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令和8年5月24日(第4471号)
今週の一冊『調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 1882字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日土曜日は、近所のパパ友・ママ友の皆さまとバーベキュー。
午後から、大学のリーダーシップの授業でした。
学生たちが2か月ほどかけてつくった「ポスターセッション」という中間発表のような場。
皆が、急激にクオリティを高めてきて、また社会人の前で一生懸命発表をしている姿を見て、
嬉いような、誇らしいような、気持ちになりました。
教員として関わらせて頂き、改めて立教大学のリーダーシッププログラムの素晴らしさを感じています。
また夜は運営陣との懇親会でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、おすすめの一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。
今週の一冊はこちらの本です。
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『調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』
斉須政雄(著)
https://amzn.asia/d/0e2656gA
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この本は、東京・三田のフランス料理の名店「コート・ドール」で調理長を務めた斉須政雄さんによる自伝です。
タイトルの通り、「調理場」という想像を超える戦場の中で、斉須さんが日本からフランスへ渡り、十数年にわたる修業と格闘を通じて見出した、仕事論・人生論が語られている本です。
それでは、早速感想をお伝えしたいと思います。
■本書の概要
本書は、斉須さんの自伝的な形式で描かれています。
フランスへ渡る前の話から始まり、最初の店、次の店へと渡り歩く中で、どのような経験をし、どんな人と出会い、どんな修羅場をくぐってきたのかが、非常にリアルに描かれます。
当時のやり取りや、厨房の空気感までも伝わってくるような描写が多く、その内容は非常に生々しく、同時に凄まじさを感じさせます。
そもそも、キッチンというのはランチからディナーまで営業時間はずっと稼働しています。
それだけでなく、買い出し・仕込み・清掃と、実際は朝から夜中まで、休む間もなく動いていくという業界です。
おそらく、一度でも関わったことがある人であれば、その特有のハードワークぶりを理解されているのではないかと。
それを、フランスという異国の地で、言葉もわからず、人のつながりもなく、そして超体育会系とも呼べる、無視・差別などを受けながら、志一つを頼りに戦い切ったことは、圧倒的な強さ、とも呼べる迫力を感じます。
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<本書の解説>
大志を抱き、二十三歳で単身フランスに渡った著者が、夢に体当たりして摑み取ったものとは?
「早くゴールしないほうがいい」「効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまう」。
激流のように過ぎゆく日々をくぐり抜けたからこそ出てくる、熱い言葉の数々。
料理人にとどまらず、働く全ての人に勇気を与えたロングセラー
※Amazon本の紹介より
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■個人的に印象的だった話
◯強くなければ、いけない
例えば、フランスという異国の地で、日本人として働く中で、「舐められたら終わり」という感覚があったことが、しばしば書かれています。
だからこそ、自分が正しいと思った時は徹底的に主張する。
サービスマンから理不尽なクレームを持ってこられた時には、「こちらだって真剣にやっているんだ」「もう今日で辞める」と、アスパラガスを投げつけたこともあったそうです。そして相手に謝らせた。
もちろん、現代的な価値観から見れば激しい世界です。
しかし、その背景には、「自分の立場を、自分で守らなければならない」という信念と覚悟があったように感じました。
ただ流されているだけでは、便利に使われ、使いっぱしりで終わってしまう。
だからこそ、「この店で何を学べるのか」「自分は何を目指すのか」「いつでも終わらせる」という心根を常に問い続ける。
そして、意味がないと思えば、いつでも飛び出せる準備をしておく。そこには、圧倒的な自律と、自分自身の志を磨き続ける姿勢が見えました。
まるで、十数年にわたって、ほとんど休むこともなく、己の中の「熱い刀」をハンマーで何度も打ち続けるようなイメージ。
その行為を「鍛錬」と呼ぶように、仕事人として、自らを鍛え続けた人だけが語る迫力があります。
◯「いい人」なだけの人は信用しない
「口当たりのいいことばかり言う人は、虫唾が走る」。
そんなことも書籍には書かれています。それは「いい子は、時に偽善的でもある」から。
いい人は、弱い。
本当に真剣に向き合う人は、必要な時には厳しいことも言える。
いいことも、悪いこともできる。そんな趣旨のことが書かれていました。
また、斉須さんは「生き様」を非常に大事にされている様子が、隅々から伝わいます。
ずるいことをしない。
細かいことを丁寧にやる。
困っている人がいたら手を差し伸べる。
逆に、明らかに誰かが困っているのに見て見ぬふりをするような態度には、徹底的に怒る。それによって相手が傷ついたとしても、本気で伝える。
なぜなら、多くの人は「見て見ぬふり」をして通り過ぎることもできるからです。それでも真正面から言うということに、今の時代に「ハラスメント」として触れられなくなったかもしれない、あるいはその言葉から目をそむけてきたような、ある種の愛情と責任感を、私は感じました。
◯才能のサポーターは「時間と生き方」である
そして、最後に非常に印象に残ったのが、以下の言葉です。
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才能というもののいちばんのサポーターは、時間と生き方だと思う。
才能だけではだめだと思うのは、「時間や生き方なしでは、やりたいことの最後までたどりつかない」とぼくが感じているからなのです。
仕事に合った生き方を持続できるかできないかが、才能の開花を決めるように思います。
P173
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どれだけ才能があっても、育つ前に辞めてしまえば、それは咲かずに終わってしまう。
料理の世界にも、才能に溢れた人がたくさん入ってくる。しかし、その多くが途中で消えていく。
それが悪いというわけではない。
ただ、才能を本当に花開かせるためには、
・自分で自分の才能の芽を守ること(生き方がバリアになる)
・長い時間をかけて、継続すること
が必要なのだと語られていました。
そして、そのためには「戦場に残り続けること」が必要だ、と。戦い続けられる環境に身を置き続ける。
その場所に居続ける。だからこそ、ようやく花が咲く。
そんなメッセージが、とても深く心に残りました。
■まとめと感想
余談ですが、私も、新入社員で飲食のキッチンで働いていた経験があります。
この書籍の後に並べる経験としては、失礼に当たる気もしますが、飲食の新業態の立ち上げに関わった経験でした。
当時、三軒茶屋のイタリアンで、マニュアルが完全に整備されきっていないこともあり、本当に朝10時前から、明け方5時くらいまで働くことも、しばしばありました。
ほぼ白目を向きながら働いていた(気絶していた?)ことが、未だに、心身の記憶に刻まれています。
だからこそ、その道で戦い続ける人の凄さを、想像して震えます。
自分が戦う分野を一つ決めた時に、10年、20年という単位で、一つのことを磨き続けることができるか。
斉須さんは、本当に仕事だけに集中し続け、その姿勢を貫き通したからこそ、「本物」になったのだと思います。
もちろん、今は「バランスよく生きる」という価値観もあります。それはとても大切なことだと思います。
しかし、もし本当に何かを極めたいのであれば、ある時期には、これほどまでに深く没頭する覚悟も必要なのかもしれない。
そんなことを考えさせられる一冊でした。
定期的に読み返したくなる、背筋を伸ばされるメッセージでした。
真剣に働いていきたいあらゆる人に、おすすめの一冊です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:177km
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