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令和8年7月8日(第4517号)
強みを「知る」だけでは変わらない?!
ー強みワークショップの1年間にわたる追跡調査からわかったことー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2807字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
先日は、立教大学のリーダーシップの授業運営でした。
前期のチーム活動の振り返りとのことで、
それぞれのチームの楽しかったことや大変だったことを振り返り、
その時々で何を思っていたのかなどに触れると、
「あのときこうすれば更によくなったかも」という
未来に繋がる選択肢が生まれることがあります。
人は「振り返る」ことで教訓を得られる。
そうしたことを感じる時間でもありました。
振り返りって、大事ですね。
*
さて、本日のお話です。
私事ですが、つい先日
「高校生に向けたリーダーシップの授業」の一環で、
独自ツールを使った「強み発見ワークショップ」というものを行いました。
授業内容は、
「強みの理解」→「強みの360°フィードバック」→「強みの特定」→「強みを活用する」
という流れです。
そして、強みの理解度と活用度がどれくらい上がったのか、
そして心理的ウェルビーイングや自尊感情を測定する、というものです。
そんな内容だったのですが、
中国の武漢大学にて、まさに上記の流れを大学1年生に行い
、より精緻な方法で、1年にわたってその効果を検証したという研究がありました…!
結論、「強みは知るだけでは変わらない」という話が印象的でした。
ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!
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<今回の論文>
・タイトル:Examining the Mediating Roles of Strengths Knowledge and Strengths Use in a 1-Year Single-Session Character Strength-Based Cognitive Intervention
(1年間にわたる単回セッションの強みベースキャラクター認知介入における「強みの知識」と「強みの活用」の連続媒介効果の検証)
・出版:Journal of Happiness Studies、2019年(オンライン公開:2018年8月20日)
・著者:Wenjie Duan, He Bu, Jinli Zhao, Xiaolong Guo
・所属:武漢大学(中国)、香港城市大学(香港)
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・大学1年生100名を対象にランダム化比較試験を実施した
・「90分の強みベース認知介入」を実施し、1年後まで追跡した
・1週間後には幸福感(Thriving)の向上とネガティブ感情の減少が確認された
・しかし1年後には効果は維持されず、統制群との差は消失した
・媒介分析の結果、効くのは「強みの知識」ではなく「強みの活用」だった
■研究の背景と目的
性格の強みに基づく介入は、幸福感を高め、
うつを軽減することがこれまでの研究で示されてきました。
ただ、2つの点が未解明のまま残されていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⑴1年以上という長期的なスパンでの効果の持続性が検証されていなかった
⑵その効果がなぜ生まれるのか、心理メカニズムがブラックボックスのままだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
強み介入がなぜ効くのかという「成分」として、
「強みの知識」と「強みの活用」の2つが挙げられていました。
しかし、これらがどの段階でどう機能しているのかの区別が、
実はこれまで十分にされていませんでした。
そこで本研究では、
「認知行動療法(CBT)」の理論的枠組みを応用した
単回セッションの介入を行い、
その効果を「1年後」まで追跡することを行いました。
そして「強みの知識の向上が強みの活用を促し、
それが幸福感の向上やネガティブ感情の軽減に繋がる」という媒介仮説を検証することを目的としています。
■90分間のセッションは何をやったのか?
介入は、CBTの「認知セクション(90分)」と「行動セクション(その後の1週間)」という
2つのステージに分けて実施されました。
当日の90分は、次の4つの活動で構成されています。
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【セッション⑴:強みの特定】
インストラクターがポジティブ心理学における各強みの定義や意味についてレクチャーし、
自身の強みについて考える土台をつくる
【セッション⑵:強み360°フィードバック】
自己評価だけでなく、外部の観察者(他者)からの客観的なフィードバックをもらい、
自分の「トップ5の強み」を多角的に見直す
【セッション⑶:特徴的な強みの決定】
事前テストで受検した「中国美徳質問票(CVQ)」の診断結果と、
⑴⑵の気づきを照らし合わせ、自分を象徴する「特徴的な強み」を厳選する
【セッション⑷:目標を決める】
日常生活で強みを定着させるための具体的な行動プランを、
スケジュール帳に組み込んでいく
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
上記のようなプロセスを経て、
「強みを知る」ステージから
「強みを活かす」ステージへと橋渡ししていく、
という設計になっています。
測定は、
介入の1週間前(T1)、当日直後(T2)、1週間後(T3)、そして1年後(T4)
という4つのタイミングで行われました。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:「短期的な効果」は確かにあった
介入群は統制群と比べて、短期的に次のような変化が見られました。
・幸福感(Thriving)が有意に向上(M=3.70→3.92)
・ネガティブ感情症状が有意に低下(M=1.57→1.30)
単回の介入であっても、
短期的にはしっかりと効果を発揮することが示されています。
◯わかったこと2:1年後、効果は元に戻ってしまった
ところが1年後の測定(T4)では、状況が変わります。
・介入群の幸福感は元のレベルまで低下(M=3.66)
・ネガティブ感情は元の水準まで上昇(M=1.71)
統制群との間に統計的な有意差はなくなり、
「単回セッションのみでは、1年後まで効果を維持するのは難しい」という、
厳しい現実が示された形になります(まあ、でもそうですよね…)
◯わかったこと3:効いていたのは「知識」ではなく「活用」だった
ここが本研究の核心部分です。媒介分析を用いて調べたところ、次のことが明らかになりました。
・「強みを実際に使った量」の変化(ΔStrengths Use)は、幸福感を高めネガティブ感情を減らすプロセスを、強く部分媒介していた
・一方で「強みの知識が増えたこと」自体は、最終的な成果を直接は予測しなかった
・「知識が増えることで活用が増える」という媒介の経路も、有意ではなかった
つまり、強み介入の本質は「自分の強みを知る(認知)」ことよりも
「その強みを実際に使う(行動)」ことにある、ということが、
データの上で裏付けられた形です。
■まとめと感想
個人的に、介入方法が参考になりました。
「90分間のセッション」の中で、
強みの特定をして、その次に強みのフィードバックをもらい、
その上で代表的な強みを決定し、目標を設定していくというプロセス。
これを、90分で実施し、追跡するという方法は、
実際の授業などで活用する上でも、有用だと感じました。
(相当ツメツメになりそうですが汗)
また、1年後までの追跡調査というところも興味深いものでした。
介入直後には確かにポジティブな変化があるのに、
時間とともに少しずつ収束していき、介入群と統制群の結果が近づいていく。
介入の効果のリアルな部分を感じさせられるところでした。
やはり一度やって終わりではなく、
定期的に深掘りし続けることが大事なのだと思います。
強みは、知っているだけでは効果が少ない。
それを、どう活かすかを計画してこそ、価値が生まれる。
そんなことを感じた論文でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:50km
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