配信日時 2026/08/06 08:21

信頼は、どれだけ”得”をするのか? ―収入・生産性・定着率への実証研究―【カレッジサプリ】

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令和8年8月6日(第4546号)


信頼は、どれだけ”得”をするのか?
―収入・生産性・定着率への実証研究―


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3125字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は朝から13kmのランニング。
その後、2件のアポイント。
また、クライアント向けの提案書の作成、
ならびに今後の研修プログラムの開発などでした。

研修の実施続きで、なかなか着手できていなかった
研修プログラムの開発や企画に時間が割けて、
ちょっとだけほっとした1日でございました。

コツコツ、頑張ります…!



さて、本日のお話です。

本日も、「信頼」に関する論文を
ご紹介したいと思います。

今回取り上げるのは、
「組織の信頼が業績やウェルビーイングに与える影響」を
調査した研究です。

信頼の高い組織では、確認や監視のコストが下がり、
意思決定のスピードが上がる。

では、実際には何が起きるのでしょうか?

全米の就労者調査と企業での介入実験から、
信頼と生産性、定着率、収入、職務満足度、
ストレスの関係を検討した、

「信頼はメリットがあるのか?」を
検証した論文とも言えます。

ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!

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<本日の論文>
・タイトル:The Neuroscience of Organizational Trust and Business Performance: Findings From United States Working Adults and an Intervention at an Online Retailer
(組織的信頼とビジネスパフォーマンスの神経科学:全米の働く成人からの知見および大手オンライン小売業者での介入研究)
・出版:Frontiers in Psychology, 2021年
・著者:Rebecca Johannsen、Paul J. Zak
・所属:Center for Neuroeconomics Studies, Claremont Graduate University
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・組織的信頼が高い従業員ほど、
生産性・定着率・収入・生活満足度が高く、
慢性ストレスが低い

・信頼度が最も高いグループ(上位25%)は、
中位グループより平均収入が10.3%高い(研究1)

・大手オンライン小売業者での90日間の介入実験により、
組織的信頼が実際に6%向上した(研究2)

・信頼は「オキシトシン分泌を促す8つの行動要素
(OXYTOCINモデル)」として、
測定・操作可能なものとして扱われている


■研究の背景と目的

伝統的な労働経済学では
「仕事とは不利益であり、放っておけば人はサボるもの」
という前提が根強くありますが、

実際には「人間中心の組織」のほうが生産性が高く、
離職率も低いという証拠が積み重なってきています。

そしてこの研究のユニークなところは、
神経科学の知見をベースにしている点です。

他者との肯定的な相互作用は、
脳内でオキシトシン(OT)というホルモンの分泌を促し、
それが信頼感や幸福感を生み出すことが分かっています。



■信頼を育む行動を測る「オキシトシンモデル」とは

この論文では、オキシトシン分泌を促す
8つの行動要素(頭文字を取って「OXYTOCINモデル」と呼ばれています)
をもとにした「組織的信頼」と、

社会貢献を示す「パーパス(目的)」が、
従業員のウェルビーイングや業績に
どう影響するかを明らかにし、

さらに介入プログラムを通じて
その因果関係まで実証しようとしています。

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<信頼を育む行動を測る「OXYTOCINモデル」>

・Ovation:称賛する

・eXpectation:明確で挑戦的な期待を示す

・Yield:任せ、失敗を学習機会として扱う

・Transfer:選択の自由や自律性を与える

・Openness:情報や意思決定の理由を開示する

・Caring:相手を気にかけ、関係を育てる

・Invest:成長や能力開発に投資する

・Natural:強みも弱みも含め、自然体で関わる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

興味深いのは、これらが「信頼そのもの」を
直接尋ねているわけではない点です。

従来の信頼研究では、信頼は
「傷つく可能性があっても、相手に自分を委ねようとする態度」
と定義されることがあります。

その意味では、称賛、自律性、情報開示、思いやりなどは、
信頼を生み出す先行要因と考えるほうが自然です。

一方、この研究では、
そうした行動シグナルの集合体を「組織的信頼」として
上記のように、操作的に定義しています。



■研究の方法

大きく分けて、2つの研究が行われています。

◯研究1(全米横断調査)

米国の人口統計(年齢・性別・人種・地域)にマッチする、
就労成人1,095名を対象にした調査です。

組織的信頼(OXYTOCINの8要素の平均)と
パーパス(組織の価値観との整合性)を独立変数とし、

生産性、定着率、職務満足度、生活満足度、
慢性ストレス、収入などとの関係を分析しています。


◯研究2(オンライン小売業者での介入実験)

年商10億ドルを超える大手オンライン小売企業の
一部署を対象にした、実際の介入実験です。

事前調査で最もスコアが低かった
「Natural(ありのままの自分・自然さ)」という要素に焦点を当て、

3ヶ月間にわたり、
10本のマイクロラーニング動画と
10回のメールリマインダー(パルス質問)を届ける
という施策を行いました。

その後、事後調査を実施し、変化を追跡しています。



■わかったこと1:信頼の高い組織では、生産性が高く、収入も高い

研究1では、米国の就労成人1,095名を対象に、
組織的信頼とパーパスが仕事や生活に与える影響を調査しました。

その結果、組織的信頼とパーパスが高い人ほど、
生産性が高く、職場に長くとどまり、
職務満足度も高い傾向が示されました。

慢性的なストレスは低く、
生活満足度と平均収入は高いという結果も示されました。

特に興味深いのが、
信頼度が最も高い上位25%の従業員は、
中位のグループと比べて、
平均収入が10.3%高かったという点です。

また、信頼が10%高まると、
職務満足度は4.5%向上し、
慢性ストレスは4.7%低下し、
生活満足度は1.5%高まると試算されています。

横断調査のため因果関係は言い切れませんが、
信頼の高い職場と、生産性、定着、満足度、
心身の健康が強く結びついていることは見えてきます。



■わかったこと2:90日間の小さな介入で、信頼は高まっていく

研究2では、オンライン小売企業の一部門で、
実際に信頼を高める介入が行われました。

事前調査で最も点数が低かったのが、
8要素のうち「Natural」、
つまり自然さや誠実さでした。

そこで約3か月間にわたって、
10本のマイクロラーニング動画と、
10回のメールリマインダー、
パルス質問を送る介入を行いました。

短い動画を見て問いに答え、
日々の仕事で思い出してもらいます。

小さなナッジを重ねる施策です。

その結果、「Natural」を肯定的に評価する割合は
62.7%から80.7%へ高まり、
組織的信頼全体も約6%向上しました。

さらに、定着率も1%改善したと報告されています。

それでも、特定の行動に焦点を当て、
短い学習とリマインダーを繰り返すことで、
職場を変えられる可能性を示した点は、
非常に実践的だと感じました。



■まとめと感想:小さな行動を、思い出せる仕組みが大事

個人的に印象に残ったのが、本論文の研究2の
「マイクロラーニングとリマインダーによる介入」でした。

何かを学んだ直後は、
「これからやってみよう」と思います。

しかし、日々の忙しさの中で、
その意志は簡単に薄れていきます。

そこで、

短いメールや問いかけが届く
→動画を見て、また思い出す
→小さな行動を一つ試す、

こうした「ナッジ」としての介入の仕組みが
実践的で興味深かったです。

ちなみに、私自身も、強みの研修後に、
1か月間のフォローアップメールを
お送りすることがあります。

今回の研究を読んで、研修そのものだけではなく、
「研修後に、何度思い出してもらえるか」が、
行動の定着には大切なのだと改めて感じました。

信頼も、強みも、
一度理解すれば完成するものではありません。

日々の小さな行動を重ね、
それを思い出す仕組みをつくる。

その積み重ねの中で、
少しずつ文化になっていくものなのだと思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/nfd1d4efe510c?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:60km

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