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令和8年6月23日(第4502号)
「呼吸を整えると、心も整う」のエビデンスはコレだ!
ー12の研究・800人のメタ分析が示す科学的根拠ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3546字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、高校のリーダーシップの授業作成。
また生まれて初めての「高校生の定期テスト」なるものを作っておりました。
リーダーシップに定期テストというのも、なんだか変な感じがしますが、
知識としてしっておいたほうがよいこと、また授業を通じて、どのように自己理解が深まったのか…など
色々アイデアが広がって、なかなか楽しい時間でした。
そして、改めて高校の先生方は、こうした授業準備をしながら
部活動もしたり、生活指導をしたり、本当にすごいな・・・と尊敬している次第です。
また、夜は筋トレと12kmのランニング。
風邪からようやく体調がもとに戻ったので、
ここから練習も強化していきたいと思います。
*
さて、本日のお話です。
皆さまは、「マインドフルネス」とか「呼吸法」というキーワードは、聞いたことがありますでしょうか?
だいぶ有名になったので、中には、実践されている方もいらっしゃるかと思います。
一方で「呼吸法って、本当に意味があるの?」とどこかで疑っている方も、実は少なくないのではないかと(私もそのひとりでした笑)
ところが少し前、アイスバス(=氷水に浸かるという謎ワーク)を体験したとき、「呼吸を整えれば、普通に乗り切れる!」と聞いて、呼吸法を試してみました。
するとリラックスに入ったり、ある意味でハイな感覚になったりして、呼吸がこれほどまでに肉体に直接働きかけるものとは思っておらず、かなり、驚きました。
「呼吸には、何かある」。
そう実感してから、論文を探してみました。
すると、呼吸法に関する12の研究・785名のデータをまとめたメタ分析が見つかりました。
その内容が実に興味強く、呼吸法の効果が科学的にも確認されていることを示すものでした。
ということで、今日は、皆さまにその論文の内容をご紹介したいと思います。
それでは、どうぞ!
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■今回の論文
・タイトル: Effect of breathwork on stress and mental health: A meta-analysis of randomised-controlled trials(ストレスとメンタルヘルスに対する呼吸法の影響:ランダム化比較試験のメタアナリシス)
・掲載誌: Scientific Reports, 2023年(オンライン公開:2023年1月9日)
・著者: Guy William Fincham, Clara Strauss, Jesus Montero-Marin & Kate Cavanagh
・所属: サセックス大学 心理学部(英国)/オックスフォード大学 精神医学部(英国)/パルク・サニタリ・サント・ジョアン・デ・デウ 教育・研究・イノベーション部門(スペイン)ほか
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・12件のRCT(785名)を分析した結果、呼吸法はストレスを有意に軽減することが確認された
・不安・うつ症状への改善効果も同様に確認されている
・スローペース呼吸・ファストペース呼吸ともに効果が見られた(ただしファストペースは研究数が少ない)
・対面でもリモート(セルフヘルプ形式)でも有効であり、アプリ等での普及に適している
・心理的ストレスを対象とした「RCTのみ」のメタアナリシスとしては、本研究が世界初である
■なぜ今、呼吸法が注目されているのか
新型コロナウイルスのパンデミック以降、世界的にストレス・不安・うつ病の割合が急増しています。
認知行動療法などの心理療法はもちろん有効ですが、
専門家の時間やコストを多く必要とし、待機時間も長いという現実的な課題があります。
「もっと低コストで、誰でもアクセスでき、大規模に展開できる介入はないか」、
そのような問いの中で、改めて注目されているのが今回のテーマの「呼吸法(breathwork)」です。
特別な道具も資格も必要なく、どこでも今すぐできる。
そのシンプルさが、メンタルヘルス支援の新たな選択肢として、研究者たちの関心を集めているとのこと。
■そもそも「呼吸法」とは何か
ここで、用語の整理をしておきましょう。
「呼吸法(ブレスワーク)」とは、意図的に呼吸を制御・調整することを指します。
普段、私たちは無意識に呼吸していますが、
これを意識的にコントロールすることで、自律神経系に直接働きかけることができます。
呼吸法は大きく、スローペース呼吸とファストペース呼吸の2種類に分類されます。
◯呼吸法1:スローペース呼吸
1分間に約5〜6回という、通常(成人は約12〜20回/分)よりもゆっくりした呼吸です。
副交感神経を活性化し、心身をリラックスさせる方向に働くとされています。
心拍変動(HRV)が高まり、ストレスへの抵抗力が上がることが示されています。
代表的な手法としては、以下のものがあります。
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ーコヒーレント呼吸(共鳴呼吸): 吸気5秒・呼気5秒を繰り返す(約6回/分)。HRVが42%向上、コルチゾールが28%低下したとするメタ分析の結果もある(Laborde et al., 2022)
ー4:8呼吸法: 吸気4秒・呼気8秒(約5回/分)。呼気を長くすることで迷走神経を刺激し、HRVの改善や意思決定の向上が報告されている(De Couck et al., 2019)
ーボックスブリージング(Box breathing): 吸気4秒・止息4秒・呼気4秒・止息4秒と、正方形(ボックス)を描くように均等に呼吸する。コルチゾール約32%低下、HRV改善が報告されている(52件RCTメタ分析, 2026)。米海軍SEALsも採用していることで知られる
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◯呼吸法2:ファストペース呼吸
通常よりも速い、または強い呼吸法です。交感神経を一時的に活性化させるため、「覚醒」や「エネルギーの高まり」をもたらすとされています。
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・カパラバティ(火の呼吸): ヨガ由来の、鼻から素早く強く呼気を繰り返す呼吸法。エネルギーを高め、集中力を上げるとされる
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アイスバスの前に私がやっていた「速い呼吸」は、まさにこのファストペース呼吸の領域でした。
その後、「スローペース呼吸」にすると、リラックス度が急上昇して、昇天したかのような心地よさになります。
(これは、ぜひ味わっていただきたい…!)
■研究の方法:どのように検証したのか
本研究は、これまでに実施された呼吸法に関するランダム化比較試験(RCT)を網羅的に収集し、統合分析(メタアナリシス)を行ったものです。
・18歳以上の成人を対象にしたRCTのみ
・介入全体の50%以上が呼吸法であること
・心理的尺度(ストレス・不安・うつ)を報告していること
という条件で調査を行いました。
■主な結果(わかったこと)
以下、本研究からの発見をまとめます。
◯わかったこと1:呼吸法はストレスを有意に軽減する
主要評価項目である「ストレス」について、12件のRCT・785名のデータを分析した結果、呼吸法を実施した群は対照群と比較して、有意にストレスが低下しました(Hedges' g = −0.35、p = 0.0009)。
「効果量 g = 0.35」は、統計的には「小〜中程度」の効果と分類されます。
感覚的にはやや地味に聞こえるかもしれませんが、ストレス介入の研究としては決して小さくない数字です。
◯わかったこと2:不安・うつ症状にも同様の改善効果あり
副次評価項目として、不安(20件の研究)とうつ症状(18件の研究)も分析されました。
・不安: g = −0.32(p < 0.0001)
・うつ症状: g = −0.40(p < 0.0001)
どちらも統計的に有意な改善効果が確認されています。
特にうつ症状への効果量(g = −0.40)は、既存のオンラインベース心理療法やマインドフルネスと「臨床的に遜色のない水準」と研究者たちは述べています。
◯わかったこと3:対面でもリモートでも、効果は変わらない
本研究で興味深いのは、提供方法によるサブグループ解析でも有意な効果が確認されたことです。
・対面での指導
・グループでの実施
・リモート(セルフヘルプ形式、アプリ等)での実施
これらすべての条件で、有意な効果が認められました。
つまり、専門家のリアルタイムな指導がなくても効果は出るということです。
AppleWatchやGarminにも呼吸のワークが搭載されていますが、それはある意味、この「セルフヘルプ形式でも有効」という知見を実装しているとも言えます。
なお、実践時間(総時間数)やセッション頻度と効果量の間には、有意な相関は見られませんでした。
「量をこなせばもっと効く」というわけでもないようです。
■まとめと感想
改めて振り返ると、アイスバスの前に実践していたあの呼吸法が、「ボックスブリージング」や「火の呼吸」として研究上でも分類されているものだったと知り、少し腑に落ちる感じがありました。
スローペースで心を落ち着かせる呼吸もあれば、ファストペースで覚醒を高める呼吸もある。
同じ「呼吸法」というくくりの中に、1対1のリズムもあれば、5秒吸って5秒吐くものもあれば、1分間に5〜6回というものもある。
じつに多彩なんだな、と改めて感じました。
そして何より印象的だったのは、AppleWatchにもGarminにも「呼吸ワーク」の機能が標準搭載されているという事実です。
ウェアラブルデバイスが呼吸法を取り上げているということは、その効果が「一定の確からしさを持って認められている」という証左に他ならないのでしょう。
そして、論文を読んで、そのことを改めて実感しました。
「呼吸は、思ったよりずっと力強く、奥深い」と。
ということで、たまにはゆっくり深呼吸をしてみてはいかがでしょうか?
(ちなみに、おすすめは「ボックスブリージング(4秒吸う→4秒とめる→4秒はく→4秒とめる)」です)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:167km
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