配信日時 2026/07/05 22:33

今週の一冊『パワー・オブ・リフレクション ー教師教育と専門家養成に必要なことー』【カレッジサプリ】

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令和8年7月5日(第4514号)


今週の一冊『パワー・オブ・リフレクション ー教師教育と専門家養成に必要なことー』


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3342字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日土曜日は、午前中に立教大学 大学院の、
リーダーシップウェルカムプロジェクトというイベントに参加してまいりました。

私は、「フィードバック探索」という、
部下が上司にフィードバックを求めにいき、新しい関係を築く、
そのための予行練習として、AIも活用するという、

まさに「AI時代の人材開発」とも呼べるワークに参加させていただきましたが、
ワークの作り方をはじめ、大変学びになる時間でした。

これからますます「理論と、AIと、人間で学ぶ」という世界が
当たり前になっていくと思います。

そうした意味で、刺激もいただく時間でした。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する
「今週の一冊」のコーナーです。

本日ご紹介するのは、ちょうど本日、立教大学で開催された
翻訳者による特別ワークショップにも参加させていただいた、こちらの一冊です。

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『パワー・オブ・リフレクション: 教師教育と専門家養成に必要なこと』

フレット コルトハーヘン (著), エレン ナイツェン (著),
山辺 恵理子 (著), 坂田 哲人 (著), 村井 尚子 (著), 中田 正弘 (著), 矢野 博之 (著)
https://amzn.asia/d/0aOgeeUA

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さて、皆さまは「リフレクション」という言葉を
聞いたことがありますでしょうか?

教育や人材育成の文脈では、
経験から学び、行動を改善していくための
有効なスキルとして知られています。

日本語に訳すと「反省する」「内省する」「振り返る」
といった言葉に置き換えられることもあります。

ただ、そこには

「悪いことを直す」「一人で黙々とやる」「過去のために振り返る」

のような、限定的な意味合いを含んでおり、
『リフレクション』という言葉の拡がりを適切に表現できていません。

そんな中で本書で語られていることは、

リフレクションには「対話をする」「強みから見る」「未来をつくる」という、
これまでの意味よりも、もっと未来志向で、可能性に溢れ、
まさに「力(パワー)」を与えてくれる、奥行きのあるものである、

というメッセージが込められています。

ということで、早速中身をみてまいりましょう!



■「リフレクション」の集大成の一冊

「経験から学ぶこと(経験を振り返り、次の行動につなげていくこと)」の重要性は、
デューイ、デイビッド・コルブ、ドナルド・ショーンなど、さまざまな論者が語ってきました。

その中でも本書の著者のコルトハーヘンは、

「では、具体的にどのように振り返ればよいのか?」

という方法に焦点を当ててきた専門家として知られています。

大学院時代に、コルトハーヘンの『教師教育学』を読んだことがあります。

そのときは専門書らしい難解さもあり、理解するのにかなり骨が折れた記憶があります。

しかし今回の『パワー・オブ・リフレクション』は、
具体的な方法やケースが豊富に示されており、
「何をすればよいのか」がステップとして見えやすい点が、魅力的な一冊です。



■行動ではなく「意味」に目を向けよう

まず、印象的なのが、

「行動志向のリフレクション」と「意味志向のリフレクション」の違い

です。

うまくいかなかった場面を振り返ると、

私たちはすぐに「次はどうすればよいか」と考えがちです。

もっと説明すればよかった、
別の声かけをすればよかった、
準備を変えればよかった・・・。

こうした改善は大切ですが、
そこに急ぎすぎると、経験の奥にある本質を見落としてしまうことがあります。

コルトハーヘンが重視するのは、

「この場面で何が重要だったのか」
「本人にとって、何が大切だったのか」

に目を向けることです。

行動の奥には、考えがあります。
考えの奥には、感情があります。
そしてさらに奥には「本当はどうしたかったのか」という望みがあります。

ここにたどり着くことで、

振り返りは単なる改善会議ではなく、
自分や相手を深く理解し、未来に続く営みになっていく、

と述べられています。



■氷山の下にある「Feeling」と「Wanting」

本書、ならびにワークショップの中で紹介された
「氷山モデル」も、印象に残りました。

目に見えるのはDoing(何をしたか)です。

その下にはThinking(考えたこと)があります。
さらにその下にはFeeling(感じたこと)があり、
最も深いところにWanting(何を望んでいたか)があります。


私たちはどうしても、Doing(すること)ばかりを振り返りがちです。

何をしたか。何がうまくいったか。何がまずかったか。

しかし本質的な気づきは、
むしろFeeling(感じたこと)やWanting(望むこと)に眠っていることが多い。

特に教育や人材育成の場面では、
教える側の望みと、学ぶ側の望みが必ずしも一致しているとは限りません。

教える側は「成長してほしい」と思っていても、
学ぶ側は「まず安心したい」と思っているかもしれない。

こちらが「挑戦してほしい」と願っていても、
相手は「否定されたくない」と感じているかもしれない。

このズレに気づけるかどうかが、リフレクションの大切なポイントです。



■「9つの問い」から経験を見つめる

本書の中で紹介される「9つの問い」も、非常に実践的なツールです。

(0)文脈を確認したうえで、

自分について
「(1)何をしたか」
「(2)何を考えたか」
「(3)どう感じていたか」
「(4)何を望んでいたか」を見ていく。

そこから同じように、

相手についても
「(5)何をしたか」
「(6)何を考えていたか」
「(7)どう感じていたか」
「(8)何を望んでいたか」

を考えていきます。


この枠組みがあることで、振り返りの視野が一気に広がります。

たとえば、何かうまくいかなかった場面があったとき、
私たちは自分の行動や考えには目を向けます。

しかし、特に自分や相手が何を「感じ(Feeling)」、
何を「望んでいた(Wanting)」のかを考えることは、
私たちは苦手とするようです。

ワークショップの事例でも、相手側のFeelingやWantingが抜け落ちていることが示されていました。

その他にも、「3つの簡略版の問い」「9つの問い」「12の詳細の問い」というように、
すぐに使える具体的な方法が本書には詳しく解説されています。

必見です。



■「強み」もリフレクションする

もう一つ印象に残ったのが、

リフレクションは失敗体験だけに行うものではない、ということです。

うまくいかなかった経験を振り返ることは大切です。

しかし、うまくいった経験にこそ、「自分らしさや強み」が表れていることがあります。

むしろ成功体験を丁寧に振り返ることで、
「自分はどんなときに力を発揮できるのか」が見えるもの。


人は「ネガティビティバイアス(弱みを見てしまう)」を持っているため、
どうしてもできなかったこと、足りなかったことに目が向きがちです。

しかし、自分の強みや人となりに光を当てることで、
未来に向かう力が生まれる。

コルトハーヘンのリフレクションの中心に、
「強み」という視点が置かれていることに、
個人的にもとても嬉しさを感じました。



■コアリフレクションと「人となり」

本書の中で特に心に残ったのが、
「コアリフレクション」という考え方です。

これは、単に実践を改善するための振り返りではなく、
その人の専門家としてのアイデンティティや、「ひととなり」に目を向けるリフレクションです。

ワークショップでは、ある教育実習生の事例が紹介されました。

最初は知識を伝えようとしてもうまく興味を持ってもらえなかった。
しかし、自閉症の弟について自分自身の経験を語った瞬間、
周囲の関心が変わっていった、という話です。


ここから感じたのは、教えるという行為は、
知識を伝えることだけではないということ。

自分が一人の人間として何を大切にしているのか、
どんな経験を持ち、何を願っているのか。

そのアイデンティティとも紐づく「ひととなり」が、
学びの場に影響を与えている。

ただし、そこには「傷つきやすさ」も伴います。

自分を示すことは、どこか怖さもある。
知識を伝えるほうが安全で、自分自身を出すことには抵抗がある。

その上で、これからどちらを選ぶのか、選びたいのか。
その葛藤を含めると「振り返る」では片付けられない、
人としての発達の問いに変わるようにも思えるのでした。



■まとめ:リフレクションは「未来」につながる

最後に、「リフレクションとは未来に繋がるものである」という
力強いメッセージに触れておきたいと思います。

リフレクションは、経験を丁寧に見つめることで、
自分が何を大切にしているのかに気づき、
相手の望みにも目を向け、そして「未来」の行動を選び直していく営みであるということ。

すぐに解決策を出すのではなく、まずは経験の意味に触れる。
自分と相手のFeelingやWantingに目を向ける。
そして、自分の強みやひととなりにも光を当てていく。

このプロセスは、教育だけでなく、
自分のキャリアや、家族や人間関係の関わりなど、
あらゆる場面に通じるものだと感じます。


最後に、このような学びの機会をつくってくださった
中原先生、翻訳者の山辺様、坂田先生、矢野先生をはじめ、
主催いただいた皆様に心より感謝いたします。ありがとうございました。

また余談ですが、ワークショップの途中で、
中原先生から「強み先生」として私のnoteをご紹介いただいたことも、嬉しい出来事でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
https://note.com/courage_sapuri/n/n14fedd9831ba?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:37km

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