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令和8年7月19日(第4528号)
今週の一冊『「早生まれ」は損なのか 生まれ月格差の経済学』
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2942字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、執筆。
その他、病院にいっておりました。
また最近、頑張っても5時間半くらいしか眠れず、
ずっとGarmin(ウェアラブルデバイス)が朝起きるたびに
「短く、回復効果のない睡眠でした」
と言ってきて、毎回げんなりしておりました。
友人から「睡眠導入剤はめっちゃ効く」と聞いたので、
近所の睡眠内科に行ってみたところ、
レントゲンをとったり、睡眠を測定する機器を貸し出されて
「睡眠時無呼吸症候群」ではないかをチェックするなど、
なんだか大掛かりになっております…。
実際どうなのか、結果に注目をしたいと思います。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。今週の一冊はこちらです。
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『「早生まれ」は損なのか 生まれ月格差の経済学』
山口慎太郎 (著) / 中公新書ラクレ
https://amzn.asia/d/0cryzk1M
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私事ですが、私は「12月17日」生まれです。
早生まれ(1~3月生まれ)ではないけど、割とそれに近いところ。
小学生の頃を振り返ると、
身長はいつも前のほうで、だいたい前から1〜3番目。
仲の良かった7月生まれの友人は、
自分よりもずっと「お兄さん」のように感じられ、
どこか守られていたような記憶があります。
小学2年生の頃には、
4月生まれの友人と算数の計算スピードを競っていました。
「勝ちたい」と必死になっていました。
集中しすぎて、トイレに行くのを我慢し、
授業中におしっこを漏らした記憶すらあります。
漏らしても、やっぱり勝てませんでした(涙)。
・・・
もちろん、これらがすべて生まれ月のせいだったわけではありません。
ただ、今振り返ると、
小学生くらいの時期における「半年の差」は、
身体の発育や認知能力など、さまざまなところに現れていたのかもしれない。
そんなふうに、最近ふと思うことがありました。
▽▽▽
・・・というのも、うちの息子は1月末生まれです。
そして、発達も比較的ゆっくりです。
そのため、4月や5月生まれのお友達と比べると、
知的な発達や社会性、身体的な発達などにも、
ずいぶん違いがあるように見えます。
足が速い子がいる。
一方で、息子は鬼ごっこのルールがよくわからないこともある。
もちろん、個人差はあります。
しかし幼い子どもにとって、
約1年の月齢差は決して小さなものではないとも感じます。
そして親として、一番気になるのは、
こうした差そのもの以上に、
「自分はできない」という経験が積み重なってしまうことです。
「あの子はできる。でも、自分はできない」。
そんな経験が続けば、
人生に対する自己効力感にも影響するのではないか。
そんな漠然とした不安を感じることがあります。
▽▽▽
今回ご紹介する本は、
まさにこうした「生まれ月による格差」を、
さまざまなデータから検討した一冊です。
そして、この「生まれ月の違い」を、
親になった今、改めて考えるようになりました。
そしてその違いについて、埼玉県の
100万人以上の縦断調査などを元に、明らかにしています。
結論からいえば、
「生まれ月格差は存在する。
そのままにしておくと、早生まれは損となり得てしまう」
というお話です。
では、こうしたデータが何を物語っているのか?
そして我々は何ができるのか?
本書のポイントをみてまいりましょう!
■早生まれの不利は「能力」ではなく「制度」の問題
本書を読んで、まず印象に残ったのが、
早生まれの不利を「本人の能力の問題」として捉えない視点です。
日本では4月から翌年3月までに生まれた子どもが、同じ学年になります。
しかし、4月生まれと翌年3月生まれでは、
最大で約1年の月齢差があります。
繰り返しますが、
大人にとっての1年はわずかな違いでも、
6歳や7歳の子どもにとっての1年は、とても大きいものです。
本書では、
家庭環境や親の学歴などの影響を統計的に考慮しても、
学力差が残ることを研究データから紹介しています。
***
つまり、「本人の努力が足りない」のではなく、
そもそも異なる発達段階にいる子どもたちを、同じ基準で比較している。
韓国1月入学、アメリカは9月、
他の国でも「月齢的に年上」のほうがリーダー経験、
学力はじめ有利になることがわかっています。
この差は、これは個人の問題というより、
制度が生み出している結果ともいえます。
■学力だけではない「できる・できない」の積み重ね
本書では、小学生の算数・国語の偏差値で、
生まれ月によって3〜5ポイントほどの差が見られることが紹介されています。
その差は中学生になると縮小するものの、
完全になくなるわけではありません。
また、高校の進学先にも違いが見られるというデータが示されています。
つまり、進学先も4~6月生まれに比べて、
1-3月生まれは不利な傾向がある、とのこと。
▽▽▽
個人的に、より気になったのは「非認知能力」への影響でした。
同じ学年の中で相対的に幼ければ、
勉強だけでなく、スポーツや友人関係などでも
「うまくできない」経験が増える可能性があります。
逆に、月齢が高い子は、
周囲より少し早くできることで褒められ、成功体験を重ねる。
その結果、「自分はできる」という感覚が育っていく(傾向がある)。
最初はほんの数カ月の発達差だったものが、
周囲からの評価や本人の自己認識を通じて、少しずつ別の差へと広がっていく。
実はこのことが、能力以上に大きいのではないかと感じます。
■生まれ月の影響は大人になっても残るのか
さらに興味深いのが、生まれ月による違いが、
その後のキャリアや所得にも関連する可能性があるという点です。
本書では、早生まれの男性は4〜6月生まれの男性と比べて、
30〜34歳時点の所得が約4%低いという分析が紹介されています。
もちろん、「早生まれだから一生不利」という単純な話ではありません。
海外の長期追跡研究では、
働き始める時期や引退時期なども含めると、
生涯所得では差がほとんど相殺される可能性も示されています。
それでも、子どもの頃の小さな差が、
進学や成功体験、リーダーシップを発揮する機会などを通じて、
その後の人生に影響しうるという視点は考えさせられます。
■「一年遅らせる」という選択肢はありなのか
本書では、海外で行われている
「赤シャツを着せる(レッドシャーティング)」という考え方も紹介されています。
これは、子どもの発達状況などを考慮し、意図的に入学を1年遅らせるというものです。
正直なところ、私も息子について、
この施策ができないか、調べてみたことがあります。
1月末生まれで、発達もゆっくりであるなら、
実質は1年遅らせて小学校に入ったほうが、
本人にとって無理がないのではないか、と。
ただ、本書を読むと、
そこにも当然ながらメリットとデメリットがあり、
単純に「遅らせれば解決する」という話ではないことがわかります。
大切なのは、制度をどう変えるかという議論と同時に、
目の前の子どもをどのような「ものさし」で見るのか、なのだと思います。
■比べるなら、「周り」ではなく「昨日の自分」と
本書を読んで、親として改めて大事にしたいと思ったことがあります。
それは、「生まれ月による差が存在する」ということを知った上で、
子どもと関わることです。
同じ学年だからといって、
4月生まれの子と1月、2月、3月生まれの子を、
まったく同じものさしで比べる必要はなく、
「本人比較」での成長を見ること。
誰かより速く走れるか。
誰かより早く字を書けるか。
誰かより上手に集団行動ができるか。
もちろん、そうしたことが気になってしまう瞬間は本人にもあるのでしょうが、それ以上に注目すべきは「半年前の本人と比べて、何ができるようになったのか」ということです。
・できなかったことが、少しできるようになったこと。
・わからなかったルールが、少しわかるようになったこと。
・昨日よりも一歩だけ、前に進んだこと。
その成長を見つけ、言葉にして伝えていく。
生まれ月という本人には選べない条件によって、
子どもが「自分はできない人間なんだ」と思わなくてもいいようにすることが、
親や教師、そして社会にできることなのかもしれません。
■まとめと感想
「早生まれは損なのか」。
本書のデータを見れば、
何もしなければ不利に働く可能性は確かにある、という結論です。
でも、その差の存在を知ることができれば、
私たちの見方や関わり方は変えられるし、制度を変えることも可能であると述べています。
(例えば学力テストも,月齢の中での順位を表示するなど、海外では施策が行われています)
誰かとの比較ではなく、その子自身の成長を見る。
そんな当たり前のようで難しいことを、
改めて大切にしたいと思わせてくれる一冊でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:161km
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