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令和8年8月13日(第4553号)
性格は意志の力で変えられるのか? ー16週間の実証研究でわかった答えー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3875字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、お盆期間とのことで、
アポイントや研修はなく、執筆を進めておりました。
まだまだ先は長いですが、粛々と進めていきたいと思います。
その他、8kmのランニング。
*
さて、本日のお話です。
突然ですが、皆さまに質問です。
「自分の性格を変えたい」と思ったことはあるでしょうか?
・・・
いかがでしょう。たぶん、「かつてはあった」という人もいたのではと思います。
たとえば、「もう少し外向的になりたい」
「もっと堂々と、自信を持ちたい」みたいな話ですね。
一般的に、明るく外向的であることが望ましい、
とされる場面も少なくありません。
もちろん、それは一つの価値観にすぎませんが、
それでも「今の自分とは少し違う自分になりたい」と
思った経験がある人は、少なくないのではないかと思います。
私自身も振り返ると、「もっと堂々としていたい」
「対立を恐れない強さがほしい」と思ったことが、何度もありました。
では、そもそも性格とは変えられるのでしょうか?
今日は、そんな問いに真正面から向き合った、
興味深い論文をご紹介したいと思います。
16週間にわたり、「自分が変えたいと思う性格」を
追いかけたところ、実際にパーソナリティ特性が
変化していった、という研究です。
ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!
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<今回の論文>
・タイトル:Volitional Personality Trait Change: Can People Choose to Change Their Personality Traits?(意志によるパーソナリティ特性の変容:人は自らの選択でパーソナリティ特性を変えることができるか?)
・出版:Journal of Personality and Social Psychology, 2015年(Vol. 109, No. 3, pp. 490–507)
・著者:Nathan W. Hudson & R. Chris Fraley
・所属:イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois at Urbana-Champaign, Department of Psychology)
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・多くの人が「自分のパーソナリティ(性格)を変えたい」と願っているが、
実際に変えられるのかを16週間の縦断実験で検証した研究
・「変わりたい」という変容目標を持つだけで、
その後のBig Five特性が実際に変化することが確認された
・単なる目標設定よりも、「もしAなら、Bする」という
具体的な実行意図(If-thenプランニング)を用いた介入の方が、
はるかに大きな変容効果を生んだ
・行動の変化が特性を変え、特性(自己概念)の変化がまた行動を変える、
という双方向のプロセスが確認された
・目標が達成される(特性が育つ)につれて、
「もっと変わりたい」という欲求自体が自然と落ち着いていく様子も見られた
■研究の背景と目的
パーソナリティ特性(性格特性)というと、
これまで心理学では「比較的安定したもの」として扱われてきました。
ですが実際には、大人になる過程や、
仕事や恋愛といった特定の役割を得ることによって、
緩やかに変化していくことも知られています。
そして、現代人の実に87%〜97%以上が
「自分の性格(外向性や誠実性など)を変えたい」と
望んでいるというデータもあるのだそうです。
ただ、ここには理論的な対立もありました。
マクレーとコスタ(McCrae & Costa, 2008)らは
「パーソナリティ特性は生物学的にプログラムされた固有の構造であり、
意志の力で意図的に変えることはできない」という立場を取っています。
一方で、認知や行動、役割への働きかけによって
特性が変化しうるとする研究も存在していました。
つまり、「自分が変わりたいと願う気持ち」だけで、
実際に特性が変わっていくのかどうか。
ここについて、直接検証した研究はこれまでなかったのです。
この研究では、大きく次の3点を明らかにしようとしています。
1.パーソナリティを変えたいという「変容目標」が、
その後の特性の実際の変化を予測するのかどうか
2・ 望む変容を後押しする心理的な介入(目標設定や実行意図の導入)が、
どれほど効果を持つのか
3.意志による変容が、どのような心理的プロセスで生じるのか
(行動が特性を変えるのか、それとも自己概念の変化が行動を変えるのか)
■研究の方法
16週間の学期を通じて、
2つの密な縦断ランダム化実験が行われました。
研究1は、大学生135名を対象に、
毎週1回、最大16回にわたるオンライン調査を実施。
参加者はランダムに2群に分けられ、
介入群は毎週、変えたい特性とそのための「3つの行動方法」を記述し、
対照群は自身の強みや特徴について毎週記述しました。
研究2は、大学生151名を対象に、
研究1をより精緻にした形で実施されました。
ここでの介入群には、研究1の「曖昧さ」を改善するため、
「もし〇〇という状況になったら、△△する(if-thenプランニング)」
という、具体的で測定可能な実行意図
(Implementation Intentions)を作成するトレーニングが課されました。
また、日常の具体的な行動(たとえば「昨日、人とよく話したかどうか」など)
についても、毎週チェックする形で追跡されています。
【主な結果(わかったこと)】
以下、研究からわかったことのポイントをまとめます。
■わかったこと1:変容目標を持つ人ほど、実際に特性が変化していた
研究1では、初回に測定した「変わりたい」という気持ちの強さが、
その後の外向性・協調性・誠実性・感情安定性の伸びを
有意に予測していました(開放性のみ有意差なし)。
研究2ではこれがさらに拡張され、
開放性を含むBig Five全ての領域で、
変容目標がその後の特性の伸びを
予測することが確認されています。
つまり、「変わりたい」と願うこと自体が、
単なる願望にとどまらず、
実際の変化の兆しとして機能していたということです。
■わかったこと2:願うだけでは足りない。「If-thenプランニング」が鍵だった
研究1で行われた、比較的曖昧な
「〜に気をつけよう」といった目標設定は、
統計的には無効、もしくは一部の特性では
むしろ目標達成を妨げる結果になってしまいました。
漠然とした目標を立てただけで「もう変わった気」になってしまい、
かえって行動のモチベーションが下がってしまった可能性がある、
と論文では考察されています。
一方で、研究2の「If...Thenプランニング」形式の
実行意図を用いた介入では、
外向性・誠実性・感情安定性において、
非常に強力な促進効果が確認されました。
例えば外向性を高めたいと望んだ参加者の場合、
対照群は16週間で約0.21標準偏差の増加にとどまったのに対し、
介入群では約0.45標準偏差と、
2倍以上の変化を遂げていたことがわかりました。
■わかったこと3:行動と特性は、互いに影響し合いながら変わっていく
もう一つ興味深いのは、
行動の変化が後の特性の変化を導くという流れと、
特性(つまり自己概念やアイデンティティ)の変化が
後の日常行動の変化を導くという流れの、両方が確認されたという点です。
これは「共応的プロセス」と呼ばれるもので、
行動と自己認識が、まるで両輪のように支え合いながら
パーソナリティを形作っていく様子がうかがえます。
さらに、目標としていた特性が実際に育っていくにつれて、
「もっと変わりたい」という変容目標自体が
自然と落ち着いていく様子も見られました。
これは、目標が満たされていく過程として理解できそうです。
■まとめと感想
以前、性格の強みも「状態」から「特性」への
連続体であるという論文をご紹介したことがあります。
参考:強みを「状態-特性の連続体」で考える ~書籍『ストレングスベースのリーダーシップコーチング』(3)
https://note.com/courage_sapuri/n/n6c57f217aa66
状態というのは一時的で比較的不安定なもの、
特性というのは安定的で、あまり変わらないもの。
ただ、そこは連続体であるように、
状態がずっと続いていけば、やがて特性へと、
つまりその人にとって変わりづらい、
安定したものへと定着していきます。
人はもちろん、生まれ持った気質のようなものを持っています。
ですが、それをある特定の環境で鍛え続けていくと、
それが一つの安定した性格として定着していく——
そうした可塑性、つまり「変わりうるもの」でもあるということが、
研究者たちによっても語られているのです。
これは、私自身とても納得のいくところがあります。
自分のことで恐縮ですが、
私はもともと「勤勉性」という特性は
高くなかったと思います(DNA測定でもそんなのが出たり笑)。
適当だし、すぐに諦めたくなるし、
何かを継続すること自体が難しいと感じるタイプです。
ただ、13年前からメールマガジンを書き始め、
現在は4,500号を超えて、毎日欠かさず書き続けています。
そうすると、さすがに
「自分は何かを継続する能力があるのではないか?」と、
脳が勘違いし始めている気がするのです。
行動を継続することで、持ち合わせていなかったものが、
今では自分の一つのパーソナリティ特性として
育っているような感覚があります。
まさに「If-thenプランニング」(=朝起きたらメルマガを書く)、
そのものだったのだと思います。
性格は変えられるのか、という問いをめぐっては、
他にもさまざまな研究があります。
またこれからも、引き続き探求していきたいと思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/n2bbd8b683c32
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【編集後記】
◯今月のランニング:143km
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