配信日時 2026/06/18 08:12

強みを活かすことがなぜ「キャリア満足」に繋がるのか? ー自分らしさの媒介効果ー【カレッジサプリ】

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令和8年6月18日(第4497号)


強みを活かすことがなぜ「キャリア満足」に繋がるのか? 
ー自分らしさの媒介効果ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3543字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、2件のアポイント。
また、子どもの療育関連の同行など。

なかなか本人も自分の思い通りにならない中で、頑張っているなあ・・・と
その様子を見学をしながら感じていました。

「生きる」とは、思い通りにならないことの連続であり、
その中で自分なりにもがいたり、納得させたりしながら進む旅路のようだ、
そんなことを思う時間でもありました。

また、ようやく喉の痛みも収まったので、
久しぶりに7kmのランニング。

ここから練習も再開していきたいと思います。



さて、本日のお話です。

本日も、強みに関する論文をご紹介したいと思います。

テーマは「強みの活用とキャリア満足度」です。

さて、「強み」というのは「その人の自然な思考・感情・行動のパターン」とも言われ、「自分らしさ」に紐づいている一つの要素でもあります。

Subtext(サブテキスト):そして「強みを活かす」ということは、ある意味「ありのままの自分を活かす」ということ。
そしてその感覚が「キャリアの満足度」を高めるのではないか——そうした仮説のもとに、調査が行われました。

その結果、やはり「強みの活用」というのは、「ありのままの自分でいられること」を通じて、「キャリア満足度を高める」ということが明らかになったという日本の病院における定量的な調査です。

近年では「キャリア自律」など注目されているところもありますので、実践への示唆にも繋がる、大変興味深い論文です。

それでは早速、内容を見てまいりましょう!



■今回の論文
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・タイトル:The role of work authenticity in linking strengths use to career satisfaction and proactive behavior: a two-wave study(強みの活用をキャリア満足度およびプロアクティブな行動へと繋ぐ上での仕事におけるオーセンティシティ(自分らしさ)の役割:2ウェーブ研究)
・出版:Career Development International, Vol. 25 No. 6, 2020年
・著者:Makoto Matsuo(松尾 誠)
・所属:北海道大学大学院経済学研究院
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■30秒でわかるこの論文のポイント

・強みを活かしている人ほど、職場で「自分らしく」いられる傾向がある

・その「自分らしさ(仕事のオーセンティシティ)」が、キャリア満足度を完全に媒介する

・同じ自分らしさは、プロアクティブな行動(変化を起こす行動)も部分的に媒介する

・つまり「強み→自分らしさ→満足・行動」という流れが、データで裏付けられた



■研究の背景

ポジティブ心理学では、自分の本当の自己に従って行動する「オーセンティシティ(自分らしさ)」は、人間にとって重要な特性だとされてきました。

また、キャリア研究の文脈では、複数の雇用主のもとでアイデンティティを積み重ねていく「境界なきキャリア」において、オーセンティシティは重要な構成要素だと位置づけられてきました。

特に「カレイドスコープ・キャリア・モデル(万華鏡キャリアモデル)」では、オーセンティシティは意味のあるキャリアを形づくるための3つの不可欠なパラメータの一つとされています。

これまでの研究でも、内発的な動機づけや、自律性・上司のサポートといった職務上のリソースが、仕事における自分らしさを高め、エンゲージメントや満足度の向上につながることは示されていましたが、「強みの活用とオーセンティシティの関係そのもの」を、定量的に検証した研究は、実はこれまでありませんでした。



■研究の目的

そこで本研究では、ポジティブ心理学に基づくアプローチを用いて、「強みの活用」が「仕事のオーセンティシティ」を介して、「キャリア満足度」と「プロアクティブ行動(=状況を改善しようと、自ら変化を起こす行動)」にどのような直接的・間接的な影響を与えるのかを検証することを目的としています。



■研究の方法

◯対象と手続き:

日本の2つの大規模急性期病院に勤務する看護師を対象に、1ヶ月の間隔をあけた2回の調査(2ウェーブ調査)を実施しました。
(※強みの活用が、後で測る変数=キャリア満足度やプロアクティブ行動を予測できるかを調査するため2回に分けています)

タイム1(1回目)で「強みの活用」を測定し、タイム2(2回目)で「仕事におけるオーセンティシティ」「キャリア満足度」「プロアクティブな行動」を測定しました。
有効回答数は298名(回答率53.5%)で、その大半(95.3%)が女性でした。

◯測定尺度:

・強みの活用: Van Woerkomら(2016b)の4項目尺度を本研究向け(1ヶ月の期間)に修正して使用
・仕事におけるオーセンティシティ: Van den BoschおよびTaris(2014)による尺度のうち、中核となる「オーセンティックな生き方(自分に誠実に生きること)」の4項目を使用
・キャリア満足度: Greenhausら(1990)の5項目尺度を使用
・プロアクティブな行動: Griffinら(2007)の6項目尺度を使用

・統制変数: 病院組織、性別、年齢、役職をモデルに含めました



■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:強みの活用は「自分らしさ」を育む

仕事のオーセンティシティは、キャリア満足度(β=0.23, p<0.05)およびプロアクティブな行動(β=0.32, p<0.001)と、それぞれ正の有意な関連を示しました。
そして強みの活用は、仕事のオーセンティシティ(β=0.35, p<0.001)、プロアクティブな行動(β=0.29, p<0.001)と正の有意な関連を示しています。

ただ、興味深いのは、強みの活用からキャリア満足度への直接的な影響は、有意ではなかった(β=0.07, 有意差なし)という点です。
つまり、強みを使っているからといって、それが直接キャリア満足度に結びつくわけではない、ということになります。


◯わかったこと2:「自分らしさ」がカギを握っていた

ここがこの研究の核心部分です。媒介効果の検証では、強みの活用からオーセンティシティを介したキャリア満足度への間接効果は有意であり、しかも直接効果が有意でなかったことから、仕事のオーセンティシティが「完全媒介」していることが示されました。

つまり、「強みを活かす→キャリア満足度が上がる」という単純な式ではなく、「強みを活かす→職場で自分らしくいられる→だからキャリアに満足する」という順番でこそ、満足度が高まっていたわけです。
強みの活用が直接効くわけではなく、自分らしさという土台を経由してこそ効いてくる、というのは、なかなか奥深い発見だと感じます。

(一方、強みの活用からオーセンティシティを介したプロアクティブな行動への間接効果も有意であり、こちらは直接効果も有意だったため、「部分媒介」であることが確認されました。
 プロアクティブな行動については、自分らしさを経由するルートと、強みそのものが直接効くルートの、両方が存在しているということになります)


◯わかったこと3:高ストレス環境でこそ意味を持つ仕組み

急性期病院は、24時間シフトや複雑な意思決定を伴う、非常にストレスの多い職場環境です。
そうした環境において、強みの活用とオーセンティシティが、レジリエンスのような心理的資源を高め、従業員のウェルビーイングとプロアクティブさを支える上で重要な役割を果たしている、ということが議論されています。

この結果は、オーセンティシティを「意味のあるキャリアを形成するための重要な指標」とみなす、カレイドスコープ・キャリア・モデルの理論とも一致するものでした。



■実践への示唆

実践的な示唆として、以下のようなことが語られていました。

1.強みベースの研修プログラムの意義:組織が従業員のキャリア満足度や主体性を高めるために、アセスメントツールを活用した強みベースのコーチングや研修プログラムを導入することが有効と考えられる。
2.管理職の部下の強みの発揮の支援が重要:管理職が部下との定期面談や日常的な対話の中で、部下が自身の信念や価値観、特性に沿って仕事ができているかをモニタリングし、強みを専門的に発揮できるようサポートするアプローチへの応用も有効である。
3.採用場面で現実的な仕事のプレビュー(RJP)を提供すること:入社後のミスマッチを減らし、従業員が持続的に自分らしく働ける環境づくりにつなげられる。

実際に私も、上記のような「強みベースの研修」など実践に関わらせていただいていますが、その有用性を感じています。



■まとめと感想

強みの活用がキャリア満足度を高める…このシンプルな事実は、個人的に、大いに希望を感じる結果でした。

思うに、必ずしも自分が外的なキャリア(職種や業界、ポジションなど)において望ましいことを得られないことは、ままあるものです。

しかし、「自分自身が大事にしたいと思っていること=自分の強みを活かせている状態」を保とうとすることは、もっと身近なことであり、工夫によっては誰しもが実現可能であると思います。

…と考えると「強みの活用→自分らしさの実現→キャリア満足」というモデルは、より多くの人にとって、仕事人生をより豊かにする考え方のようにも思えるのです。

強みを活かすという、小さな一歩の積み重ねが、いつか自分らしいキャリアという大きな景色につながっていく。そんな希望を、この論文から受け取った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:109km

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