配信日時 2026/08/17 07:12

時間管理をする人は、ほんとうに仕事の成果が高いのか? —5万人の実証研究でわかった答えとはー【カレッジサプリ】

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令和8年8月17日(第4557号)


時間管理をする人は、ほんとうに仕事の成果が高いのか?
—5万人の実証研究からわかった答えとはー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3765字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日日曜日は、大学院の仲間と、
26kmのランニングでした。

その後、家族で「トミカ博」なるものへ行き、
夕方からは近所のパパ友とお食事会でした。



さて、本日のお話です。

本日は、時間管理に関するある論文を
紹介したいと思います。

私の前職は「7つの習慣」の研修を扱う会社だったのですが、
そこで有名なモデルとして
「時間管理のマトリクス」というものがありました。

”第二領域(緊急ではないけれど重要なこと)に時間を費やし、
それを意識的に行うことが生産性を高める”

というお話です。

第一領域(緊急かつ重要)や
第三領域(緊急だけど重要ではない)に翻弄されていると、

だんだんと自分が疲れたり、
追い込まれたりする感覚が出てくる、
多くの人がご存知のモデルなのではないかと思います。

では実際に、

「時間管理を行うことは仕事の成果(あるいは学業)につながるのか?」
かつ、「人生の幸福度」にはどう関わるのか。

これらを、5万人以上のサンプルを対象に
検証したメタ分析があります。

結論をお伝えすると、

「時間管理がもたらすのは、仕事の生産性よりも、
 ウェルビーイングの向上である」
 
という意外な事実でした。
(つまり、目的としていたことの主従の逆転があったというお話です)

早速中身をみてまいりましょう。それでは、どうぞ!

===================
<今回の論文>

・タイトル:Does time management work? A meta-analysis
(タイムマネジメントは効果があるのか?メタ分析)

・出版:PLOS ONE, 2021年1月11日公開

・著者:Brad Aeon, Aïda Faber, Alexandra Panaccio

・所属:Concordia University, Sir George Williams Campus
(カナダ・モントリオール)/FSA Ulaval, Laval University
(カナダ・ケベックシティ)
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・時間管理は仕事のパフォーマンスや学業成績と
 中程度の正の相関を示すが、
 それ以上にウェルビーイング(特に人生の満足度)を高める効果が大きい

・時間管理と職務パフォーマンスの関係性は、
 1990年代から現代にかけて年々強まっている

・個人差の中では「誠実性」だけが
 時間管理と非常に強く関連しており、
 性別や年齢、既婚・未婚などはほとんど関係がなかった

・時間管理は「時間を構造化する」「時間を防衛する」
 「変化に適応させる」という3つの意思決定から成る



■研究の背景と目的 -時間の貧困問題ー

現代社会では、「慢性的な時間の貧困」が
深刻化していると言われます。

仕事も余暇も、どんどん高密度になっていく感覚、
皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか。

そうした中で、時間管理は「万能薬」のように
メディアやビジネスの現場で推奨されてきました。

けれど実は、時間管理と職務パフォーマンスの関係を
調べた実証研究は、結果が一貫していなかったそうです。

効果があるとする研究もあれば、
関係が見られないとする研究もある。

そこで本研究は、5万人以上のサンプルを含む
大規模なメタ分析によって、
「時間管理は本当に効果があるのか」という根本的な問いに、
定量的な答えを出そうとしたのです。



■研究の方法 ーどうやって調べたのかー

研究チームは、複数の学術データベースを用いて
「time management」というキーワードで検索し、
さらに主要な3つの時間管理尺度(後述します)を使った研究も追いかけました。

最終的に11,683件から重複などを除き、
条件を満たす158の研究(効果量データ490件、総被験者数53,957名)を
分析対象としています。

パフォーマンスは
「成果ベース(職務評価やGPAなど)」と
「行動ベース(モチベーションやプロアクティブさ、
先延ばしの逆転など)」。

ウェルビーイングとディストレスも、
それぞれポジティブな指標とネガティブな指標に分けて
コーディングされました。



■「時間管理」とは、そもそも何なのか

本論文では、タイムマネジメント(時間管理)を
こう定義しています。

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「個人が変化する条件に合わせて、自らの時間を構造化し、
防衛し、適応させるために行う意思決定の一形式」
-----------------------

具体的には、次の3つの行動から成るそうです。

----------------------------
<時間管理の3つの行動>

⑴時間を構造化すること(Structuring time)

スケジュール帳やプランナー、日課を用いて、
自分の活動を体系的に時間枠へ割り当てる行動。
「毎日のルーティンに従って行動する」といったことですね。

⑵時間を防衛すること(Protecting time)

他者からの無駄な介入や割り込みを退け、
自分の作業時間を確保するための行動。

「重要でない依頼にハッキリと『いいえ』と言う」
「家族との夕食中は仕事の携帯電話の電源を切る」など、
境界線を引くことです。

⑶変化する条件に時間を適応させること(Adapting time)

予定の変更や予期せぬ出来事に対して、
柔軟に予定を評価し、修正していく行動。

「スキマ時間を有効活用する」
「日々のスケジュールを定期的に見直す」といったものです。
----------------------------

***

<主な結果(わかったこと)>

では研究からどのようなことがわかったのでしょうか。

主な結果を3つ整理して、紹介いたします。



■わかったこと1:「職務パフォーマンス」への効果は中程度

「職業的パフォーマンス」全体では、
時間管理と中程度の正の関連(r = .259)が見られました。

特に「先延ばしの低減」との関連は強く(r = -.490)、
「学業面」でもGPAや通常のテストの点数とは
正の相関がある一方で、
標準化テストとの関連は見られなかったそうです。

これは、時間管理が
「知識を積み上げていくタイプの成果」を支えるのに
向いている一方、
地頭に近い流動性知能にはあまり作用しない、
ということかもしれません。

また、興味深いのは、
時間管理と職務パフォーマンスの関係が、
1990年代から現代にかけて年々強まっている
という点です。

柔軟で自律的な働き方が広がるにつれ、
自分で時間を管理する力の重要性が増している、
ということなのでしょう。

時間管理と職務パフォーマンスの相関は年々高まっている


■わかったこと2:実は「ウェルビーイング」との関連のほうが高い

そして、この論文で最も印象的だったのがここです。

時間管理は、パフォーマンス以上に、
ウェルビーイングとの関連が強かったのです(r = .313)。

中でも人生の満足度との関連(r = .426)は、
仕事満足度との関連(r = .248)より、
実に72%も高かったといいます。

ディストレス(心理的苦痛)についても、
心理的苦痛や退屈感、ストレス、バーンアウト、不安、
ワークライフコンフリクトなど、
幅広く軽減する関連が見られました(全体でr = -.222)。

論文では、この非対称性についても丁寧に考察されています。

ウェルビーイングを支える自己効力感や自己決定感は、
時間管理によって直接高めやすい一方、
ディストレスの要因となる神経症傾向や不測の出来事は、
時間管理だけではコントロールしきれない。

だから、時間管理はウェルビーイングを高める力のほうが
相対的に強く出る、というわけです。


■わかったこと3:誰にとって時間管理は効きやすいのか

個人差の中で、時間管理と圧倒的に強い相関を示したのが
「誠実性(Conscientiousness)」という
パーソナリティ特性でした(r = .451)。

また、「内省的統制型
(自分で物事をコントロールできているという感覚)」や
「自尊心」とも強い関連が見られています。

一方で、年齢や教育水準、子どもの数、
既婚・未婚といったデモグラフィックな要因は、
ほとんど有意な関連を示しませんでした。

性別についてはわずかに女性のほうが時間管理スコア
が高く、その差は近年拡大傾向にあるとのことです。

意外だったのは、職務自律性(仕事の裁量の大きさ)が、
予想に反して有意な相関を示さなかった点です。

裁量があるからといって、
必ずしも時間管理がうまくいくわけではない、
ということなのかもしれません。



■まとめと感想

改めて思うのが、
時間管理を行うための、この3つの方法の大切さです。

まず、「時間を構造化する」こと。

スケジュール帳やプランナーなどで、
自らの活動を時間枠に割り当てること。

そして、時間を防衛すること。

自分にとって大事なことのために、時間を確保すること。

そして、変化する中で
うまくタイムスケジュールを調整していくこと。

これを行っていくと、「統制の所在」、
つまり自分がコントロールできているという感覚が高まり、
それがウェルビーイングにつながっていく——ここがとても重要なことでした。

時間を守る意志を持つこと。
その大切さを感じさせられた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:198km

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