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令和8年5月7日(第4455号)
小学校の先生300名に「あなたの強みは何ですか?」と聞いてわかったこと ―論文レビュー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3145字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
GWの最終日でしたが、仕事でやっておきたいことがあったため、お昼すぎまで仕事。
有楽町にスタートアップのための「Tokyo Innovation Base」というシェアスペースに行ってみたのですが、とても贅沢な場で、人とつながることもできる空間で非常に気分があがりました。
また午後は、子どもと公園で遊んだり、シーズンオフ出やすくなった「いちご」を大量買いして、
スポンジ&生クリームを作って、子どもと「イチゴだらけのケーキづくり」をするなどでした。
結局一番食べたのが自分で、10日後のウルトラマラソン100kmが大丈夫かな⋯とちょっと心配です。
*
さて、本日のお話です。
本日は「強み」に関する論文の紹介です。
テーマは『小学校教員の強みとワーク・エンゲイジメント』というタイトルのもの。
小学校の先生は、労働時間も長く、病気等でのお休みも過去最多。その中で、働く上での重要な尺度であるワーク・エンゲイジメント(WE)を、強みという観点から掘り下げてみた論文です。
「小学校の先生が、どういった強みを活用しているのか?」
「どんな強みを活用している先生が、WEが高いのか?」
こうした疑問に対して、300名の先生に聞いてみてわかったことをまとめた論文です。
VIAなどを用いない視点から分析しており、興味深く感じました。
ということで、早速中身をみてまいりましょう!
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<今回の論文>
・タイトル: 小学校教員の強みとワーク・エンゲイジメントの関連――想定される強みの種類と強み活用感に着目して――
・掲載誌と出版年: キャリアデザイン研究 Vol.18(2022年)
・著者: 松田侑子
・所属機関: 弘前大学 准教授
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■30秒でわかる本論文のポイント
・日本の小学校教員はメンタルヘルス上のリスクが高く、従来の研究はバーンアウト予防など「弱さをなくす」視点が中心だった。
・本研究は「強みを活かす」ポジティブ心理学の視点から、教員の仕事への活力・熱意(ワーク・エンゲイジメント)を高める要因を探った。
・小学校教員300名への調査の結果、教員が自覚する強みは「技術・知性」「対人関係」が特に多かった。
・「強みが何か挙げられること(強みの理解度)」、そして「主観的に活用できている感覚があること(強みの活用度)」が、ワーク・エンゲイジメントの高さと結びついていた
・特に「前向きさ(楽観性・明るさ)」を強みとして持つ教員は、活力・熱意が高い傾向があり、強みの種類も重要であることが示された。
■研究の背景と目的
・日本の教員は週あたり労働時間がOECD加盟国中最長であり、精神疾患による病気休職者数は令和元年度に5,478人と過去最多水準で推移している。
・従来の教員メンタルヘルス研究はバーンアウト・ストレスの予防に焦点を当てた「治療モデル」に基づくものが主流であり、ポジティブな側面に着目した「成長モデル」による研究は限られていた。
・2000年代以降、労働者のポジティブなメンタルヘルス指標としてWEが注目されており、強みの活用がWEを高める介入として有効であることが先行研究で示されている。
・一方、強みは意識・活用されにくく、また想定される強みの種類によって活用感が異なる可能性がある。
・日本の教員研究では校種を区別した研究の必要性が指摘されており、小学校教員に特化した研究は相対的に少ない。
■研究の目的
1.小学校教員が強みの活用において想定する強みの種類を明らかにすること
2.強みの種類による強み活用感の違いを明らかにすること
3.強み活用感と強みの種類がWEにどのような差異をもたらすかを明らかにすること
■研究の方法
◯調査手続き・対象者:
・全国規模のWeb調査会社を通じて実施。小学校教員を300名(男性191名・女性109名、平均年齢48.65±8.84歳)のデータを使用した。
◯使用尺度:
・日本語版強み活用感尺度(SUS;高橋・森本,2015): 14項目1因子構造、5件法。回答前に自身の強みを自由記述させた。
・日本語版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度短縮版(UWES-J;Shimazu et al., 2008): 活力・熱意・没頭の3下位尺度、計9項目、7件法(0〜7)。
◯分析方法:
・自由記述の質的分類(18カテゴリー→6大カテゴリー)
・χ²検定(強みの種類の出現頻度)
・一要因分散分析(強みの種類×強み活用感)
・二要因分散分析(強みの種類×強み活用感の高低群×WE下位尺度)
■主な結果(わかったこと)
(1) 小学校の先生はどんな強みを思い浮かべるのか
300名の自由記述を分析した結果、教員が「自分の強み」として挙げたのは大きく4種類でした。
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<教員が思い浮かべる「強み」とは?>
◯技術・知性:経験の積み重ねで培われたスキルや知識、論理的思考など
・技術(44名)… ICT・情報機器の活用、文章を書くことなど。
・発想力(12名)… イマジネーション、アイディアが豊富など
・冷静さ(13名)… 冷静、論理的に物事を考えるなど
・知識(11名)… 専門知識、物知りなど
・計画性(7名)… 計画的に物事を行う、見通しを持つなど
◯対人関係: 他者との良好な関係を構築・維持するための性質
・優しさ(26名)… 優しい、包容力など
・社交性(22名)… ユーモアがある、親しみやすいなど
・協調性(13名)… 協調性、周りに合わせられるなど
・対子ども(11名)… 多くの子どものまとめ方、やる気を引き出すなど
・配慮(8名)… 気配り、調整力など
・誠実さ(5名)… 誠実、正直など
◯芯の強さ: 最後までやり遂げようとする粘り強い性質
・我慢強さ(44名)… 根気強い、忍耐力など
・真面目(14名)… 真面目、責任感など
◯前向きさ: 困難な状況でもポジティブな態度を維持する性質
・明るさ(16名)… 明るい、明朗快活など
・楽観性(12名)… 楽観的、くよくよしないなど
・柔軟性(10名)… 順応性がある、気持ちの切り替えができるなど
◯ その他:
・なし(19名)… 強みを具体的に挙げられなかった
・分類不能(13名)… 記述内容が具体性を欠き分類が困難だったもの
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「技術・知性」と「対人関係」が特に多く、教員らしい強みが自然と挙げられる傾向がありました。
(特に「技術」が高く上ってきたのは、近年のICT教育の傾向もあるのでは、と考察されています)
*
(2)強みの「種類」によって、活用できている実感は違う
強みを何か具体的に挙げられた人ほど、活用できている感覚が高い傾向がありました。種類別に見ると以下のような特徴がありました。
・活用感が高い → 技術・知性 、芯の強さ
・活用感が低い→ 前向きさ・対人関係
注目点として、「芯の強さ(忍耐・真面目)」は教員に多い資質ですが、「当たり前のこと」として内在化されているため、強みとして意識・活用しにくい可能性が示されました。
*
(3)強みの種類と活用感は、仕事への熱量にどう影響するか
ワーク・エンゲイジメント(WE)は「活力」「熱意」「没頭」の3つで測られます。特に発見として重要なことは、以下の2点です。
⑴ 強みの種類にかかわらず「活用できている」という実感そのものがWEを高めること、
⑵ 特に「前向きさ(楽観性・明るさ)」を強みとする教員は活力・熱意が際立って高かったこと
■まとめと感想
VIAなどの強み診断ツールを使わないアプローチを、個人的にも試してみましたが、こんな風に自由記述で分類して、まとめていくのだな⋯と非常に参考になりました。
実際に、日本人の様々な職種・年齢において、数千~数万人規模で「あなたの強みは何ですか?」という大規模の調査をできたのであれば、ものすごく面白いデータになりそうだな⋯などとふと頭をよぎりました。
また、余談ですが、これから大学院の仲間で「それぞれ専門的に自分の探求領域を掘り下げてみよう、何なら学会での発表も目指してみよう!」という会合を、定期的に行うことになりました。
これまで論文を読んで、まとめるだけだったものを「学会誌に掲載されるには?」という観点でみると、また違った深み・難しさを感じます。そもそもの研究テーマの選び方もそうですし、幅広い研究をされている研究者の方にも、改めて敬意を覚えます。
私の好きな探求領域である「強み」も、教育、心理、経営など複数の領域に跨っているため、どういう観点があるのかを、再度整理してみたい、そんなことを思っている次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:25km
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