配信日時 2026/08/04 08:25

信頼される人は「能力・善意・誠実さ」を示している ー引用数40000件超の研究からの示唆ー【カレッジサプリ】

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令和8年8月4日(第4544号)


信頼される人は「能力・善意・誠実さ」を示している
ー引用数40000件超の研究からわかったことー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3431字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、午前と午後に、それぞれ
オンラインでのストレングス・ファインダー研修でした。

合計2回の研修が連続だったので、
夕方にはそれなりの疲労感を感じておりました。
研修って、感情労働なんだな、と思った次第。
夜がよく眠れました。



さて、本日のお話です。

本日も昨日に引き続き、
「信頼」についての論文をご紹介したいと思います。

今回取り上げるのは、
「組織における信頼」の統合モデルを提示した論文です。

1995年に発表され、引用数が4万件を超えるという、
モンスター級(!)の一本です。

この論文では、信頼される人の「信頼性」というものを
3つの要素に分解し、そして信頼されるということが
一体何を生み出していくのか、
つまり信頼が生み出す成果までを
一つのモデルとして描き出しています。

また、信頼と混同されやすい近しい概念とも丁寧に区別を行い、
信頼というものをきちんと定義したという点で、
その後の信頼研究の起点となったような、
そんな論文だと思われます。

それでは、どうぞ!

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<今回の論文>
・タイトル:An Integrative Model of Organizational Trust(組織的信頼の統合モデル)
・出版:The Academy of Management Review, Vol. 20, No. 3(1995年7月)
・著者:Roger C. Mayer, James H. Davis, F. David Schoorman
・所属:ノートルダム大学(Mayer, Davis)、パデュー大学(Schoorman)
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・信頼とは「相手の行動に対して、自ら無防備(脆弱)になる意思」であると定義される

・信頼されるかどうかは、被信頼者(信頼される人)の
「能力」「善意」「誠実さ」という3つの要素で決まる

・信頼する側の「人を信頼しやすい性格特性(信頼傾向)」も、
 信頼形成に影響を与える

・信頼と、協力・確信・予測可能性といった近い概念とは、
 明確に区別される

・信頼は、行動の成功・失敗を通じてフィードバックされ、
 時間とともに更新されていく


■研究の背景と目的

この論文が書かれた1990年代のアメリカでは、
労働力の多様化や自律型ワークチームの普及が進み、
相互監視や契約による統制に頼らない「信頼」の重要性が
急速に高まっていました。

しかしながら、それまでの信頼研究には、
いくつかの課題が残されていました。

・1.信頼の定義があいまいであること
・2.リスクと信頼の関係が混同されがちであること
・3.前提となる要因と信頼そのもの、その結果を区別しきれていないこと
・4.個人レベルか集団レベルなのかという分析の粒度もはっきりしないこと
・5.信頼する側・される側のどちらか一方しか見ていないこと

という研究も多かったという課題です。

そこで著者たちは、信頼する人と信頼される人、
その両者の間に明確な境界線を引き、

協力や確信、予測可能性といった似た概念から信頼を丁寧に切り分けたうえで、
信頼が生まれ、実際にリスクを取る行動へとつながっていく、
そのダイナミックな流れをひとつのモデルとして描き出そうとしました。


■研究の方法

この論文は、実際にデータを集めて
統計的に分析するタイプの研究ではありません。

社会心理学や経営学、経済学、ゲーム理論など、
実に幅広い分野の先行研究を丹念に読み解き、
再構成しながら、それぞれの概念を厳密に定式化し、
命題として組み立てていく、「理論構築型」のアプローチが取られています。


■わかったこと1:信頼とは何であり、何ではないのか

まず著者たちは、信頼を以下のように定義します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(本研究における)「信頼」の定義:

「相手が自分にとって重要な行動をとってくれるという期待のもと、
 その相手を監視したりコントロールしたりする能力に関係なく、
 相手の行動に対して脆弱であろうとする意欲」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

として定義しています。

つまり、コントロールせず、
期待に応えてくれるだろうと思い、
自らをリスクにさらす(脆弱性)意思ともいえます。

この定義がおもしろいのは、
似たような言葉との違いをはっきりさせている点です。

たとえば「協力」は、外部からの統制や
リスク回避の目的でも生まれうるため、
無防備さを伴う信頼とは同じではありません。

「確信」は、リスクをはっきり認識・選択していない状態を
指すため、これもまた信頼とは区別されます。

そして「予測可能性」、
つまり相手の自己利益的な行動が読めるということも、
それだけでは無防備になる理由にはならない、とされています。



■わかったこと2:信頼される理由と、信頼しやすい性格

◯信頼される人の要素

被信頼者が信頼されるかどうかは、
次の3つの要素の知覚によって決まるとされます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・能力(Ability):特定の領域における技能や専門性

・善意(Benevolence):自分の利益を超えて、
相手のために良かれと思って行動しようとする姿勢

・誠実さ(Integrity):信頼する側が受け入れられる
一貫した価値観や原則に従っているという認識
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

また、先行研究では9つ、10という因子に分かれ、
やや煩雑になっていた信頼性の要素を、「能力」「善意」「誠実さ」という
シンプルな3因子に整理し直したことも、後続の研究に大きな影響を与えることになりました。


◯信頼する側の要素

そしてこれとは別に、信頼する側にも「信頼傾向」という、
相手についての情報を得る前から存在する、
人を信頼しやすいかどうかという安定した性格特性があるとされています。

いわゆる、「人を見たら、どろぼうと思え」なのか
「信じられぬと嘆くよりも、人を信じて裏切られるほうがいい(by海援隊)」なのか、
人によって信頼しやすいかどうかのスタンスに違いがあるということですね。

さらに興味深いのは、関係の初期段階では
「誠実さ」の知覚が信頼形成に強く効き、
関係が発展していくにつれて「善意」の知覚の影響が増していく、
という時間的な変化が命題として示されている点です。


■わかったこと3:信頼は、どうリスクへとつながるか

信頼そのものは、あくまで
「無防備になろうとする意欲」にとどまります。

それが実際の行動、つまりリスクテイクへと変わるかどうかは、
その場その場で知覚される具体的なリスクとの兼ね合いによって決まる、
とされています。

そして、そのリスクテイクの結果、
うまくいったのか、それとも裏切られてしまったのか。

その経験が、次にはまた
「能力」「善意」「誠実さ」の評価へとフィードバックされていく。

信頼とは一度きりのものではなく、
こうして時間とともに育まれたり、修正されたりしていく、
動的なプロセスなのだと著者たちは描いています。



■まとめと感想

個人的におもしろいなと思ったところは
「信頼」という大きな枠を因数分解して捉えていたところです。

たとえば、一つ目は、信頼というものが、
「信頼する側」によっても大きく変わってくるという点。

育ってきた環境や教育、慎重さといった性格特性も、
そこには表れてくるのは、確かに…と思わされました。

また二つ目は、「信頼される側の要素」についてもそう。

これまでの先行研究では、オープンさや能力、誠実さなど、
いろいろな因子に分かれていたものを、
「能力」「善意」「誠実さ」という3つに集約・整理したという点は、
とても納得感がありましたし、同時にシンプルで面白いなと感じました。

そして三つ目。
最終的に「信頼とは何を生み出すのか」です。

信頼するということ自体が、
自分の「脆弱さ」や「無防備さ」をさらけ出すことであり、
相手を信頼することによって生じるリスクを、
自ら受け入れるということになる。

これこそが信頼の本質的な価値なのだ、
という図式が示されているところも、興味深く感じました。

有名な話で、あるビジネスの代表同士が、
その場でお互いを信頼し合い、
アイデアを紙ナプキンに書いてそのままディールが成立した、
というエピソードがあったように思います
(詳しい出典は忘れましたが)

それもまさに、大きなリスクがありながらも
「きっとこの人なら大丈夫」と、
自らの脆弱性を受け入れた瞬間だったのだろうと思います。

私自身、仕事をしていて強く感じることですが、
初めてのお客様と取引をするときは
まだ信頼が築かれていないので、
「細かな確認」がどうしてもクライアントの担当者から入ってきます
(当然ですよね)。

けれど一度、何かしらの成果を出し、
自分の進め方やスタンスを理解していただけると、
その後は「おまかせでお願いします」ばりに、
物事が圧倒的に早く進むようになる。

これはある意味、信頼をされてきた、
という証拠なのかなとも思うのでした。

(逆に言えば、もしそれが早くならなかったとしたら、
それは自分がいい仕事をできていなかったことの証明ともいえます)

信頼がどのように成り立ち、
そしてそれをどう示していくべきなのか。

そんなことを、統合的な視点から見つめ直させてくれる、
とても興味深い論文でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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【編集後記】
◯今月のランニング:47km

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