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令和8年5月26日(第4473号)
「性格の強み」の研究の地図を描く(前編) ー強みの実践者の7つの要素とは?
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 1677字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は早朝から8kmのランニング。
また千葉にて1泊2日の合宿でした。
*
さて、本日のお話です。
今日は「強み」に関する論文のご紹介です。
本日取り上げるのは、VIA(Values in Action)の性格の強みの研究において第一人者とも呼べるライアン・ニーミエク博士が、2021年に発表した論文です。
2020年時点で700本(今では1,000本以上!)を超えているという性格の強みの研究領域に関して、
「そもそも性格の強みとは何か、何であって何でないのか、どういった領域を今後探求すべきなのか」という問いを、あらためて言語化し整理しようとした論文です。
「研究領域そのものの地図を描く」というような、この領域を更に拡げていくための第一人者による宣言文のような趣を持つ一本で、「こういう論文もあるんだ…!」と感銘を受けました。
内容が深いため、前半の今回は「性格の強みに基づくアプローチの7つの要素」を中心にご紹介します。
それでは、どうぞ!
■今回の論文
・タイトル:The Practice of Character Strengths: Unifying Definitions and Principles and Exploring What Is Soaring, Emerging, and Ripe with Potential in Science and in Practice (性格の強みの実践:定義と原則の統合、および科学と実践の現場において「飛躍しているもの」「出現しつつあるもの」「可能性に満ちているもの」の探求)
・出版:Frontiers in Psychology, 2021年1月(第11巻)
・著者:Ryan M. Niemiec、Ruth Pearce
・所属:VIA Institute on Character(オハイオ州シンシナティ)
■30秒でわかる本論文のポイント
・「強みベース」という言葉は広く使われているが、その定義は非常に曖昧。この論文はその曖昧さを言語化し、整理することを目的としている
・「性格の強みに基づくアプローチの実践者が備えるべき7つの要素」を提示している(←本日はここまで)
・「性格の強みを深めるための6つの原則」を提示している
・研究領域を「飛躍中(soaring)」「新興(emerging)」「潜在能力に満ちた(ripe with potential)」の3カテゴリーに分類し、今後の探求の地図を描いている
■そもそも「強みベース」ってなんだ?
まず、本論文の始まりは「強みベースってめっちゃ曖昧だよね」という問いから始まります。
たとえば、カウンセラーやコーチ、教育者などの実践者に「あなたは強みベースの実践をしていますか?」と尋ねると、多くの人が「はい」と答える。
しかし「では、強みベースとはどういう意味ですか?」と聞くと、答えは人の数だけあるようです。
VIAとストレングス・ファインダーも似ているけれど、違う。
また、強みと言っても「才能(運動ができる、数学的能力が高い)」もあれば、「興味(没頭できる対象がある)」というものもある。
どれを扱っても「強みベースの実践者」となるわけです。
「強みベース」という言葉は使われすぎて意味を失いつつある。だからこそ「(VIAの)性格の強みに基づく実践者」が備えるべき7つの共通要素を提示することで、その輪郭を取り戻そうではないか。
私の言葉で解釈しておりますが、そのようなメッセージが、この論文には含まれていると感じました。
■「性格の強みに基づくアプローチ」とは何か
では、この問いについて、この論文における定義をそのままの形でお伝えしたいと思います。
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「性格の強みに基づくアプローチ(または実践)とは、エンパワーメントをもたらし、活力を与え、つながりを生み出すものであり、
実践者は、それぞれ独自の個人的な方法と、支援に対する独自の方向性・アプローチをもって、クライアントに強みについて教育し、ウェルビーイングを高め、
逆境に対謝するためにクライアントが自身の性格の強みを育むことを支援する中で、自らの性格の強みを体現し、発揮するものである。」
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やや長い定義ですが、重要な点が詰まっています。
実践者がただ「強みについて話す」のではなく、「自らの強みを体現しながら関わる存在である」ということ。そして、その関わりがクライアントにエンパワーメントをもたらし、活力やつながりを生み出すものであること。
(ポジティブ心理学で大事にしたいことを言葉にしている感じがします)
■7つの要素——実践者が備えるべき姿勢
この定義を支えるのが、7つの具体的な要素です。ひとつずつ見ていきましょう。
⑴ 性格の強みを体現する
実践者自身が、日々の交流や実践の中で性格の強みを意識し、活用するロールモデルであること。
⑵ 強みに関する教育を行う
強みについて教え、「強みとは楽観主義や幸福の話に過ぎない」「弱点を無視することだ」といった誤解を丁寧に正すこと。
⑶ 活力を与える
自動操縦のような惰性や固定化した思考パターン、そして「強みの盲点(自分の強みに気づけていない状態)」から、その人を引き出し、生気を取り戻させること。
⑷ エンパワーメント
「何が間違っているか」から「何が強みか」へと、意識の向きを変える支援をすること。問題を強みで乗り越えられるように、ともに考えること。
⑸ 逆境に立ち向かう
問題や困難をきちんと認め、必要であれば探求しながらも、そこに飲み込まれてしまわないこと。ポジティブな側面を守り続けること。
⑹ つながりを生む
性格の強みに基づくアプローチは、人が他者や世界、そして自分自身とより深くつながる助けになる。その力は、実践者とクライアントの二者関係そのものにも自然と広がっていく。
⑺ 種を育てる
単に問題(雑草)を取り除くだけでなく、種を育てる方向性を持つこと。規範的なアプローチではなく、記述的な表現を大切にしながら、クライアントが気づき、探求し、前向きに育っていけるよう支援すること。
■まとめと感想
この論文を読んで、一番感じたのは「研究領域を言葉にすることの意義」でした。
「強み」というのは、非常に定義が曖昧になりやすい概念です。
そして「強みに基づくアプローチをしている」という実践も、何をもってそう言えるのかが、人によってまちまちになりやすい。
そこにVIAという道を築いてきた第一人者が「実践者とは誰か」「クライアントとは誰か」「どういったアプローチをする人が実践者と呼べるのか」「核心その実践者はどんな姿勢を重要視すべきか」——そうしたことを言葉で明確にすることで、初めてそこに質量が生まれ、そしてその領域における指針のようなものが形成される。そうして、研究領域としてさらに認められ、発展していくことができる。
この論文はそういう「先駆者・開拓者としての役割」を担っているように、私には感じられました。
きっと新しい領域を切り開くということは、まず柱を一本打ち立て、そこに実践例を積み上げ、人が増えてきたら交通整理をしていく。そうした地道な積み重ねの中にあるものなのかもしれません。
日本では、そういう意味で「強みの研究領域」というものは、まだ打ち立てられていないように見られます。なぜそれらができないのか、研究者がいないのか、私が知らないだけなのか、あるいは別の理由があるのかはわかりませんが、私もそうした領域を明らかにする一助を担いたいという気持ちが大きくなっている今日この頃です。
ということで、次回、後半に続きます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:185km
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