配信日時 2026/06/25 09:58

「やる気」がゼロでもできる仕組みづくりとは? —2分ルールの科学的根拠ー【カレッジサプリ】

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令和8年6月25日(第4504号)


「やる気」がゼロでもできる仕組みづくりとは? —2分ルールの科学的根拠ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3324字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は早朝に13kmのランニング。

午前中はアポイントと研修企画の作成。
午後からは、外部支援者として関わらせていただいている
クライアント様への定例ミーティングでした。
その後、出版の編集者の方との打ち合わせ、そして夜は会食など。

一回、完全にボツになってしまった原稿(17万文字・・・涙)から
再度巻き直して、あらためて企画を練り直しております。

ようやく方向性の詳細について、編集者の方とも
すり合わせができてきたので、この夏に一気に仕上げたいと思います。

がんばります…!



さて本日のお話です。

今日は、「先送り」を克服するための、ある心理学的フレームワークについてご紹介したいと思います。


突然ですが、皆さんは

「2分ルール」

というものをご存知でしょうか?


「まず2分だけやってみる」、最初に着手さえすれば、
その後は、なぜか不思議とその後も続いてしまうというやつです。

(この2分ルールは『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』で紹介されて、知られるようになったそう。
 ちなみに、めっちゃいい本…!超おすすめです)
https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/9138/

このことは、多くの方が直感的に「なんとなく効く気がする」と感じながらも、
「なぜ2分だけやることがいいのか?」については、よくわからない。

今回は、その「2分ルール」の理論的な根拠となっている論文、
BJ・フォッグ教授が提唱した「フォッグ行動モデル(Fogg Behavior Model)」という論文がありましたので、
そのエッセンスをご紹介します。

読み終わったあとに、
「なるほど、だから2分なのか!」と腑に落ちていただけたら嬉しいです。

それでは、どうぞ!


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<今回の論文>
・タイトル: A Behavior Model for Persuasive Design
 (説得的デザインのための行動モデル) 
・出版: Persuasive '09, ACM国際会議予稿集(2009年)
・著者: BJ Fogg(BJ・フォッグ)
・所属:スタンフォード大学 説得的テクノロジー研究所
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・人間の行動は「動機」「能力」「トリガー」の3つが同時に揃ったときにだけ発生する

・「動機」を高めるよりも、”行動を徹底的に簡単にする(=能力を上げる)”ほうが、行動変容はずっとうまくいく

・トリガーは「絶妙なタイミング」でなければ逆効果になる。
 動機・能力が十分でないときに促すと、煩わしさやフラストレーションを生む

・「2分ルール」はこのモデルの完璧な実用化であり、
 "動機がゼロでも動ける設計"を体現している(=実施に必要な「能力」を極めて低くする)

・行動の失敗は「意志が弱い」からではなく、設計のボトルネックがどこかにあるだけである



■なぜ、わかっていてもできないのか

「やるべきことはわかっている。でも動けない」。

この状態を,フォッグ教授は感情論や根性論ではなく、
きわめてシンプルな「3要素のモデル」で説明しています。それが以下の方程式です。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
<B = MAT>

「行動(Behavior)は、動機(Motivation)× 能力(Ability)× トリガー(Trigger)の掛け合わせで生まれる」という考え方。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ポイントは、この3つがまったく同じ瞬間に揃わなければ、行動は発生しないという点。

どれかひとつでも欠けていると、人は動かない。それだけのことなのです。



■「動機」「能力」「トリガー」を紐解く

◯動機(Motivation)とは「うまみ」を感じられるか

動機には、以下の3つの根源的なドライバーがあります。

・快楽/苦痛:本能的・即時的な反応
・希望/恐怖:結果への期待と予期(最も強力になり得ると言われている)
・社会的受容/拒絶:「仲間に認められたい」「集団から外れたくない」という社会的な駆動力

私たちが「やる気が出ない」と感じるとき、この動機がそもそも低い状態にあることが多いわけです。

「うまみ」がなければやろうと思わない。
あるいはやらないことによる「失うもの」がイメージできなければ手を付けられない。

実にシンプルですね。


◯能力(Ability)とは「行動のシンプルさ」である

ここが、今回最もお伝えしたい核心です。
フォッグ教授は、「能力」を「その行動がいかに簡単か(シンプルか)」として定義しています。そして、行動を難しくする要因として、以下の6つを挙げています。

⑴時間:それをするのに十分な時間があるか
⑵お金:経済的な負担はないか
⑶身体的努力:体を使う労力はどのくらいか
⑷頭脳サイクル:深く考える必要があるか(人間は本質的に熟考を嫌う、とフォッグ教授は言います)
⑸社会的逸脱:社会のルールや規範を外れる必要があるか
⑹非日常性:普段の習慣から大きく外れる行動か

これらはひとつの「鎖」のようなもので、どれかひとつが切れても、行動への道は閉ざされてしまう、とします。

先にお伝えすると「2分ルール」というのは、
この「時間・努力・頭脳サイクル」などのハードルをぐっと下げる工夫なわけです。


◯トリガー(Trigger)—「タイミング」こそが肝である

動機と能力が揃ったとしても、最後に「引き金」がなければ行動は起きません。
フォッグ教授はトリガーを3種類に分けています。

・スパーク(Spark):動機が低い人に、希望や恐怖を組み込んで行動を促すもの
・ファシリテーター(Facilitator):動機はあるが行動が難しい人に、「これなら簡単ですよ」と伝えるもの(Amazonの「1クリック購入」はまさにこれです)
・シグナル(Signal):動機も能力も高い人への、単純なリマインダー

動機と能力が十分に揃っている「その瞬間」にトリガーが引かれなければ、行動は生まれない。

逆に言えば、動機が低いときに無理に背中を押すトリガーは「煩わしさ」を生み、
能力が低いときに促すトリガーは「フラストレーション」を植えつける。

これは、マーケティングや通知設計にも刺さる洞察とされます。



■「2分ルール」はなぜ機能するのか


さて、ここまで読んでいただくと、冒頭の問いへの答えが見えてきます。

たとえば、「ランニングを毎日30分する」という目標を立てたとします。

これを実行するには、肉体的努力、時間、そして習慣からの逸脱が必要です。

つまり「能力」が非常に低い状態です。

仕事で疲れ果てた夜、動機が少しでも揺らいだ瞬間に、
私たちが「今日はいいや」と先送りにしてしまうのは、ものすごく普通なことでしょう。

ところが、

「ランニングシューズの紐を結ぶだけ」「外に出てドアを閉めるだけ」という
『2分の行動』に落とし込むと、
時間も努力もほぼゼロ(=能力が極限まで高い状態)になります。

これなら、モチベーションがほぼゼロの日でも、
行動の閾値をクリアできてしまう、ということ。

意味はもうひとつ。

靴を履いた瞬間、脳の中で「せっかくここまでやったんだから」という動機が湧き上がってくる。

これが「行動の慣性」です。

最初の一歩を踏み出すことで、次の一歩へのハードルも下がっていくわけです。



■まとめと感想

本論文はあくまで概念モデルの提唱であり、
動機や能力の強さを厳密に数値化するための測定スケールは用意されていません。

それでも、今回の論文を読んで、あらためて感じたことがあります。

「先送り」は、意志の弱さではない。
「設計の問題である」ということです。

企画書を仕上げる、報告書を書く、勉強を始める。

こうした面倒くさい、と思うことは、放置しておくと、
それが澱のように自らの内側に溜まっていき、自らを苦しめます。
そして、多くの場合、私たちは自分を責めがち。

でも本当の問題は、

「その行動を完遂するために必要な能力が、
 今の自分の状態に対して高すぎる」
 
という感覚にあるのかもしれません。

だから、解決策はシンプルです。

「やることを、圧倒的に小さくする」。

「2分でできる」くらいに、必要な能力を極小化する。

腕立て伏せ1回。
本を1ページだけ読む。
企画書のタイトルだけ書く。
1分だけジョギングする。

私自身も、「2分だけやって、終わったらやめてもいい」と決めると、
ほぼ100%やめずに続いてしまうという経験を繰り返しています。

始めてしまえば、もう半分終わっているのです。

フォッグ教授のモデルは、「人間は怠惰である」という事実を責めるのではなく、
人が行動を起こせる条件を、「B=MAT」という式に表したことが、秀逸だと思いました。

自分自身の行動設計にも、チームや組織のデザインにも、きっと使えるフレームワークだと思います。

ぜひ、今日から「2分だけ」を試してみる。

そして、「始めれば、すでに半分終わっている」、
そんな言葉を胸に、今日も小さな一歩を積み重ねていきたいものですね。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:193km

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