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令和8年7月22日(第4531号)
「強みに基づくジョブ・クラフティング」とは何か?
ー仕事に強みをひと匙加えて楽しくする3つのアプローチー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3453字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、朝から子どもの療育(発達支援)への送迎と参加、
またその後、書籍の執筆などを行い、
午後は、外部人事パートナーとして関わらせていただいている会社様への
コーチング&コンサルティングでした。
また夕方からは筋トレ&10kmのランニングでした。
夕方でも、ものすごく、暑いですね・・・(汗)
*
さて、本日のお話です。
本日は、強みに関する論文のご紹介です。
。「強みに基づくジョブクラフティング」という概念があります。
ジョブクラフティングとは、仕事にひと匙加えて仕事を楽しくするというような概念です。
そこに、自分自身の強みをどのように仕事に含めていくのか——
という視点を重ね合わせたのが、今日ご紹介する
「強みに基づくジョブクラフティング(Strengths-Based Job Crafting:SJC)」という考え方です。
この概念に関しては、この論文以降もいくつかの研究が発表されています。
(※参考:
説得力がすごい…!「強みに基づくジョブ・クラフティング」が従業員の創造性に与える影響についての研究論文(2021)
https://note.com/courage_sapuri/n/n695cf3cf685f
「強みを活かすジョブ・クラフティング」が、人と組織のパフォーマンスを高める ーカーティン大学・上海大学らの研究ー(2021)
https://note.com/courage_sapuri/n/nbd79817917e0 )
今回取り上げるのは、そうした一連の研究の走りとなった一本です。
「強みに基づくジョブクラフティング」が、いったいどのような成果につながっていくのか。
強み理論、ジョブクラフティング、キャリアの成功、そしてコーリング(使命感)に関する既存の研究を統合しながら、
その全体像を明らかにしようとした内容になっています。
実証的な探求へとつなげていくための、
いわばスタート地点に立つ研究ともいえます。
それでは、早速みてまいりましょう!
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<今回の論文>
・タイトル:Individual strengths-based job crafting(個別の強みに基づくジョブ・クラフティング)
・出版:Advances in Psychological Science、2017年、Vol. 25, No. 9, 1579–1596
・著者:TIAN Xizhou、LIU Meiling
・所属:重慶工商大学管理学院(School of Management, Chongqing Technology & Business University)
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・自分の強みを発揮することと、仕事を自ら組み替えること(ジョブクラフティング)を統合した
「SJC(強みに基づくジョブクラフティング)」という新しい概念を提唱した
・SJCは、タスク・関係性・認知という3つの境界を、
自分の強みに沿って再構築していくプロセスである
・強みに基づかない仕事の組み替えは幸福感が数週間しか続かないが、
SJCは半年以上持続する可能性がある
・SJCは自分だけでなく、
他者や組織にとっても良い影響をもたらす、親社会的な性質を持つ
■研究の背景と目的
これまでのジョブクラフティングは、
「従業員が自身のニーズや価値観、関心に合わせて、
仕事のタスクや関係性の境界を自発的に変えていく行動」として捉えられてきました。
一方で、自分の強み(生まれ持った特性や才能など)を発揮するには、
心理的な安全性や周囲の受け入れといった、ある種の「環境」が必要です。
環境が整っていなければ、
かえって嫉妬や不協和といった摩擦を生んでしまうこともあります。
だとすれば、ジョブクラフティングは、
「強みを最大限に発揮できる環境を自分自身の手でつくり出していく、
有力な手段になるのではないか」
と研究者らは考えました。
本論文の目的は、以下の2つです。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
⑴強み理論とジョブクラフティングという2つの領域を統合し、「SJC」という概念を明確に定義すること
⑵SJCの先行要因や結果要因を理論的に体系化し、今後の実証研究の土台をつくること
ーーーーーーーーーーーーーーーー
まさに、これからのための研究なのですね。
■研究の方法
この論文は、実験やアンケート調査を行うタイプの研究ではなく、
文献レビューを重ねながら理論的な枠組みを組み立てていく「概念構築型の研究」です。
「個人の強み」に関しては、
Gallup社による才能・知識・技能に基づく強み分類や、
ポジティブ心理学における「性格の強み」の分類を参考にしています。
「ジョブクラフティング」に関しては、
タスク・関係性・認知という3つの境界を組み替えるという考え方や、
仕事の要求と資源のバランスに着目したモデルを参考にしています。
これらの概念を丁寧に統合しながら、
SJCが生まれるまでの流れ、
そしてそこから生まれる結果までを、
ひとつのモデルとして描き出しています。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと⑴:SJCの「定義」
SJCとは、
「従業員が組織の中で、自分の強み(性格や才能の強み)を活かして仕事を組み替え、
他者や社会に貢献しながら、自分自身も恩恵を受け取っていく、
主体的で親社会的なプロセス」
だと定義されています。
単に強みを発揮するだけでも、単に仕事を組み替えるだけでもない。
強みを使って仕事の境界を広げ、そこに精神的な意味を見出していくこと。
それこそがSJCの本質だといいます。
◯わかったこと⑵:SJCを「左右する要因」
SJCが起こりやすくなる背景には、いくつかの要因があるとされています。
「個人」では、
主体的に動く性格傾向や、
仕事そのものへの興味、人に貢献したいという動機、
仕事や人生の意味を追い求める価値観など。
「環境や組織」の側では、
どれだけ裁量が与えられているか、
仕事の複雑さや挑戦性、
心理的な安全性が保たれているか、
そしてリーダーシップのあり方などが影響しています。
さらにその奥には、
「社会」がそもそも仕事や人間性をどう捉えているか
(自分中心的な価値観が強いのか、他者への貢献を大切にする価値観が強いのかなど)という
文化的な土壌までもが関わってくるとされています。
◯わかったこと⑶:SJCが「もたらす結果」
SJCが実を結んだとき、個人にはどのような変化が起こるのか。
深い満足感やフロー状態、幸福感、
そして仕事そのものへの意味の実感。
強みと挑戦のバランスが取れることで生まれる創造性や、人とのつながりの広がり。
そして、単なる報酬を超えた
「誰かのために、社会のために」という使命感(コーリング)の形成です。
組織にとっても、コミットメントの高まりやパフォーマンスの向上、
変化への適応力の強化といった恩恵があるとされていますが、
もし組織の目指す方向とズレが生じてしまえば、
それが負の影響につながるリスクも指摘されています。
■具体的にどう実践するのか —SJCの3ステップ
理論だけでなく、本論文には実践のヒントも記されています。
SJCは、「まず自分の強みを見つける」ことから始めます。
そして、それを3つの視点から仕事に落とし込んでいくというプロセスで進んでいきます。
(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⑴タスクの組み替え(タスク・クラフティング)
仕事のやり方や中身そのものを、自分の強みを活かせる形に変えていくステップです。
(例:理容師なら、指定された髪型をただ切るのではなく、自分の「美のセンス」という強みを活かして骨格に似合うカットを提案する。
教師なら、通常の授業を超えて課外の研究グループを立ち上げるなど)
既存のタスクを変えたり、新しいタスクを自らつくったりして、強みの発揮できる余地を広げていきます。
⑵関係性の組み替え(関係性・クラフティング)
上司や同僚、顧客との関わり方を、強みに沿って組み替えていくステップです。
(例:自分自身の専門知識が際立ちすぎると嫉妬や孤立を生むこともあるため、
その強みを「指導」や「知識共有」という形に昇華させるなど。すると周囲からは競争相手ではなく、頼れる協力者として見られるようになります。
また、医師の例では、診察室での関わりに留まらず対話を増やす、というものもあります)。
⑶認知の組み替え(認知・クラフティング)
自分の仕事の意味や強みの価値について、捉え方を見直すステップです。
(例:会計監査員が、「帳簿チェックの事務作業」だと思っていた仕事を、「不正を防ぎ、次世代に責任感を伝える仕事なのだ」と捉え直す。
それだけで、日々の作業に新しい意味が宿る、など)
この⑴⑵⑶は一度きりで完成するものではなく、周囲の反応を見ながら少しずつ微調整を続けていく、螺旋状のプロセスとされています。
■この研究をどう活かすか
・個人開発計画(PDP)への組み込み:
研修や人事面談で強みのフィードバックを受けたあと、それを日々のタスクや関係性の見直しにどう落とし込むかの具体的な枠組みとして活用できる
・ジョブクラフティング施策の高度化:
職務資源や要求の調整だけでなく、従業員の情熱や認知の変化を土台にした、より持続性の高い組織変革プログラムの設計に応用できる
・強みベースのマネジメントへの応用:
成果目標だけを明確に定め、プロセスは部下の強みに応じたクラフティングに委ねることで、マイクロマネジメントに頼らない、信頼をベースにした組織づくりに活かせる
■まとめと感想
実際にこの内容は、今後続く研究の中で検証されていくわけですが、
そのスタート地点として理論を整理した内容として、非かりやすいものでした。
特に、自分の強みをまず理解すること。
そして、それを「タスク・関係性・認知」の3つに落とし込んでいくこと。
さらに、その上で少しずつ調整を重ねていくこと。こ
の一連の流れがとても大事なポイントなんだと、あらためて感じた次第です。
強みというのは、見つけて終わりではなく、
日々の仕事の中で少しずつチューニングしながら育てていくものなのかもしれません。
そんなことを、この論文を読みながらしみじみと思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/n298e9e88e87b?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:171km
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