配信日時 2026/05/29 09:28

強みを「15個」にしぼって測定する方法 ー武漢大学の研究よりー【カレッジサプリ】

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令和8年5月29日(第4476号)


強みを「15個」にしぼって測定する方法
ー武漢大学の研究よりー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 1954字/読了時間2分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、朝に11kmのランニング。

また、「信頼」をテーマにしたワークショップで、
200名の方に参加をしていただきました。
皆様が大変前向きで、私自身とても楽しい時間でした。

また、学会発表の申込み、その他夜は人材開発仲間とのお食事会でした。



さて、本日のお話です。

本日は2017年に中国・武漢大学から発表された、性格の強みに関する論文をご紹介します。

アメリカ発のポジティブ心理学の知見が、どのように中国という文脈で再解釈・再検証されていくのか。
そうした、他国における「研究発展の流れ」を遡るような感覚を覚えた一本。

少しマニアックな内容ではありますが、「強みを測定する」という尺度開発について、勉強になる論文でした。
ということで、中身を見てまいりたいと思います。それでは、どうぞ!



■今回の論文
・タイトル:Development and initial validation of a short three-dimensional inventory of character strengths (性格の強みに関する簡略3次元インベントリーの開発と初期検証)
・出版:Quality of Life Research, 2017年
・著者:Wenjie Duan, He Bu
・所属:武漢大学社会学部(中国湖北省武漢市)



■30秒でわかる論文のポイント

・「思いやり」「探究心」「自制心」という3因子15項目からなる、短縮版の性格強み尺度(TICS)を開発した

・中国と欧米、医療現場と一般地域、複数の文化・集団をまたいで構造的に安定していることが確認された

・短いながらも、メンタルヘルス(抑うつ・不安)との有意な負の関連が示された

・既存の長すぎる尺度(96〜240項目)の課題を、わずか15項目で乗り越えようとした意欲的な試み



■なぜ「短い尺度」が必要だったのか

性格の強みを測る代表的な尺度として、「VIA-IS」や「中国版美徳質問紙(CVQ)」が広く使われてきました。

ただ、これらには共通の課題がありました。質問数が多すぎる、という問題です。
96項目から240項目という分量は、医療現場の患者や、大規模な社会調査の対象者にとって、回答するだけでひと仕事になってしまいます。

さらに、文化が変わると因子構造が変わってしまったり、項目間で概念が重複していたりと、尺度としての安定性にも課題が指摘されていました。

そこで研究者であるDuanらは、

”先行研究が示してきた「普遍的な3因子」——思いやり・探究心・自制心——をベースにして、もっとシンプルで、どの文化でも使える尺度をつくれないか”

と考えました。

その問いが、この研究の背景であり、出発点です。



■2つの研究で検証された「強みの尺度15項目」

研究は2段階に分けて進められました。

研究1では、中国の大学生518名と欧米の大学生556名を対象に尺度を開発・検証。
CVQの96項目を初期プールとして、探索的因子分析(EFA)で項目を厳選し、欧米サンプルで確認的因子分析(CFA)によって構造を確かめました。

研究2では、中国の地域住民175名と一般外科の入院患者171名を対象に、異なる集団間でも尺度が同じ構造を保っているかどうか(測定不変性)を検証。
さらに4週間後に抑うつ・不安の指標(DASS)を測定し、強みがメンタルヘルスを予測できるかどうかも確かめています。

こうした厳密な手順を経て生まれたのが、3因子15項目からなるTICS(3次元性格強みインベントリ)です。



■TICSの15項目—「強み」をどう言語化するか

各因子5項目ずつ、計15項目で構成されています。その内訳をご紹介します。こちらの発見が、今回の研究の一番のポイントです。


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◯探究心(Inquisitiveness)

・好奇心:「どんな状況でも興味を引くものを見つけられる」
・ユーモア:「どんな暗い状況でもユーモアのセンスを奪われない」
・創造性:「私はいつも物事の新しいやり方を思いつく」
・社会的知性:「私は、他の人に物事への興味を持ってもらう能力がある」
・熱意:「私は元気いっぱいだ」

◯思いやり(Caring)

・公平性:「私は、誰もが発言権を持つべきだと考えています」
・リーダーシップ:「グループのリーダーとして、各メンバーには意見を述べる権利がある」
・チームワーク:「グループの決定を尊重することは私にとって重要です」
・誠実さ:「他人は、私が彼らの秘密を守ってくれると信頼している」
・親切心:「他人に親切にするのが好きだ」

◯自制心(Self-Control)

・自制心:「私は非常に規律正しい人間です」
・思慮深さ:「私は話す前にいつも考える」
・判断力:「物事をじっくり考えることは、私の特徴の一つです」
・忍耐力:「私は諦めない」
・向学心:「私は真の生涯学習者です」
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■まとめと感想

今回の論文、一言で言えば「尺度作成のプロセス」を感じる一本でした。

短縮版尺度の開発という地味に見えるテーマを、複数文化・複数集団・縦断的なメンタルヘルス測定という重層的なデザインで検証していく。
その手続きの丁寧さに、「こうした流れが必要なのだな…」と大変勉強になりました。

私自身も「強みCore36」という形で、オリジナルの強み項目を作っていますが、こうした論文を読むたびに感じるのは、それを「研究」として世に問うためには、より厳密な手法と、誰から見ても堅牢な論理必要だろうということです。

1つの尺度を作るということは、先人の知恵を借りながら、新しい問いを立てていくという、知的で厳密な営みだと感じた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:207km

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