよ、
解決策を提案するにせよ、
「こちらに関心を向けて、何かを返してくれている」
という行為自体が、好意的に受け止められるということですね。



■まとめと感想

従来のアクティブリスニング理論(コーチングを含め)では、
「求められていない助言」は聞き手の自己本位な介入として、
どちらかというと避けるべきものとされてきました。

しかし、初対面の一般的な対話という文脈では、
適切なタイミングで発せられる助言は不快感を与えるどころか、
むしろ親しみやすさや「会話への参加」として
受け取られることが示唆された点が、
本論文のポイントの一つです。

たしかに、コーチングを学びたての頃、
「傾聴に徹しなければ…!」と思うあまり、
自分の意見をまったく言わなくなってしまう場面を
ちらほら見ていました。

(「コーチングやりすぎ症候群」と勝手に呼んでおります)

ただ、実際は「え、そんなに傾聴に徹する…?」
と思うケースもあるわけです。

特に今回のような「初対面」で
「比較的ライトな話題」の場合は、
アクティブリスニングも大事ですが、
助言のように自分から関わっていく姿勢もやっぱり大事です。

聞きながら、自分の意見も伝えていく。
シャバの感覚、大切にしていきたいものだな、と思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:206km

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