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令和8年7月1日(第4510号)
「スマホ無視」が、あらゆる人間関係を壊す?!
ー3つのメタ分析が示す衝撃の結果ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3678字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、立教大学のリーダーシップの授業の
最終プレゼン(本選)でした。
クライアント企業のお題に対して、
60チームがそれぞれ考えたプランを提案し、
上位5チームが発表し、優秀賞を決めるという場です。
内容もそうですが、その中でチームで起こった様々なプロセスが、
リーダーシップ(自らの影響力)を自覚し、開発するきっかけになります。
こうした他者との関わり方などを見つめる機会が
大学の授業であるといのは、改めて素晴らしいな、と思う時間でした。
*
また、午後からは高校のリーダーシップの授業も、最終回。
ここでは、自己認識の一環として「強み発見ワークショップ」をやらせていただきましたが、
高校3年生にも、同じように自己認識を広げる機会になっており、
有効性を感じる時間でした。
早く、この内容も書籍にしないと・・・。
人踏ん張りして、進めていきたいと思います。
また、朝と夜で合計17kmのランニングでした。
*
さて、本日のお話です。
突然ですが、皆さまは、
「ファビング(phubbing)」
という言葉を、ご存知でしょうか?
スマートフォンを意味する"phone"と、
無視・冷遇するを意味する"snubbing"を組み合わせた造語で
2012年にオーストラリアのビクトリア大学のキャンペーンで生まれ、
世界中に広まった比較的新しい概念です。
目の前にいる人が、あなたと話しながらも視線はスマホへ。
あるいは、自分がそうしてしまっている瞬間…。
心当たりはないでしょうか?
「チラっと見ただけ」。
そう思いながらも、相手はどこかで
「自分との時間は、大切にされていない」と感じているのでは?
そんな疑問を研究者は、近年テーマにしてきました。
今日ご紹介するのは、
2020年・2023年・2025年に発表された3本のメタ分析です。
対象は「一般的な対人関係」「親子関係」「恋愛関係・パートナー」という、
私たちの身近な関係です。
それぞれで何が明らかになったのか、
ファビングに関するメタ論文を3本、まとめてお届けします。
それでは、どうぞ!
■目次
・30秒でわかる本記事のポイント
・⑴【2020年のメタ分析】 一般的な対人関係編
ー結論:「スマホがある」だけでは問題ない。でも「使えば」話は別である
・⑵【2023年のメタ分析】親子関係編
ー結論:両親でのファビングは「家庭の中で悪影響が累積する」
・⑶【2025年のメタ分析】 パートナー・恋愛関係編
ー結論:「スマホ依存」が原因になり、「関係への葛藤と無関心」が結果として現れる
・まとめと感想
■30秒でわかる本記事のポイント
・スマホが「置いてあるだけ」では対人関係への悪影響は確認されなかった。
問題は「使う」ことである
・親がスマホで子どもを無視すると、
不安・攻撃性・自尊心の低下・対人スキルの低下と幅広く悪影響が出る。
両親がともにファビングする場合は特に深刻
・恋愛・パートナー関係では、
関係満足度・親密さを低下させ、葛藤と嫉妬を高める。
「メディア依存」が最大の要因
■⑴【2020年のメタ分析】 一般的な対人関係編
まず2020年の研究から。43件の実証研究・53サンプルを統合した、メタ分析の論文です。
この研究が問いかけたのは、「スマホが視界にあるだけでも人間関係に悪影響があるのか?」という問いでした。
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<論文情報>
タイトル:A Meta-Analysis of Mobile Phone Use and Presence(携帯電話の使用および存在に関するメタ分析)
掲載誌:Human Communication & Technology, Vol.1, No.2(2020年)
著者:John Courtright, Scott Caplan
所属:デラウェア大学(アメリカ)
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◯結論:「スマホがある」だけでは問題ない。でも「使えば」話は別である
「食卓にスマホを出しているだけで会話の質が下がる」。
そんな話を聞いたことがある方も多いと思います。
しかし、実際にデータを統合してみると、
スマホが置いてあるだけ(使用していない状態)では、
相手への印象や会話の質を有意に下げるという証拠は得られなかった、
というのが結論です。
一方で、会話中に実際にスマホを操作する「ファビング」については、
明確な結果が出ました。
37件の研究を分析した結果、
対話中のスマホ操作は、
操作されていない側に対して
一貫してネガティブな認識(不快感・会話の質の低下)を与えることが確認されました。
また、年齢・性別・関係性の深さといった
「効果を左右する要因」も検証されましたが、
どれも有意な影響はなし。
つまり、
「親しい仲だから大丈夫」
「相手が若いから平気」
という話ではない、ということです。
■⑵【2023年のメタ分析】親子関係編
次は2023年。親子関係に特化したメタ分析で、
中国で実施された42件の研究・56,275人というかなり大規模なデータの以下の論文です。
分析対象となったのは、子どもの社会情緒的な発達に関わる4つの側面。
内面化問題(不安・うつなど)、
外面化問題(攻撃性・非行など)、
自己概念(自尊心)、
社会情緒的能力(感情調整・対人スキル)です。
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<論文情報>
タイトル:Parental Phubbing and Child Social-Emotional Adjustment: A Meta-Analysis of Studies Conducted in China
(親のファビングと子どもの社会情緒的適応:中国で実施された研究のメタ分析)
掲載誌:Psychology Research and Behavior Management(2023年)
著者:Jinghui Zhang ほか5名
所属:上海師範大学・マッコーリー大学・香港教育大学
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◯結論:両親でのファビングは「家庭の中で悪影響が累積する」
結果は、すべての社会情緒的な発達領域で有意な関連が確認されました。
(よくない意味で、です…)
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・内面化問題(不安・うつ)との正の相関:r = 0.270
・外面化問題(攻撃性・非行)との正の相関:r = 0.210
・自己概念(自尊心)との負の相関:r = -0.206
・社会情緒的能力との負の相関:r = -0.162
※補足:r = 0.2〜0.3は「無視できない明確な相関(関連)」とされます.
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親がスマホで子どもを無視する行為が多いほど、
子どもは不安になりやすく、
怒りが表に出やすく、
自分に自信が持てなくなり、
人とうまく関わる力が弱まっていく…。
そういう傾向が、データとして浮かび上がってきました。
ちなみに、特に注目すべきは
「両親がともにファビングを行う場合」の結果です。
父親だけ、あるいは母親だけがファビングをする場合よりも、
両親揃って行う環境では子どもへの悪影響が
より強くなることが確認されました(内面化問題でr = 0.284)。
・・・なぜそうなるのか?
研究者たちはいくつかの理論でこれを説明しています。
一つは「置換仮説」。
親がスマホに集中することで、
子どもに向けるべき注意と時間が物理的に奪われるという考え方。
ある研究では、スマホを使っている親が
子どもの呼びかけを無視する確率は5倍に跳ね上がるとも報告されています。
もう一つは「期待違反理論」。
子どもは親に「自分を見てくれる」という期待を持っている。
その期待が繰り返し裏切られると、
「自分は親にとって大切ではないのだ」という感覚として内面化され、
自尊心の低下や問題行動につながる、という流れです。
子どもの前でのファビング、要注意です。
■⑶【2025年のメタ分析】 パートナー・恋愛関係編
最後は2025年の最新研究。
恋愛・婚姻関係に特化した52研究・58サンプル・19,698人のメタ分析です。
この研究が特徴的なのは、
「なぜファビングが起きるのか(先行要因)」と
「何をもたらすのか(結果)」
の両方を整理しようとした点です。
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<論文情報>
タイトル:A meta-analytic study of partner phubbing and its antecedents and consequences
(パートナー・ファビングの先行要因および結果に関するメタ分析研究)
掲載誌:Frontiers in Psychology(2025年5月公開)
著者:Nie Ni ほか4名
所属:ユンチェン大学(中国)・マレーシア・プトラ大学 ほか
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◯結論:「スマホ依存」が原因になり、「関係への葛藤と無関心」が結果として現れる
まず、「なぜファビングが起きるのか?」の
先行要因として最も強く関連していたのは「メディア依存(スマホへの依存・中毒)」(r = 0.492)。
次いで「愛着不安」「愛着軽視(回避)」「うつ」「孤独感」も有意な関連を示しました。
一方、「自尊心の低さ」は有意な予測因子ではありませんでした。
つまり、ファビングをしてしまう人の背景には、
しばしば「スマホへの強い依存」や、
「人との距離感に悩む心理(愛着の問題)」がある
と言えます。
そうしたファビングによる結果の面では、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・関係満足度・親密さ・パートナーへの反応性:すべて低下
・関係内の対立(葛藤):特に強い正の相関(r = 0.573)
・嫉妬感:増加
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となっています。
「ファビングされた側は不満を蓄え、
関係の中に葛藤が生まれやすくなる」というメカニズムです。
また、文化的な違いも興味深い結果でした。
西洋文化では「対立(葛藤)や関係満足度の低下」と強く結びつく一方、
東洋の集団主義的文化では「結婚満足度の低下」や「嫉妬」により大きな影響が見られたとのこと。
文化によって、ファビングが「何を傷つけるか」の表れ方が異なるようです。
■まとめと感想
ファビングに関する3本のメタ分析を振り返ってみると、こういう結論になりそうです。
・スマホが「存在するだけ」では悪影響はない。
・しかし、それを「使って相手を無視する」という行為は、
対人関係・親子関係・恋愛関係のどこにおいても、確実にダメージを残す。
ということでしょう。
改めて、自分自身のことを振り返ってみます。
妻の話を聞きながら「スマホ見てる」ということ、
子どもと遊びながらふとスマホをいじっていたこと。
一方、スマホは手元にあると触れてしまう。
通知が来ると確認せずにいられない。
それ自体が一種の習慣化であり、依存です。
ある対策だと、デジタルデトックスのように、
そもそもスマホを視界に入れない。
食卓には持ち込まない。
2人で話すときは机の上に出さない、
みたいにする工夫がよい、と紹介されていました。
人と向き合う時間を、スマホの通知から守ること。
それは、関係を守ることと同じなのだろうな、そんなことを思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:0m
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