---------------------------------------------------------------------------
皆さまの1日を5%元気にするビジネス系メルマガ『カレッジサプリ』
---------------------------------------------------------------------------
令和8年7月18日(第4527号)
「障害」はどこにあるのか? ーニューロダイバーシティから考える、個人と社会のあいだー
株式会社カレッジ 紀藤康行
---------------------------------------------------------------------------
※このメールは、メールマガジンにご登録頂いた方、名刺交換をさせていただいた方、研修にご参加頂いた方に配信をしております。
ご不要の場合は大変お手数ですが、メール下部の「配信停止はこちら」より解除くださいますようお願い申し上げます。
(本日のお話 3910字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は新入社員向けのプロアクティブ行動研修の実施。
また、帰宅後の夜には、
近くの小学校での夏祭りに参加し、
その後、10kmのランニングでした。
なかなか濃厚な1日でございました。
*
さて、本日のお話です。
先日より「ニューロダイバーシティ」というテーマで、息子の発達支援の話も交えながら発信をしてきました。
すると、ありがたいことに、さまざまな方からメッセージをいただきました。中でも個人的に印象的だったのが、友人からのこんなお話でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「私の息子も発達がゆっくりだったのですが、振り返ってみると、ストレスのほとんどは『学校という社会に適応できないこと』から生まれていました。
普通の学校と違うルールのオルタナティブスクールを選んだら、ほぼすべての悩みや心配がなくなりましたよ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
とのこと。
つまり「子どもに合わせて『環境(小学校)』を選ぶ」ことを優先する考え方に近いかもしれません。
▽▽▽
一方、今、息子(5歳)が通っている療育に、「就学準備」をテーマにしたものがあります。小学校という社会に適応するための練習、つまり「環境に合わせて、子どもを適応させる」ためのトレーニングです。
やることは、「先生の話を聞く→言われた教科書のページを開く→手を挙げてから発言する→筆箱をしまう」といった、日本の小学校の授業ルールに合わせた一連の動作です。
ただ、「環境に合わせて本人を適応させる」には、当然ながら努力が必要です。
たとえば、発達がゆっくりな息子が、問いを出されて手を挙げる。先生が指名する。しかし、ゆっくりなので、すぐに答えられない。
すると、「すぐに答えてください。じゃあ、◯◯くん」と、次の子に回答権が移ります。授業のテンポを重視するためです。
そうして手を挙げた息子がスルーされていく様子をモニター越しに見ると、何ともいたたまれない気持ちになります。妻も「つらくて見ていられない」と言っておりました。
私も送り迎えの中で現場を見ると、その気持ちはよくわかります。(ちなみに、療育の先生方には大変熱心に関わっていただき、感謝ばかりです)
▽▽▽
こうした様子を見ると、本音として「別にすぐに答えられなくてもいいじゃん」「先生の話、少しくらい聞けなくてもいいじゃん」と思う自分もいます。
「子どもに合わせて環境を選ぶ」のか。
「環境に子どもを適応させる」のか。
この2つは、どちらも重要であり、どちらかだけの話ではありません。そしてニューロダイバーシティというキーワードでも、実はこのことが議論されているようです。
……と、大変前置きが長くなりましたが、そんな中である論文に出会いました。
「障害とは個人の中だけにあるのではなく、個人と社会との関係の中で生まれる」。そんな相互作用的な視点から、ニューロダイバーシティを整理した論文です。
上記の私の葛藤を、まさに学術的に整理している内容でした。今日はそのポイントをご紹介したいと思います。
それでは、どうぞ!
==============================
<本日の論文>
タイトル:The Neurodiversity Approach(es): What Are They and What Do They Mean for Researchers?
(ニューロダイバーシティ(神経多様性)アプローチ:それらは何であり、研究者にとって何を意味するのか?)
出版:Human Development, 2022年, 66巻, 73–92頁
著者:Patrick Dwyer
所属:カリフォルニア大学デービス校 Center for Mind and Brain/Department of Psychology
==============================
■「個人を変える」のか、「社会を変える」のか
この論文で興味深かったのが、「障害をどのように捉えるのか」という3つの考え方を整理しているところでした。
大きく分けると、「医療モデル」「強い社会モデル」、そしてその中間に位置する「ニューロダイバーシティ・アプローチ」です。
まず「医療モデル」では、障害とは基本的に「障害を持つ本人の中に存在するもの」と考えます。病気や機能不全、発達上の特性そのものに原因があり、それを治療したり、「正常」とされる状態に近づけたりすることが支援の中心です。
たとえば、学校のルールに適応できない子どもがいたときに、「どうすれば、この子が学校に適応できるようになるか」と考えるのは、こちらの発想に近いのかもしれません。
一方の「強い社会モデル」は、かなり反対側の立場です。
こちらでは、障害とは本人の中にあるのではなく、「社会の側にある障壁によって生み出されるもの」と考えます。
つまり、本人に何らかの身体的・神経学的な違いがあったとしても、社会がその人に制限を加えなければ、それ自体は必ずしも「障害」にはならない。だからこそ、変えるべきなのは本人ではなく、社会の仕組みや環境である、と考えます。
学校に適応できないのであれば、「子どもを学校に合わせるのではなく、その子が学べる環境をつくればいい」という考え方です。
どちらにも一理あります。
ただ、この論文が提案しているニューロダイバーシティ・アプローチは、そのどちらか一方に振り切るものではありません。
■障害は「個人と環境の相互作用」で生まれる
この論文では、障害を「本人の特性」と「周囲の環境」との相互作用によって生まれるもの、と捉えています。
つまり、「本人に何の困難もない。すべて社会が悪い」というわけでもなければ、「本人に問題があるのだから、本人を治さなければならない」というわけでもない。
本人の特性と、置かれている環境との組み合わせによって、困難の大きさは変わるという考え方です。
そのため、支援にも二つの方向性があります。
・環境や社会を変えること。たとえば、スティグマや偏見を減らす。本人が過ごしやすい環境を整える。コミュニケーションの方法を工夫する。
・本人が必要な適応スキルを身につけたり、場合によっては医療的な支援を受けたりすることです。
つまり、「本人を変えるか、環境を変えるか」ではなく、「本人と環境のどちらを、どのように調整すると、この人がより生きやすくなるのか」を考えるということです。
■障害を「正常化する」ことをゴールとしない
そして、このアプローチでは、障害のある人を「治す」「正常化する」こと自体を絶対的なゴールにはしません。
脳や心の多様性そのものは尊重し、本人のありのままの特性を受け入れる。その上で、本人が困っているところは支援し、環境側に問題があるのであれば環境を変える。
この「どちらか一方に原因を求めない」という考え方は、個人的にも非常に納得感がありました。
先ほど紹介した、オルタナティブスクールを選んだお母さんのお話も、まさにこの視点から見ることができます。
子ども自身が大きく変わったわけではない。
けれども、その子と環境との組み合わせが変わったことで、それまで「問題」とされていたものが、問題ではなくなった。
そう考えると、「障害」というものは、本人の中に固定的に存在するものというよりも、その人がどこにいて、どのようなルールの中で生きているのかによって、現れ方が変わるものでもあるのだと思います。
■型に合わない靴を、無理に履かせない
この論文を読みながら、改めて息子のことを考えました。
私たち親が考えるべきことは、「いかに社会に適応させるか」だけではないということです。
もちろん、社会で生きていく以上、一定のルールを学ぶことは必要です。本本人が身につけたほうがよいスキルについては、練習することも必要でしょう。
しかし同時に、「この社会でできないなら、この子を変えなければ」とだけ考えるのも、少し違うのかもしれません。どうしても難しいのであれば、環境の方を変える方法もあります。
息子は5歳で1月末の早生まれ。そして、発達としては1歳半くらいゆっくりです。であれば、実質的には「1歳下のクラス」くらいがちょうどよいのかもしれません。
実際、今は年長ですが、年中の早生まれの子や年少さんと遊んでいるときのほうが、イキイキしているようにも見えます。
30代、40代になれば、1歳の違いなどほとんど誤差です。
それよりも幼少期に、「自分にもできる」「自分は働きかければ変えられる」という自己効力感を育むことのほうが、ずっと大切なのではないかと思います。
無理やり、足の形に合わない靴を履かせ続ければ、いつか足を痛めてしまいます。
それと同じように、「普通」という型に無理やり合わせ続けることで、「自分はできない」「自分はダメだ」という感覚が積み重なり、自分の人生に対する自信まで失ってしまっては、本末転倒です。
それが、親としては一番避けたいことだと思いました。
■まとめと感想
改めてこの論文から考えさせられたのは、「障害とは、個人と社会との相互作用によって生まれるものでもある」ということでした。
社会のルールに沿えない個人が悪いわけでもない。かといって、社会のルールそのものがすべて悪いわけでもない。
「個人を変えるか、社会を変えるか」という二項対立ではなく、その人にとって何が必要なのかを見ながら、両方を調整していく。
本人の「あるがまま」は、良いとか悪いとか評価するものではなく、まず「そういう特性がある」と受け止める。その上で、必要なところは少しずつ社会に合わせていく。
一方で、どうしても難しいところは、本人に合う環境を選んでいく。
その両方の選択肢を持ちながら、「この子が中長期的に社会の一員として生きていく上で、何が一番この子のためになるのか」を考えていくこと。
最初から「社会の型に合わせること」を唯一のゴールにするのではなく、その子に合う場所、その子が自信を持てる場所を探していきたい。
そして、自分なりのやり方で社会とつながっていけるように支援していきたいものだ。そんなことを思わせてくれた論文でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/nbcd32878b0a1?app_launch=false
==========================
【編集後記】
◯今月のランニング:135km
【メルマガのご感想について】
メルマガのご感想は、このメールに直接ご返信いただければ紀藤にのみ届きます。
皆さまのメッセージが励みになります!ぜひお気軽にメッセージくださいませ。
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
メルマガ「カレッジサプリ」公式サイト
https://www.courage-sapuri.jp/
★バックナンバーはこちらから読めます★
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
このメールは、メールマガジンにご登録頂いた方、名刺交換をさせていただいた方、
研修にご参加頂いた方に配信をしております。
ご不要の場合はお手数ですが、メール下部の「配信停止はこちら」より解除くださいますようお願い申し上げます。
【メルマガ登録・解除について】
※メールアドレスの変更について
⇒「現在のメールアドレスの配信停止」→「新アドレスでの登録」にてご対応お願い申し上げます。
※メルマガのご登録はこちらから
⇒
https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=HSfoIRnMfw
※メルマガの配信停止はこちらから
⇒
https://1lejend.com/stepmail/delf.php?no=HSfoIRnMfw