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令和8年5月21日(第4469号)
たった5分の散歩が、自尊心を高めてくれる ーエセックス大学のメタ研究ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2654字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。
その他、執筆、また夜は高校の授業の打ち合わせなどでした。
*
さて、本日のお話です。
個人的な話ですが、少し前からベランダでイチゴを育て始めました。
ベランダに出るたびに、子どもが成長するのを見守るような、ほのほのとした気持ちになります。
「自然」は最高です。
以前からずっと続けているランニング。
走ること、体を動かすことは、心身のバランスを整えてくれる、私にとってかけがえない時間です。
「運動」って最高です。
「自然」と「運動」。
この二つは、心をヘルシーにしてくれる活動です。
日々の暮らしの中で、このことをますます確信するようになっています。
そんな折、その感覚をまさに科学的に裏付けてくれるような論文に出会いました。
「グリーンエクササイズ(自然環境の中での身体活動)が、自尊心や気分にどう影響するか」を10の研究から統合したメタ分析です。
その結果が、興味深く、一人興奮してしまいました。
今日は、その内容を皆さんにお伝えできればと思います。
それでは、どうぞ!
■今回の論文
・タイトル:What is the Best Dose of Nature and Green Exercise for Improving Mental Health? A Multi-Study Analysis (メンタルヘルス向上のための自然とグリーンエクササイズの最適な「用量」とは何か?マルチスタディ分析)
・出版:Environmental Science & Technology, 2010年
・著者:Jo Barton, Jules Pretty
・所属:エセックス大学 異分野融合環境社会センター/生物科学部(英国)
■30秒でわかる論文のポイント
・たった5分の自然の中での活動でも、気分と自尊心が大きく向上する
・強度は「軽め」が一番効果的。中途半端にやるより、ちょっとだけの方がいい
・水辺(川沿いや湖畔など)での活動が、すべての環境の中で最も高い効果をもたらす
・精神疾患を抱えている人ほど、自尊心の向上効果が顕著に大きい
・グリーンエクササイズは「副作用のない、誰でも使える手軽な療法」として位置づけられる
■そもそも「グリーンエクササイズ」とは?
「グリーンエクササイズ」という言葉、初めて聞く方もいるかもしれません。
これはシンプルに言えば、「自然環境の中での身体活動」のことです。
公園を散歩する、川沿いをジョギングする、森の中をハイキングするーーそういった、屋外の緑豊かな場所で体を動かすことを指します。
現代社会では、座りっぱなしのデスクワークや、屋内中心の生活が当たり前になってきました。自然と触れ合う機会は、気づかないうちにどんどん減っている。
この研究が行われた背景には、そんな問題意識がありました。
■研究の概要——10の研究を統合して見えてきたこと
本研究は、英国エセックス大学が6年間にわたって実施してきた10の研究データを統合したメタ分析です。参加者の合計は1,252名。
全員が同じ測定ツールを使っていたため、データをひとつにまとめて分析することができています。測定したのは主に以下の2つです。
・自尊心(ローゼンバーグ尺度)
・気分(POMS:気分状態プロファイル)
どちらも、活動の直前・直後に計測することで、グリーンエクササイズの「その場への即時効果」を捉えています。
■結果(わかったこと)
では、これらの分析結果でどのようなことがわかったのか。以下ポイントをまとめます。
◯結果⑴:たった5分で、最大の効果が出る
分析の結果、グリーンエクササイズ全体で自尊心・気分ともに有意な改善が認められました。注目すべきは、活動時間の長さと効果の関係です。
直感的には「長くやるほど効果が出る」と思いたくなりますが、実際は違いました。最も効果が大きかったのは、一番短い「5分間の活動」でした。
その後、10分〜半日と時間が延びるにつれて効果はやや落ち着き、終日活動になると再び上昇するというU字型のカーブを描いていました。
つまり、ほんの少しでも外に出て、自然に触れること。
それだけで、心に即時的なポジティブな変化が起きるといえます。
◯結果⑵:「中途半端」が一番もったいない
次に興味深かったのが、「運動強度」と効果の関係です。
「自尊心」の改善が最も大きかったのは「軽度の活動」。こちらは強度が上がるにつれて効果は下がっていきます。
「気分」についても同様で、軽い活動で最大の効果が出て、中等度になると一度下がり、(そしてここは自尊心とは違って)激しい運動になると再び上昇する、というパターンでした。
これ、なかなか示唆に富んでいると感じます。
つまり、「がっつりやる」か「ちょっとだけやる」か。どちらかに振り切った方が、実は心への効果は高い、ということ。
中途半端な強度でこなすことが、自尊心や気分にとって最も恩恵が少ないというのは興味深いところです。
◯結果⑶:「水辺」での活動が最も効果が高い
環境の種類による違いも明らかになりました。
都市の緑地、田園地帯、森林、荒野、どの自然環境でも改善は見られましたが、中でも「水辺(waterside)」の環境が自尊心・気分の両方で最も高い効果をもたらしていました。
◯結果⑷:しんどい人ほど、効果が大きい
参加者の初期の健康状態別に見ると、精神疾患を抱えている方の自尊心の向上が特に顕著でした。(健康な方での効果量が0.41だったのに対し、精神疾患のある方では0.68でした)
これは、グリーンエクササイズが、特にケアを必要としている方への「処方箋」として機能し得ることを示しています。副作用もなく、費用もかからず、特別な道具も不要。自然の中を少し歩くだけで、それだけの変化が生まれる可能性があるといえます。
■まとめと感想
個人的に、M的な気質があるのか「運動は厳しくなくちゃダメだ」と思いがちなのですが、研究が示した結果は、「たった5分でよい」というのが驚きであり、また希望も感じました。
疲れたら、少し休憩して、公園を歩いてみる。自然に触れてみる。
ハードルはずっと低くていいのです。
そして「中途半端がもったいない」という発見も、個人的には面白かったです。
軽く、気軽にやる。あるいはがっつりやる。「気軽さの価値」を、データが認めてくれたような気がして、万人に届けられそうな気がしました。
私の日々のランニングコースは川沿い(水辺)が多いです。
まさに「自然」✕「運動」によって、自尊心や気分の高まりを実感しているものとして、ぜひ多くの方に知って頂きたい論文だな、と思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:171km
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