配信日時 2026/08/05 07:27

信頼は、対話の積み重ねでできている ー信頼を読み解く4つの視点ー【カレッジサプリ】

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令和8年8月5日(第4545号)


信頼は、対話の積み重ねでできている ー信頼を読み解く4つの視点ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3769字/読了時間5分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日は朝から12kmのランニング。坂道ダッシュがメニューでしたが、弱い自分と向き合う自分でした(汗)
また、午前にストレングス・ファインダーのオンライン研修。午後から2件のアポイントでした。
色々とやることが増えており、ありがたい限りです。この夏は頑張ります…!


さて、本日のお話です。
本日も、「信頼」に関する論文を
ご紹介したいと思います。

今日ご紹介するものは、
これまでの「信頼研究を整理したメタ研究」的なもので、
信頼の全体像がよく分かる一本です。

「信頼」が、時間とともに生まれ、深まり、
時には壊れていくプロセス。

あるいは「信頼と不信は実は別物である」
という考え方など、読んでいて
「確かに…!」と膝を打つような内容でした。

ということで、早速中身をみてまいりましょう。
それでは、どうぞ!

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<今回の論文>

・タイトル:Models of Interpersonal Trust Development: Theoretical Approaches, Empirical Evidence, and Future Directions
(対人信頼構築のモデル:理論的アプローチ、実証的エビデンス、および今後の研究方向)

・出版:Journal of Management, Vol. 32, No. 6, pp. 991-1022
(2006年12月)

・著者:Roy J. Lewicki, Edward C. Tomlinson, Nicole Gillespie

・所属:オハイオ州立大学フィッシャー・カレッジ・オブ・ビジネス/
ジョン・キャロル大学ボーラー・カレッジ・オブ・ビジネス/
ウォーリック大学ウォーリック・ビジネススクール
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・信頼研究の多くはこれまで
「1時点のスナップショット」でしか信頼を捉えてこなかった

・本論文は信頼研究を
「行動的アプローチ」「単一次元モデル」「2次元モデル」「変容モデル」の4つに整理した
・信頼と不信は表裏一体ではなく、
 独立した別の次元だとする2次元モデルが特に興味深い

・信頼は「計算的信頼→知識に基づく信頼→同一化に基づく信頼」と 段階的に変容していく

・過度な信頼は「盲目」を生むこともあり、 適度な健全さも必要



■研究の背景と目的

信頼という概念は、
これまで多くの研究がされてきました。

協力と競争のバランス、葛藤の解決、
経済的なやり取りの土台として、
そして職務満足度や組織へのコミットメント、
業績、さらには組織の収益にまで影響を与える、
とても重要なテーマとなっています。

一方、これまでの信頼研究の多くは、
信頼をある1つの時点で切り取って測る
「スナップショット型」の研究が主流でした。

加えて、信頼を「合理的な選択行動」として捉える
ゲーム理論的な伝統と、
「期待や感情、特性」といった内面の状態として捉える
心理学的な伝統とが、それぞれ別々に発展してきたため、
定義や前提のズレがずっと残ったままだったそうです。

そこで本論文は、
対人関係における信頼の発達(Trust Development)に
関する理論とエビデンスを包括的に整理し、比較・批評すること、

そして今後の研究のための
共通のアジェンダを示すことを目的としています。



■研究の方法

この論文は実証研究ではなく、
文献レビューと理論的考察
(コンセプチュアル・レビュー)です。

既存の信頼研究を、
次の4つの立場に分類して比較しています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⑴行動的アプローチ
⑵心理的アプローチ:単一次元モデル
⑶心理的アプローチ:2次元モデル
⑷心理的アプローチ:変容モデル
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

そのうえで、それぞれのモデルに対して
「信頼はどう定義・測定されているか」
「信頼はどのレベルから始まるのか」
「時間とともに信頼(や不信)が変化する要因は何か」

という共通の問いを立てて分析しています。


<わかったこと(主な結果)>

以下、それぞれのモデルの特徴をご紹介します。

■⑴行動的アプローチ ― 信頼は「協調行動」として測られてきた

囚人のジレンマなどの実験ゲームでは、
信頼は相手との協調行動として測定されます。

初期値はゼロからスタートし、
相手が協調を返せば信頼はじわじわと積み上がっていきますが、
一度裏切られると一気に暴落してしまう。

まるでオウム返しのような、
シンプルだけれど脆さも併せ持つメカニズムです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<変化のメカニズム>

・協調が続く → 信頼は段階的に増大

・裏切り(Defection)が起きる → 
信頼は急激に暴落・消滅

・初期値 → 原則ゼロ起点
(相手の動機や情報提示の有無で変動)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■⑵単一次元モデル ― 信頼は「1本のものさし」で捉えられてきた

心理的アプローチのなかでも、
まず主流だったのがこの単一次元モデルです。

信頼を「相手の意図や行動に対する
肯定的な期待に基づいて、
あえて自分の脆さを受け入れる意思」と定義し、

認知(能力・善意・誠実さ)・感情・行動意図といった
要素から成るとしながらも、
測定の場面では「低信頼〜高信頼(低信頼=高不信)」という
一本の物差しの両端として扱われることが多かったといいます。

面白いのは、初期値(スタート地点)についての説明が、
研究によって三者三様であるという点です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<信頼のスタート地点に関する3つの見方>

・ゼロ起点説:出会った当初は不信を懸念しつつも、
いったん暫定的に信頼して相手を試してみる

・中〜高信頼起点説:信頼しやすい性格や
制度的な保護があると、
最初から比較的高い信頼が形成される

・初期不信起点説:内集団/外集団の分類、
価値観の不一致、悪い評判、監視の存在などが、
最初から不信を生む
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後の変化は、
相手の能力・仁愛・誠実さの知覚、
オープンなコミュニケーション、
約束が守られた経験の積み重ねなどによって
左右される、とされています。



■⑶2次元モデル ― 信頼と不信は「別々の軸」として存在する

個人的に面白かったのがこの部分です。

信頼を「肯定的な期待」、
不信を「否定的な期待」として、
両者を対立する両端としてではなく、
独立した2つの次元として捉える考え方です。

情報が少ない段階では
「低信頼・低不信」からスタートし、関係の幅や深さが増すにつれて、
ある領域では信頼し、別の領域では不信を抱くという
「複雑な信頼」へと変化していくといいます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<信頼×不信のマトリックス>

・高信頼×低不信 → 
共同目標を積極的に追求する関係

・低信頼×高不信 → 
相互依存を避け、監視と防衛に回る関係

・高信頼×高不信 → 
「信頼しつつも検証する」関係。
機会は追求しつつ、リスクは常に監視する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■⑷変容モデル ― 信頼は3段階で質を変えながら深まっていく

関係が深まるにつれて、
信頼そのものの「質」が変わっていくというのが
変容モデルの考え方です。

まず、報酬や報復といった損得計算に基づく
「計算的信頼」からスタートします。

そこから、相互のやり取りを重ねる中で
相手の行動が予測できるようになる
「知識に基づく信頼」へ。

そして最終的には、
互いの価値観や目標を共有し、
相手の代理人のように振る舞えるほどの
「同一化に基づく信頼」へと深まっていく、
という3段階のプロセスです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<変容・発展のプロセス>

・計算的信頼(CBT):報酬と報復(コスト)の
利害計算に基づく、いわば「抑止力」からのスタート

・知識に基づく信頼(KBT):相互作用を繰り返すことで、
相手の行動が理解・予測可能になる段階

・同一化に基づく信頼(IBT):価値観・意図・目標を
完全に共有し、相手の代理人として行動できるレベル。
強い感情的な絆を伴う
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


■考察:信頼は高ければ高いほどいいわけではない

印象的だったのは、
「最適な信頼レベル」という視点です。

信頼は高ければ高いほど良いとされがちですが、
過度な信頼は「盲目」を生み、
監視不足によるパフォーマンス低下を招くこともある。

強みの研究と同じように、
信頼と成果の関係も逆U字型なのかもしれない、
という指摘には考えさせられました。



■まとめと感想:信頼には「対話」が大事

個人的に思ったのは、
「信頼が発展していくプロセスには、
対話が必要ではないか」ということです。

信頼が発展していく上で、
最初は計算的信頼や抑止力から始まるものの、
次の段階では「知識に基づく信頼」として
相手の行動が予測可能になり、

さらに「価値観やアイデンティティを共有し合う信頼」へと
深まっていく、と述べています。

…と考えると、「相手の知識を増やす」ためにも、
「アイデンティティや価値観を共有する」ためにも、
やはりコミュニケーションや対話というものが
不可欠なのだと感じます。

特に今では、一緒にいる時間が減りつつあります。

たとえばオンラインでの仕事などで
業務やタスク以外の部分に触れづらくなっている
職場環境だとすれば、

自分がどういう意図でその行動をしているのか、
どんな信念や価値観を持っているのかを共有することが、
信頼につながっていくのではないかなと思います。

時間の経過だけに頼らない
「意図的な信頼関係の築き方」を示すこと。

特にプロジェクトベースで、
ずっと一緒にいる時間が長く取れるわけではない働き方の中では、

こうした信頼の変容モデルを
実践に活かしていくことができるのだろうと、
そんなことを感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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【編集後記】
◯今月のランニング:47km

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