配信日時 2026/07/14 08:54

ニューロダイバーシティを「強み」として活かす人事施策とは?【カレッジサプリ】

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令和8年7月14日(第4523号)


ニューロダイバーシティを「強み」として活かす人事施策とは?


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3056字/読了時間4分)

■こんにちは、紀藤です。

昨日は、ストレングス・ファインダーの研修の実施でした。

人事の方と、2人の講師体制で実施させていただきましたが、
グループに入り、皆さまと対話をできる時間が私自身豊富にあり
実に楽しい時間でございました…!

ご参加いただいた皆さま、
運営のYさん、Nさん始め、ありがとうございました。

また夜は大学の授業の打ち合わせでした。



さて、本日のお話です。

先日より「ニューロダイバーシティ」に関するお話をご紹介しております。

ニューロダイバーシティとは、直訳すると「脳や神経の多様性」です。

自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD、ディスレクシアなどを、
単なる欠陥や障害としてではなく、人間に存在する自然な違いの一つとして捉える考え方です。

この言葉は、教育や発達支援の文脈で語られることが多いものです。

しかし、子どもたちはやがて社会と接続し、
さまざまな形で働き、組織や社会に貢献していくことになります。

では、企業の人事施策やマネジメントにおいて、
ニューロダイバーシティはどのように扱われているのでしょうか。

今回は、そんな問いを扱った興味深い論文をご紹介します。

それでは、どうぞ!

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<今回の論文>
・タイトル:A Strengths‐Based Human Resource Management Approach to Neurodiversity: A Multi-Actor Qualitative Study
 (ニューロダイバーシティに対する強みベースの人材マネジメントアプローチ:複数関係者による質的研究)
・出版:Human Resource Management, 2025年
・著者:Amber Kersten, Frederike Scholz, Marianne van Woerkom, Manon Krabbenborg, Luca Smeets
・所属:ティルブルフ大学 社会行動科学スクール(オランダ)、TNOヘルシー・リビング(オランダ)、ユトレヒト応用科学大学(オランダ)他
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・ニューロダイバーガント(=神経多様性のある)従業員への人事施策は、
 いまだに、「定型発達からの逸脱」を問題視する「欠陥指向のパラダイム」が主流です。

・本研究は、人事が計画する「意図された人事施策」、
 管理職が現場で実践する「導入された人事施策」、
 そして従業員が実際に受け取る「知覚された人事施策」の3層で、
 強みベースのアプローチがどこまで機能しているかを検証しました。

・HR専門家・管理職・当事者、計30名へのインタビューを行ったところ、
 強みの「特定」「活用」までは一定の実践が見られる一方、
 強みの「開発」(特に過剰発揮と過少発揮のバランス調整)が
 大きな課題として残っていることがわかりました。

ということで、詳しく解説していきます。



■研究の背景と目的

本研究が問題視しているのは、
従来の人材マネジメントに根づいている「欠陥指向」の考え方です。

多くの組織では、理想的な従業員像を基準として、
そこから不足している能力を特定し、
そのギャップを研修や評価によって埋めようとします。


しかし、ニューロダイバーシティのある人は、
能力が全体的に均一なのではなく、
得意な領域と苦手な領域の差が大きい「スパイク型のプロファイル」を持つことがあります。

たとえば、非常に高い集中力や論理的思考力を持つ一方で、
環境の変化や曖昧な指示への対応に強い負担を感じる、といった具合です。

そのような人に対して、
苦手な部分の修正ばかりを求めると、本人に過度な負担がかかります。

結果として、モチベーションの低下や精神的な疲弊、
さらには職場からの離脱につながる可能性があります。

そこで本研究では、

「弱みを直す」のではなく、
「強みを特定し、活用し、育てる」という強みベースの人材マネジメントに注目しました。



■研究の方法

研究では、オランダのSTEM、金融、専門サービス分野を対象に、
30名へのインタビューを行いました。

参加者の内訳は、人事やダイバーシティ担当者が15名、
管理職が4名、ニューロダイバーシティのある従業員が11名です。



■インタビューからわかったこと

以下、本インタビューからの示唆と、考察をまとめます。



(1)人事・管理職・当事者の認識にはズレがある

インタビューの結果、「強みを大切にしよう」という人事の意図が、
必ずしも管理職の行動や、当事者の経験につながっていないことが明らかになりました。

まず課題となったのが、「強みの特定」です。

人事担当者の多くは、ニューロダイバーシティのある人が
独自の強みを持っていることを理解していました。

しかし、その強みを発見するための具体的な方針やツールは整備されておらず、
実際の対応は現場の管理職に委ねられていました。

管理職は面談などで、「あなたの強みは何ですか?」と本人に尋ねます。

一見すると、本人の意思を尊重した関わり方に見えますが、
ニューロダイバーシティのある従業員の中には、
過去に失敗や苦手なことばかりを指摘され、
自分を肯定的に語ることが難しくなっている人もいます。

周囲の偏見やスティグマ(社会から貼られる否定的なレッテル)を内面化し、
「自分には強みなどない」と感じている場合、
単に本人に尋ねるだけでは「強みの特定」はできません。

強みを語るためには、本人の努力だけではなく、
周囲からの具体的なフィードバックや、強みを発見するための仕組みが必要なのです。



(2)強みを活かす「ジョブ・クラフティング」は有効である

「強みの活用」においては、いくつかの有効な取り組みも見られました。

その一つが、本人の強みに合わせて仕事の内容や進め方を調整する、
「ジョブ・クラフティング」や「ジョブ・カービング(組織や管理職が、本人に合うように仕事を切り出して設計すること)」です。

たとえば、集中して取り組むことが得意な人には、
細かな中断が少ない業務を任せる。

曖昧なコミュニケーションに負担を感じる人には、
業務の手順や期待する成果を明確に伝えるといった方法です。

また、スクラムやアジャイルのように、
役割やタスク、進捗が可視化される仕事の進め方も、
働きやすさにつながっていました。

静かな作業スペースやノイズキャンセリングヘッドホンの提供など、
環境面での調整も有効です。


ただし、このような配慮が周囲から「特別扱い」と受け止められる懸念もあります。

本人だけに説明や適応を求めるのではなく、
組織全体に対して、なぜ環境調整が必要なのかを伝えることも欠かせません。



(3)「良かれと思って」が排除につながる

印象的だったのが、管理職による「撤退のマネジメント」です。

管理職は、本人を守ろうという善意から、
ストレスがかかりそうな仕事や重要な会議から、
ニューロダイバーシティのある従業員を遠ざけることがあります

本人に負担をかけないための配慮ですが、
従業員側から見ると、「重要な仕事を任せてもらえない」
「成長の機会を奪われた」と感じることがあります。

その結果、能力を発揮する機会が減り、
仕事が退屈になったり、組織から排除されている感覚を強めたりします。

一方で、調整をしないまま得意な仕事を任せ続ければ、
過集中や完璧主義によってバーンアウトする可能性があります。



■まとめと感想

この研究での考察は、
「ニューロダイバーシティ」への対応を,
管理職の善意や経験だけに委ねてはいけないということでした。

また、何でも平均的にこなせる人を「理想の労働者像」とする働き方も、
立ち止まってみる必要があるのでは、と示唆されていました。

現実は、管理職の善意に委ねられていますが、
管理職が日々の目標やタスクを抱えながら、
専門的なダイバーシティマネジメントまで求められるのは、
相当ハードルが高く、時間的にも心理的にも大きな負担がかかります。

ゆえに、強みベースの考え方をスローガンで終わらせないこと、
採用、オンボーディング、評価、配置、育成といった「人事施策」の中に組み込むことが
重要であると述べられていました。

苦手を平均に近づけるだけでなく、
その人がどのような環境で強みを生かせるのかを考え、組織として支える。

このことに向き合うことは、「働くこと」の定義を、
より速く・より効率的に・より生産性的にという考えすら、
改めて見直す必要もあると感じます。

同時に、これからの時代、もっと求められてくるテーマのようにも感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:109km

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