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令和8年6月4日(第4482号)
50年間の第一人者による研究からわかった「目標設定の真髄」とは何か?
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3380字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は執筆や高校の授業の企画設計など。
また風終わりに10kmのランニングでした。
結構走っている人がいて「みんな好きだなあー」と思いつつ、
自分もその中に紛れつつ夕方ランを楽しんでおりました。
*
さて、本日のお話です。
本日は有名かつ実践的な理論の一つである「目標設定理論」に関する論文をご紹介いたします。
これは半世紀ほど前から言われている歴史的な理論ですが、その第一人者であるロックとレイザムが、この50年間の歩みを回顧したメタレビュー論文を見つけました。
なんと50年以上の研究、400の先行研究、参加者40,000人、88種のタスク、7ヶ国を統合したメタ分析であり、これは必見です…!
目標設定理論を一言で言えば、「ベストを尽くすのではなく、具体的で難易度が高い目標を設定する方がパフォーマンスが確実に向上する」という話です。なんなら年収も上がるという研究結果も示されています。
昨今のOKRなどの目標達成手法の背景にもある理論であり、「よい理論ほど実践的なものはない(by クルト・レヴィン)」の言葉を体現しているような理論。
その第一人者による「目標設定理論の全体像を整理した論文」というのは非常に有用で注目に値するものだなと感じました。
ということで、早速中身を見てまいりましょう!
■今回の論文
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『The Development of Goal Setting Theory: A Half Century Retrospective(目標設定理論の発展:半世紀の回顧)』
Edwin A. Locke / Gary P. Latham
ジャーナル:Motivation Science、2019年
所属:メリーランド大学(University of Maryland)
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■30秒でわかる論文のポイント
・「ベストを尽くす」という曖昧な目標よりも、具体的で難易度の高い目標を設定した方がパフォーマンスが確実に向上します。
・目標は、注意の集中、努力の喚起、粘り強さ、適切な戦略の発見という4つのプロセス(媒介変数)を経て成果に繋がります。
・成果を高めるためには、進捗のフィードバック、目標へのコミットメント(本気の度合い)、本人の能力、周囲のサポートが不可欠です。
・能力を超える複雑なタスクでは、成果目標ではなく「やり方や知識を学ぶこと」を目標(学習目標)にすることが有効です。
■研究の背景と目的
◯背景
1960年代当時の心理学界は、意識を排除して観察可能な行動のみを対象とする「行動主義」が主流でした。
しかし、ロック氏の指導教官であったライアンらは、人間の「意識的な意図(心の動機)」を研究すべきだと主張していました。
また、共同研究者のレイザム氏も、現場の作業チームの分析から、効果的なチームは具体的な生産目標を設定していることを独自に発見していました。
これらが融合し、1974年に共同研究体制が発足しました。
*目標設定理論とは*
人が行動を起こす際の「意識的な目標や意図」がパフォーマンスを決定するというモチベーション理論のこと。
単に「頑張る」のではなく、「具体的で挑戦的なゴール」を示すことで人間の潜在能力が引き出されると考えます。
◯目的
本論文の目的は、両著者がそれぞれ独自に行った発見の経緯、1990年の目標設定理論の確立に至る共同研究の歩み、そしてそれ以降に蓄積された新たな理論的発展と知見を回顧・整理することです。
■研究の方法
・デザイン:膨大な実験や現場でのデータを積み上げる「帰納法」を用いたメタ分析およびレビュー
・データソース:約400の先行研究(参加者約40,000人、88種類のタスク、7ヶ国、実験室および現場でのフィールド調査など)の統合
・手法:職務分析における重要事実手法(CIT)や質問紙調査、ランダム化比較実験(特定の高い目標を割り当てる群と「ベストを尽くす」よう促す群の比較)など
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:具体的で高い目標ほど成果に直結する
「ベストを尽くす」といった曖昧な指示よりも、具体的で難易度の高い目標を設定した方が、パフォーマンスが確実に向上することが実証されました。
十分な能力がある限り、目標の難易度とパフォーマンスにはきれいな直線関係(線形関係)が見られます。
◯わかったこと2:目標が成果に変わる4つのルートがある
目標は、以下の4つの媒介変数を通じてパフォーマンスを高めることがわかりました。
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⑴ 注意・選択:目標があることで、今やるべき重要な活動に意識が集中し、無駄な行動を自然と排除できるようになります。
⑵ 努力:目標の難易度が高ければ高いほど、それを達成しようとして、本人が発揮するエネルギー量や作業スピードが引き上げられます。
⑶ 粘り強さ(持続性):明確な目標を持つことで、途中で困難や障壁にぶつかっても、あきらめずに作業を長く継続する忍耐力が生まれます。
⑷ 適切なタスク戦略の発見・利用:目標を達成するために、これまでの知識を使って効率的な計画を立てたり、新しい画期的な解決策を自ら模索・発見したりするようになります。
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◯わかったこと3:目標達成を左右する4つの条件がある
ただ目標を設定するだけでなく、その効果を最大化して成果に結びつけるためには、以下の4つの条件(調整変数)が揃っている必要があります。
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⑴ 進捗を把握するためのフィードバック:自分が今どれくらい目標に近づいているかのデータ(フィードバック)がないと、努力の量や進むべき方向を途中で修正することができません。
⑵ 目標へのコミットメント:本人がその目標を「どうしても達成したい」と心から受け入れ、強くコミットしていなければ、目標は行動に影響を与えません。
⑶ 本人の能力(知識やスキル):いくら高い目標を掲げてモチベーションが上がっても、それを実行するための基礎的な知識や技術が本人に備わっていなければ達成は不可能です。
⑷ 周囲のサポートなどの状況要因:目標に向かって行動する際に、必要な資金・機材・人員が用意されているかなど、環境や周囲からの物理的・組織的なバックアップが成否を分けます。
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◯わかったこと4:目標の決め方自体で成果は変わらない
目標の難易度と言い渡される論理的根拠(ロジック)が同じであれば、上司が「割り当てる」場合も、部下が「参加して決める」場合も、パフォーマンスの成果自体に本質的な違いはありませんでした。
ただし、参加型の方がより高い目標を設定する傾向があり、結果として高成果につながることがあります。
■まとめと感想
改めてこの内容を見ると、大変納得感があるなと思いました。
私自身、かつて求人広告の代理店で営業をしていた頃、3ヶ月ごとに非常に高い目標が出てきたのを今でも覚えています。
「これ無理だよ…」と思いながらも、「できない」は許されるはずもなく(苦笑)、なんとか達成しようともがきようをえませんでした。
まさに、目標設定理論の「具体的かつ困難な目標」です。
ですが、そう遮二無二頑張っていると、当初は絶対無理だと思っていた目標に到達できたりするのです。
しかも、自分だけでなく、多くの人が達成できる。そんな現象を幾度も目の当たりにしてきました。
プレッシャーは激しかったですが、高い目標に挑む方が、間違いなくパフォーマンスが上がるのだな…そのように体で経験させてもらいました。
さらに仕事以外でも、フルマラソンやウルトラマラソンに挑戦する際、
「サブ3(3時間切り)」や「サブテン(10時間切り)」といった、上位3%〜5%に入る明確な目標を掲げた方が、やはり努力を惜しまないしパフォーマンスが上がることを身をもって感じています。
また、目標設定理論に影響を与えるもの(媒介するもの、調整するもの)の存在も、明文化されているのも納得感があります。
目標を達成するには一人ではなく仲間(=リソース)がいた方がいいということや、
自分の能力を高めるための師匠やコーチを見つけること(=適切な戦略を練る)の重要性も自分の体験ともピタリと重なり、改めて頭の中がスッキリと整理されました。
これまでに書いてきた目標設定に関する記事がさらに一つに統合されたような、気持ちのいい内容でした。
改めて、「ベストを尽くす」じゃなく、「具体的かつ困難な目標を掲げる」ことを自分に課して、より高みを目指す旅路を楽しみたい、そんな気持ちを新たにした次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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https://gemini.google.com/u/0/gem/7442dea69edd/7924a784f3865958
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【編集後記】
◯今月のランニング:16km
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