配信日時 2026/07/24 10:03

コーチング研修に参加すると、その後の昇進確率が高くなる ―管理職116名への介入からわかったことー【カレッジサプリ】

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令和8年7月24日(第4533号)


コーチング研修に参加すると、その後の昇進確率が高くなる
 ―管理職116名への介入からわかったことー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2232字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日は3件のアポイント。
夜は10kmのランニングと、月に一度通っているピアノレッスンでした。



さて、本日のお話です。

「コーチング研修って意味あるの?」

こうした「研修効果」へのツッコミは、以前から変わらずあるものです。

最近は、人的資本経営というキーワードのためか、
人材開発・組織開発への投資の流れは高まっている動きもありますが、
変わらずこうした疑問を持たれる場面は多いのではないでしょうか?

そんな中、本日ご紹介したい論文(ディスカッションペーパー)が
「コーチング研修に参加した人が、その後昇進確率が高くなるのかどうか?」
を検証した興味深い内容でした。

結論から申し上げると、日本の20,000人の大手製造企業において、

「コーチング研修を受けた人は、
 統計的な分析の結果、昇進確率が有意に上昇した」

という結果になっています。

ということで、早速見てまいりましょう。

それでは、どうぞ!


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<今回の論文(ディスカッションペーパー)>
・タイトル:The Effect of Interpersonal Skills on Worker Performance(対人関係スキルが労働者のパフォーマンスに与える影響)
・出版:RIETI Discussion Paper Series 19-E-045(2019年6月)
・著者:佐藤香織、中室牧子、大湾秀雄
・所属:国士舘大学/経済産業研究所、慶應義塾大学、早稲田大学ほか
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・日本の大手製造業J社(仮名)の人事パネルデータを用い、コーチング研修と昇進・評価の因果関係を検した

・「傾向スコアマッチング(PSM)」と「差の差分析(DID)」を組み合わせた手法で、選抜バイアスを排除した

・研修を受けたマネジャー本人は、評価・昇進確率ともに有意に向上した

・一方、コーチングを受けた側(ステークホルダー)への波及効果は限定的だった

・大人になってからの対人スキルも、企業投資によって伸ばせる可能性を示唆している



■研究の背景と目的

職場において、「コミュニケーションや対人関係スキル(いわゆるソフトスキル)が欠かせない」というのはよく言われることです。

けれど「なぜ重要なのか?」「本当に研修で伸ばせるのか?」という問いに、
因果関係のレベルで答えた研究は、実はそう多くありませんでした。

…というのも、もともとコミュニケーション力が高い人ほど、
自ら研修に手を挙げやすいという「逆の因果関係」の問題があるからです(めちゃくちゃわかりますね…)。

この研究は、その難題に正面から取り組みました。



■研究の方法

対象は、J社のミドルマネジャー116名。
コーチングプログラムを提供する「コーチ・エィ」社の8ヶ月間の対人スキル向上プログラムで、
プロコーチとの1対1セッションに加え、
受講者は他部署の従業員(ステークホルダー)にコーチングを実践する義務を負います。

分析では、事業部長による推薦という「非ランダムな選抜」の偏りを取り除くため、
PSMとDIDを組み合わせた手法(PSM-DID)が使われました。

これは、属性やトレンドが似た対照群を作り、
さらに時間変化や個人の固定的な性質による影響を差し引くことで、
研修そのものの純粋な効果を取り出すという発想です。



■わかったこと1:受講者本人の評価・昇進が向上

研修を受けたマネジャー本人は、
受講後の業績評価が統計的に有意に向上し、
翌年には昇進確率も明確に高まりました。


■わかったこと2:波及効果は限定的だった

一方、コーチングを「受けた側」のステークホルダーについては、
評価の向上は一部の時期に見られたものの、
昇進確率への有意な影響は確認されませんでした。


■わかったこと3:スキルは二層構造で機能する

考察では、Acemoglu & Pischkeの理論を援用し、
研修で得られるスキルを「汎用的なコーチング力」と「他部署とのネットワークという企業特殊的な資産」の二つに分けて説明しています。
この二つが補完的に働くからこそ、企業が費用を負担してもリターンを得られる、という整理です。



■まとめと感想

今回個人的に一番印象的だったのが、
「PSM-DID」という、パフォーマンスの近い人同士をマッチングさせ、
「もともと優秀だったから昇進した」という要素をできるだけ取り除く手法が使われている点が、
とても興味深いところでした。

やはり、多くの企業研修で
「学習意欲のある人は手を挙げて参加する」「学習意欲が高い人ほど、昇進確率も高い」
という繋がりがあるゆえに、純粋な研究効果を測定するのは難しいと思っていたからです。

その中で、こうしたやり方で効果検証もできるのか…、という驚きもありました。



一方で、もっと知りたいと思ったのが、
マネジャーの日々の行動レベルで「何が変わったのか」までは明確にわからない点です。

8ヶ月・計10回のコーチングというのは、それなりに重みのある関わりだと思います。
コーチングでいう「傾聴、質問、フィードバック」というスキルが行動として行われたからなのか。
あるいは、この研修を通じて、自分のキャリアの目標に変化があったのか…。

介入の積み重ねの中で、実際に何が起きていたのか。そこはもっと知りたいと感じました。

そういう時に「質的な研究」が有効になってくるのだろうな、と思いますし、
その人達にぜひ聞いてみたいな、とも思うのでした。

いずれにせよ、コーチングのような対人スキルを学ぶことが、
昇進確率の高まりにつながっていく、そのこと自体は、この領域に生きるものとしても、
希望を感じさせてくれる結果だったと感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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https://note.com/courage_sapuri/n/n012df057fd6a?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:194km

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