配信日時 2026/08/09 19:22

今週の一冊『おじいちゃん』 【カレッジサプリ】

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令和8年8月9日(第4549号)


今週の一冊『おじいちゃん』


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2254字/読了時間3分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日は、研修プログラムの作成、
また子どもと遊び、そして夕方から26kmのランニングでした。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。

今週の一冊はこちらです。

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『おじいちゃん〈新装版〉』

マーク・ジュリー (その他), ダン・ジュリー (写真), 重兼 裕子 (翻訳) 
https://amzn.asia/d/03HmQnGD
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以前「子どもに紹介したい絵本・本」といったテーマの本を
読んだ際に、おすすめとして紹介されていた一冊。

届いてみると、いわゆる子ども向けの絵本とは
ずいぶん違いました。

写真集のようなつくりで、文字も多い。

小さな子どもに読み聞かせるような本ではなさそう。

ただ、ページをめくってみると、
なんとも言えない独特の「重み」がある。

そのまましばらく本棚にしまっていたのですが、
先日あらためてじっくり読んでみたところ、
強く心を揺さぶられました。

「生きる」とはどういうことなのか。

「老いる」とはどういうことなのか。

そして、「死ぬ」とはどういうことなのか。

そんな命の根源的なテーマを考えさせられる、
大変ユニークな一冊でした。

ということで、早速中身を見てみたいと思います。

それでは、どうぞ!



■「おじいちゃん」が老いて、死ぬまでのお話

本書の主人公は、1974年、81歳で亡くなった
フランク・トゥゲンドさん。

彼が生まれ、家族を持ち、年を重ね、
そして亡くなるまでの人生を、
家族の言葉と写真によって記録した本です。

約150ページある本の中で、
若かりし頃のフランクさんが登場するのは、
最初のわずか10ページほど。

結婚し、3人の子どもに恵まれますが、
そのうち一人を戦争の訓練中に亡くすという
悲しい出来事も経験します。

そして1970年頃、亡くなる3年ほど前から、
彼に少しずつ「認知症」の症状が現れ始めます。

ここから本書は、フランクさん自身だけではなく、
彼を支える息子や娘、孫たちの記録へと変わっていきます。



■少しずつ、できないことが増えていく

本書の中心は、「老いていく」ということを
真正面から描いています。

それまで丁寧だった人が、乱暴な言葉を吐くようになる。

自分の部屋がどこなのかわからなくなる。

排泄を失敗してしまう。

深夜に家の中を徘徊する。

家族はそんな日々を「写真+家族のインタビュー」で
描かれるため、そのリアルさは絵本とは一線を画します。

ページをめくるたびに、おじいちゃんは少しずつ、
それまでできていたことができなくなっていきます。

そして、まるで赤ん坊に戻っていくかのように、
誰かの助けなしには生きられなくなっていく。

その様子が、一切、美化されることなく、
一枚一枚の写真として残されています。

でも、孫たちも家族も、みんな笑顔。

それが、なんとも生々しくも美しいのです。



■「もう、何も食べない」という選択

そして、あるときフランクさんは、
自分自身ができなくなっていくことに気づいたのか、
「もうこれからは何も食べない」といいます。

つまり彼は、自ら死へ向かっていく道を選んでいきます。

体力がなくなることで、徘徊もできなくなり、
粗相もしなくなる。

しかし家族は葛藤します。

何かを食べさせたほうがよいのではないか。

点滴を打ったほうがよいのではないか。

まだ何かできることがあるのではないか。

目の前の大切な人が弱っていくのを見れば、
「生かしたい」と思うのは自然なことです。

しかし同時に、それは本人が選ぼうとしている道を
妨げることにもなる。

家族はその間で揺れながら、
最後には彼の意思を尊重していきます。



■生にも死にも向きあう家族

そして、私がこの本でもっとも印象的だったのが、
フランクさんを囲むご家族の姿でした。

認知症が進んだ家族と暮らす日々は、
綺麗事では済まされないものだったことが語られています。

それでも本書に登場する人たちは、
誰も目を背けていません。

困るし、疲れもする。

しかし、その大変さすらどこか
「今日もこんなことがあった」と、
一つの日常の出来事として受け止めているようにも見えます。

そして、おじいちゃんが亡くなったとき。

そこにあったのは「ようやく終わった」という解放感よりも、
大きな喪失感だったと語られています。

あれほど大変だった日々さえも、
終わってしまえば、もう戻ってこない。

人を支えることの不思議さ、
家族という関係の不思議さを感じさせられました。

そして、それは、先日、祖母を亡くした母が
言っていた言葉と同じでした。



■まとめと感想

「人は老いて、そして死ぬ」。

『おじいちゃん』は、その事実を、
写真と家族の言葉によって真正面から見せてくれる本でした。

老いることも、誰かの世話になることも、
そして死んでいくことも、人間の営みの一部である。

こんな言葉が「日本語版解説」として
翻訳者によって書かれていました。

以下引用させていただきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おじいちゃん」は、朽ちてゆく身を写真にさらしながら、
先達として私達に多くのことを遺してくださった。

もちろん本人の意志ではなく、
写真家の孫の手で作品は完成した。(中略)

老いと死を陰に押しやって隠そうとすればするほど、
そのイメージは暗く、醜く、恐怖であり、生と死の断絶が深くなってゆく、

けれども、この写真集のように
老いと死にこちらから近づいてゆけばゆくほど、
なつかしさと優しさを与え続けてくれるのだ。

私たちが生きてゆくその先は、
決して暗澹としたものではないとも語りかけてくれている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


家族だからこそ残すことができた、
一人の人間の「生きて、老いて、死ぬまで」の記録。

新品ではなかなか手に入らない本のようですが、
もし図書館などで見かけることがあれば、
ぜひ一度手に取ってみていただきたい一冊です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:108km

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