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令和8年5月5日(第4453号)
「批判的思考力」を高めるために、有効なアプローチとは?
ー2万人へのメタ研究でわかったことー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2991字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、伊豆の修禅寺に行ってまいりました。
空海が807年に開基したとされる歴史的な舞台ですが、
ふと思えば、最澄と空海という名前は知っていても、
曹洞宗、真言宗、密教、浄土真宗などのそれぞれの違いを全然よくわかっていなかったな⋯と気付かされます。
子どもに「お寺ってなに?」と素朴に聞かれたときに、
「たしかに、一言でいうと何なのだろう・・・?」と考え込んでしまう自分がいました。
ということで、このあたりもどこかでゆるりとアンテナを張っておきたいな、とも思った次第です。
*
さて、本日のお話です。今日は、ある論文のご紹介です。
強みの概念の中にも「批判的思考力」というものがあります。
批判的思考力(クリティカルシンキング)は、ビジネススクールなどでも科目があり、論理思考(ロジカルシンキング)とともに、有用かつ重要なスキルとして認識されています。
この批判的思考力に関する論文は数千にも及び、研究者と実践者の双方が長年注目してきました。
さて、本論文では、批判的思考力を高めるための介入について、2万人を超える参加者を対象とした117の研究を抽出し、どういったアプローチが批判的思考力を高めることができるのかを分析したメタ研究となります。
改めて、批判的思考力とは何か、どうすれば高めることができるのか?などを考えるよいきっかけとなりました。
ということで、早速、中身を見てまいりましょう!
■今回の論文
・タイトル:Instructional Interventions Affecting Critical Thinking Skills and Dispositions: A Stage 1 Meta-Analysis(批判的思考スキルと姿勢に影響を与える指導的介入:第1段階メタ分析)
・著者:Philip C. Abrami / Dai Zhang
・ジャーナル:Review of Educational Research、2008年
・所属:コンコルディア大学 学習・パフォーマンス研究センター(Centre for the Study of Learning and Performance, Concordia University, Montreal, Quebec, Canada)
■30秒でわかる論文のポイント
・批判的思考(クリティカルシンキング:CT)は「目的意識を持ち、自己調整的に行われる判断力」であり、教育の最重要目標の一つとされている
・117件の研究・約2万人のデータをメタ分析した結果、指導はCTスキルを平均的に向上させることが示された(効果量g+=0.341)
・「どう教えるか」によって効果は大きく変わり、内容とCT指導を組み合わせた「混合型」が最も効果が高かった
・単にCT向上を「コース目標の一つ」として掲げるだけでは効果はほとんどなく、教員への専門的なトレーニングが伴うと効果が飛躍的に高まる
・CTの向上は「暗黙の期待」に委ねるのではなく、明示的・意図的な指導設計が不可欠である
■研究の背景と目的
批判的思考(クリティカルシンキング:CT)は、知識社会において不可欠なスキルとして、教育者・雇用者・政策立案者の間で広く認識されています。米国の政策文書においても、「教育のあらゆる段階でCTを促進すべき」と提言されている、とのこと。
ところが、CTが「重要だ」という認識は広まっているにもかかわらず、実際の教育現場でどのような指導がCTを効果的に伸ばすのか、その実証的な根拠は体系的に整理されてきませんでした。
本研究はその空白を埋めるべく、CTスキルと姿勢の育成に対する指導の影響を包括的にメタ分析することを目的としています。
まず、そもそもCTの定義について、引用します。本論文ではデルファイ法パネル(46名の専門家)による定義を中心的な枠組みとして採用しています。
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<批判的思考(CT)とは>
「目的意識を持ち自律的に行われる判断」であり、解釈・分析・評価・推論・説明・自己調整という6つのスキルと、探究心・柔軟性・公平さなど19の素養から構成される。
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■研究の方法
・デザイン:システマティックレビュー(第1段階メタ分析)
・参加者:117件の研究に含まれる合計20,698名。年齢層は小学生から成人まで幅広く、国籍や属性も多様。
・使用した測定ツール:ワトソン・グレイザー批判的思考評価、コーネル批判的思考テスト、カリフォルニア批判的思考スキルテスト、カリフォルニア批判的思考傾向インベントリーなど標準化ツールのほか、独自ツール
<介入の分類>
・介入1「一般型」:CTスキルと姿勢を特定の教科内容とは切り離して教える
・介入2「注入型」:教科内容の指導の中にCTを明示的な目標として組み込む
・介入3「没入型」:思考を促す教科指導を行うが、CT原則は明示しない
・介入4「混合型」:一般型と注入型・没入型のいずれかを組み合わせる
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:指導はCTスキルを平均的に向上させる
117件・161の効果量を統合した結果、平均効果量はg+=0.341(N=20,698)であり、全体として指導がCTスキルと姿勢に中程度の正の効果をもたらすことが確認されました。
ただし分布の異質性は非常に高く(QT=1,767.86、I²=90.95%)、効果量は研究によってマイナスから2.75まで大きく幅があります。
「指導すれば必ず伸びる」という単純な話ではなく、「どのように指導するか」が問われているということです。
◯わかったこと2:「混合型」が最も効果が高く、「没入型」が最も効果が低い
介入の種類別に効果量を比較すると、混合型(g+=0.94)が突出して高く、次いで注入型(g+=0.54)、一般型(g+=0.38)、没入型(g+=0.09)の順でした。
CTを教科の副産物として暗黙的に期待するだけの没入型は効果がほとんど見られず、CTスキルを明確なコース目標として位置づけ、かつ教科内容と連動させる設計が重要であることが示されました。
◯わかったこと3:教員へのトレーニングが効果を大きく左右する
CT指導の教育的根拠(ペダゴジカル・グラウンディング)に関する分析では、インストラクターが専門的なCT指導トレーニングを受けた場合の効果量が最も高く(g+=1.00)、対照的に「批判的思考の育成」がコース目標の一つとして列挙されているだけの場合は効果量が最低(g+=0.13)。
この「介入の種類」と「教育的根拠」の2変数を合わせると、効果量の変動の32%を説明できることも明らかになっています。
◯わかったこと4:年齢によって効果量が異なる
年齢層別では、中学生相当(11〜15歳)が最も高い効果量(g+=0.69)を示し、小学生(g+=0.52)がそれに続きました。
大学学部生は相対的に効果量が低く(g+=0.25)、年齢が高くなるほど指導の効果が下がる傾向も示唆されています。早い段階からCT指導を組み込む重要性が伺えます。
■まとめと感想
さて、本論文を読みながら思ったこと。そもそもの論文の主テーマではありませんが、「批判的思考力はトレーニングできる」というのが2万人を超えるデータから示されたことが、(この領域が苦手な自分としては)嬉しく思ったのでした。
冒頭でも触れましたが、批判的思考力は確かに「探究心」「公平さ」「柔軟性」といった個人的な素養を19ほど含む概念です。しかし、素養を超えて、「6つのスキルや16のサブスキル」に因数分解することで、「何をどう高めていけばいいのか」が見えやすくなる気がします。この点はもう少し探求してみたいと思いました。
年齢が高くなると効果量もある程度限定的になるようですが、どこかで改めて学び直してみたい、そんなことを思った次第です。
ぼんやりした批判的思考力を改めて見直す、興味深い論文と感じた次第です。最後までお読みいただきありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:25km
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