配信日時 2026/07/09 09:46

上司が「部下の強みの活用を支援する」と、部下にどんな変化が起こるのか?【カレッジサプリ】

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令和8年7月9日(第4518号)


上司が「部下の強みの活用を支援する」と、部下にどんな変化が起こるのか?


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3207字/読了時間3分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日は朝から13kmのランニング。

また、午前は外部支援者として、関わらせていただいている会社への
コンサルティング案件の実施。

その他2件のアポイントでした。

だいぶ夏らしくなってきましたね…
走ると、汗が滝のようにでてきます(汗)



さて、本日のお話です。

今日も「強みの論文」についてご紹介をしたいと思います。
本日のテーマは、「上司による強み活用の支援」です。

しばしば「強みの研修」などを管理職の方に行うと、
こんな事後ワークをしていただくことがあります。

・部下の強みを言葉にし、承認する
・部下の強みを知り、できる限りその強みを生かせるような仕事をアサインしてみる
・部下が自分の強みを認識する手伝い、フィードバックのサポートをする


こういうワークは、実際にお伝えする時は
ちょっと渋る顔をされるのですが(苦笑)

実際にやっていただいた管理職の方からは、

「普段そういった話(強みなど)はわざわざしないけれど、とてもいいリアクションだった」
「良い関係が築けた」
「部下も喜んでくれた」

という声が集まることがあります。

しかしながら、実際その

「上司による強み活用の支援行動」が、
部下の何に働きかけて、
どんな作用で影響があったのか

ということは、ブラックボックスです。

つまり、感覚的に捉えられているところが
多いのではないかということ(ぎくり)。

そんな中、本研究では、

上司が強みの活用の支援を行うと、
実際に部下の中で何が起こるのかということを解き明かしています。

では、実際どんな結果になったのか。早速みてまいりましょう。

それでは、どうぞ!


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<今回の論文>
・タイトル:Linking perceived supervisor support for strengths use to employee strengths use: the perspective of theory of planned behavior
 (上司による「強みの活用」への支援の認識と従業員の強みの活用との関連性:計画行動理論の視点から)
・出版:Current Psychology, (2024) 43:7014–7025
・著者:Feng Liu(中国人民大学ビジネススクール)、Jun Liu(武漢理工大学経営学院・責任著者)、He Ding(華北電力大学経済管理学院)
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・上司が「強みの活用」を支援していると部下が感じる(PSSSU)ことが、
 部下の強みの活用行動を高めるという仮説を立てた

・その仮説について、213名の従業員を対象に、
 4週間おき・3時点にわたる縦断調査で検証した

・その結果、その効果は直接ではなく、
 「強みの自己効力感」→「強みの活用意図」という
 2つの心理プロセスを順番に経由して起きる(完全な媒介)ことがわかった

・この心理プロセスの説明に、
「計画行動理論」という枠組みが
 世界で初めて強み活用研究に導入されたことも本研究のポイントである



■研究の背景

職場で自分の強みを活用することは
ウェルビーイングや職務パフォーマンスの向上に
直結することが知られています。

ただ、これまでの強み活用に関する研究は、

「強みの自己評価」のような個人要因、
あるいは「強みの組織的支援」のような組織要因に重点が置かれていて、

『上司による強み活用の支援(PSSSU:Perceived Supervisor Support for Strengths Use)』が、
従業員の強み活用をどのようなプロセスで促すのか、という

「なぜ」の部分の知見は
まだ乏しかった、と著者らは述べました。



■理論の枠組み:「計画行動理論」とは?

そこで本研究が導入したのが、
「計画行動理論(Theory of Planned Behavior: TPB)」です。

なんだかややこしい名前ですが、
「人が特定の、計画的な行動を実行する理由を説明する理論」です。

本研究では、
この理論の構成要素を、強み活用の文脈に次のように当てはめています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
STEP1)主観的規範 = 上司から強みの活用を奨励・支援されているという認識(PSSSU)がある
STEP2)知覚された行動制御 = 自身の強みをうまく活用して課題に対処できるという自信(強みの自己効力感)
STEP3)行動意図 = 職場で強みを活かしようとする意思(強みの活用意図)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

このように、

「強みの活用支援の認識(PSSSU) → 知覚された行動制御(自己効力感) → 行動意図 → 実際の行動」
 
 という流れで、
 順番に橋渡しされていくというモデルを検証したのでした。



■研究の方法

中国の多様な組織(製造業、エネルギー産業、金融業界など)に勤務する
正社員を対象に調査を実施しています。

共通方法バイアス(同じ人が同じタイミングで全部答えることによる歪み)を減らすため、
4週間の間隔を空けた3つの時点で、オンラインアンケートが行われました。

・Time 1(2019年11月・399名):PSSSU、統制変数(コア自己評価、謙虚なリーダーシップ)などを測定
・Time 2(2019年12月・311名):強みの自己効力感を測定
・Time 3(2020年1月・235名):強みの活用意図、強みの活用行動を測定

最終的に3時点すべてに回答した
213名(男性53%、女性47%、平均年齢34.4歳)が分析対象となりました。

分析には「構造方程式モデリング(SEM)」という方法を使って、
媒介効果が検証されました。



■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと⑴:PSSSUは強み活用行動と直接つながっている(が、それだけではなさそう)


媒介変数を入れない直接効果モデルでは、
性別や勤続年数、コア自己評価、謙虚なリーダーシップを統制しても、

「上司による強み活用の支援の知覚(PSSSU)」は
強みの活用行動と有意な正の相関を示しました(β = 0.39, p < 0.01)。

ところが、媒介変数を含めた本命のモデルでは、
PSSSUから強み活用行動への”直接的なパス”は
有意ではなくなりました(β = 0.19, p > 0.05)。

つまり、

上司の支援は部下の行動に「直接」効くわけではなく、
何かを経由して効いている、

ということです。


◯わかったこと⑵:「強みの自己効力感」と「強みの活用意図」が、順番に橋渡しをしている

修正モデルでは、次の2つの経路が確認されました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・PSSSU → 強みの自己効力感(β = 0.31, p < 0.01)
・PSSSU → 強みの活用意図(β = 0.26, p < 0.01)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして間接効果の分析からは、以下のような複数の経路がすべて有意であることが示されています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・PSSSU → 自己効力感 → 活用意図(推定値0.11)
・PSSSU → 活用意図 → 活用行動(推定値0.14)
・PSSSU → 自己効力感 → 活用行動(推定値0.04)
・PSSSU → 自己効力感 → 活用意図 → 活用行動(逐次媒介・推定値0.07)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり、

上司の強み活用の支援は、

まず部下の「自分の強みをうまく使えそうだ」という「強みの自己効力感」を育て、

それが”強みを活かしたい”という「強みの活用意図」につながり、

その意図が実際の行動へと結実する、

という順序立った心理プロセスを経由していたことがわかりました。



■まとめと感想

今回の「上司による強み活用の支援」の自覚を測る尺度は、
2020年に行われた研究によるものなのですが、
まだ詳しいところまでは読めていません。(残念ながら有料版なので…涙)

ただ読んでいる中で、おやと思ったのが、
「ストレングス・ベースド・リーダーシップ」という概念です。

これも同じように、強みの研究の中で、
フォロワーが「強みベースのリーダーシップ」を自覚しているか、
そして自分自身の才能を把握しているか、という混合の尺度なのですが、
今回のPSSSUと非常に近いところがあるのかなと感じました。

なぜ「ストレングス・ベースド・リーダーシップ」と、
今回の「自覚された強みの支援(PSSSU)」を、別の概念として分けているのか。
この問いを、改めて探求してみたいと思います。


いずれにせよ、上司の支援が、

部下の強みの「自信」を育て、
その自信が「やってみたい」という気持ちに変わり、
やがて行動として花開いていく、という

シンプルですが意義深い論文だと感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:63km

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