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令和8年6月15日(第4494号)
上司・同僚・仕事・組織…。働く上で、何との「相性」が最も大事なのか?
ー172研究のメタ分析からの示唆
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3193字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日より、山梨に来ております。
「テスラの自動運転がすごい」ということで、
いかほどのものなのかを、テスラをレンタルして、小旅行することにしてみました。
結果、高速道路はかなり楽です。
ただし、充電スポットが限定的なのは、やや面倒な印象でしょうか。
ちなみに、日本の法律的に現在は「運転支援(自動運転レベル2)」までしか実装することができないとのことですが、
これが「システム手動の運転(自動運転レベル3)」になったら、
移動中にパソコンで仕事とか、もっと楽になるんだろうな…と感じている次第です。
その頃になったら、車がほしいかも…!と思いました。
*
さて、本日のお話です。
先日、「人と仕事のフィット感」が大事である、とお伝えする論文をご紹介しました。
仕事でも人間関係でも、「相性」って本当に大事なものですね。
同じ仕事でも, 同僚や上司とウマが合う…みたいな話、日々仕事をするモチベーションにも関わってくる…そんな経験をされたことがある方も少なくないのではないかと。
さて、そんな中、ふと思えば、「働く」ことには、「対組織」「対上司」「対同僚」など、職場にはじつにさまざまな「フィット(適合)」が存在するものです。
今日は、それらの散らばっていた172件の研究を統合して分析したメタ分析論文についてご紹介したいと思います。
果たして、最も重要な「フィット」はどこにあるのでしょうか…?
それでは、どうぞ!
■今回の論文
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・タイトル:CONSEQUENCES OF INDIVIDUALS' FIT AT WORK: A META-ANALYSIS OF PERSON-JOB, PERSON-ORGANIZATION, PERSON-GROUP, AND PERSON-SUPERVISOR FIT (職場における個人の適合(フィット)がもたらす結果:個人-仕事適合、個人-組織適合、個人-集団適合、および個人-上司適合のメタ分析)
・出版:PERSONNEL PSYCHOLOGY、2005年、58巻、281–342ページ
・著者:Amy L. Kristof-Brown, Ryan D. Zimmerman, Erin C. Johnson
・所属:アイオワ大学 ヘンリー・B・ティピー・ビジネススクール 経営・組織学科
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■30秒でわかるこの論文のポイント
・職場には「仕事・組織・集団(同僚)・上司」という4種類のフィット(適合)があり、それぞれ異なる成果に影響する。
・本研究は、172の研究・836の効果サイズを統合した、この領域における最大規模のメタ分析である。
・分析した結果、フィットは実際の行動よりも、まず「態度(満足度・コミットメント)」に強く作用することがわかった。
・また、タスク(課題)のパフォーマンスとフィットはほぼ無関係。むしろ組織市民行動など、タスク外の貢献と結びついていた。
・「仕事が自分の欲求を満たしてくれるか(ニーズ-供給の適合)」が、態度への影響として最も強かった。
という結果でした。
■なぜ「フィット」に注目するのか
「個人と環境の相互作用(Person-Environment 適合)」という考え方には、じつに約100年の学術的歴史があります。
にもかかわらず、PJ・PO・PG・PSという4種類のフィットを同時に定量的に統合し、職場の成果変数との関係を明らかにした研究は、2005年の本論文以前にはほとんど存在していませんでした。
過去のレビューは質的なものにとどまるか、ひとつのフィット(たとえばPOフィットのみ)に限定されたものでした。本研究は172の研究から836の効果サイズを統合し、4領域を横断する初めての包括的メタ分析として位置づけられています。
■4つのフィットとは何か
本論文では、職場における適合を以下の4つに整理しています。歴史の古い順に並べると、こうなります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⑴ 個人-仕事(PJ)フィット:最も歴史が古く、「仕事の要求と個人の能力の一致(要求-能力適合)」と、「仕事が個人の欲求を満たすか(ニーズ-供給適合)」という2つの側面で捉えられます。
⑵ 個人-組織(PO)フィット:個人と組織全体の価値観がどれだけ一致しているかを表します。「価値観の合致」が中心概念です。
⑶ 個人-上司(PS)フィット:部下と直属の上司との一対一における適合性。価値観・パーソナリティ・目標の合致が評価されます。
⑷ 個人-集団(PG)フィット: 4つのなかで最も歴史が新しく、チームメンバーとの心理的な相性を指します。価値観や目標の合致が焦点となります。
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■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:各フィットは「別々の成果」と結びついている
メタ分析の結果からわかった最も重要な知見は、人は職場環境の各側面(仕事・組織・集団・上司)を、それぞれ別々に識別・評価しているということです。
各フィットと成果との推定真の相関を整理すると、こんな特徴的なパターンが浮かび上がりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・PJフィット(個人と仕事)
ー「職務満足」「組織コミットメント」「離職意図」と強く結びつく
・POフィット(個人と組織)
ー「組織コミットメント」と特に強く相関し、離職意図への影響も大きい
・PGフィット(個人と集団)
ー「同僚満足」「集団の結束性」と強く結びつく
・PSフィット(個人と上司)
ー「上司満足」「リーダー・メンバー交換関係(LMX)」と高く相関する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
つまり、「仕事が好き」「組織が好き」「チームが好き」「上司が好き」は、それぞれ別の経路で、別の満足感を育てるということです。
◯わかったこと2:フィットは「仕事の態度」を変える
もうひとつ印象的だったのが、フィットと実際の行動(パフォーマンス、離職)との関係です。
タスクパフォーマンス(課題の成果)とフィットはほぼ無関係でした。
POフィットでも、タスクパフォーマンスとの相関はρ = .13にとどまります。
一方、組織市民行動(業務上の義務を超えた貢献)とは、明確に相関(ρ = .27)していました。
その理由について、研究者たちはこう解釈しています。
パフォーマンスを下げたり、会社を辞めたりする行動には、現実的な不利益が伴います。
だから行動に移す前に、まず「態度(満足感・帰属意識)」が悪化するのです。
フィットは、態度という「早期警報装置」にまず影響を与えるのでは、とのことでした。
◯わかったこと3:「高い×高い」フィットがベストである
本論文では、多項式回帰を用いた25の研究も別途レビューされています。そこで示されたのが、フィットの「非対称性」という興味深い事実です。
「個人も環境もともに高いレベルで一致している(High-High)」場合、「ともに低いレベルで一致している(Low-Low)」よりも、はるかにポジティブな態度をもたらします。
また、環境が個人の欲求を過剰に供給してしまう場合の悪影響はさほど大きくない一方、供給が不足している場合には、態度が劇的に悪化することも明らかになりました。
"何かが足りない"という状態は、"多すぎる"よりも、ずっと大きなダメージを態度に与えるのです。
■まとめと感想
改めて整理すると、今回の研究の主な発見は以下の通りです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1)人は、仕事・組織・集団・上司というそれぞれの環境を、しっかりと別々に識別しながら評価している。
2)そしてそれぞれのフィット感が、固有の態度や成果を形成している。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうした「個人と環境(組織・上司・同僚・仕事)のフィット感」についての研究がこんなにもあるんだな…!ということに驚きました。
そして、社会的な生きものである私たちは、そうした相性によって、仕事の満足感も変わるし、離職意図にも影響があるもの。
そう考えると、「仕事なんだからやれ」「給料もらってるんだからやれ」という言葉が、いかに人というあり方を無視したものであるかがわかります。
フィットが揃ったとき、人のやる気や貢献は自然に高まります。
それはタスクの成果というよりも、むしろ組織市民行動として現れてきます。
仕事のフィット感も、組織のフィット感も、上司のフィット感も、どれも軽視できず、それぞれが違う満足感を育て、違う貢献行動につながっていることは実に興味深いです。
「合っているかどうか」という感覚は、めちゃくちゃ大事です。
組織設計においても、マネジメントにおいても、もっと真剣に考えられてよいテーマなのかもしれない、そんなことを、この論文を読みながら感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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https://note.com/courage_sapuri/n/n717b6cb7c8c8?app_launch=false
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【編集後記】
◯今月のランニング:102km
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