配信日時 2026/04/17 10:22

子育てによって親の心はどう成長していくのか? ー『中年からのアイデンティティ心理学』#8【カレッジサプリ】

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令和8年4月17日(第4435号)


子育てによって親の心はどう成長していくのか? ー『中年からのアイデンティティ心理学』#8


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3559字/読了時間8分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、宮崎から戻ってまいりました。

終末期である祖母と会えたこと、苦しそうではなかったことが安心しました。
最近、様々な人が変化があることに気づきます。今この時を大切に生きたいと思った次第。
また夜からは大学の授業の打ち合わせでした。



さて、本日のお話です。

先日に引き続き『中年からのアイデンティティ心理学』の続きです。中年の入門者くらいの者として、中年の人々が、どのように"揺らぎ"を感じ、自分と向き合い、そしてアイデンティティを確立していくのか……この旅路が面白すぎて、沼っているこの頃です。

本日は、「第5章 中年期の世代性とアイデンティティ」です。アイデンティティは個人の内的変容だけではなく「人とのかかわり」の中で発達していきます。

本日はその「他者を支え、育てること」と「アイデンティティ」のつながりについて本書より読み解いていきたいと思います。それでは、どうぞ!


■人は育てることで、自らが育つ

中年期の発達課題は「世代性」とエリクソンは述べました。つまり「育てること、与えること」が中年のテーマということ。

「相互性」という概念があります。これは、「与えると同時に得ること」です。母親は子どもを育てることによって、子どもの自立を促すとともに、そのプロジェクトの中で母親自身が成長していく、いわゆる「育児は育自」という要素を、相互性と呼びます。

本書では、それらのことをまとめて、このように言葉にしています。

「大人として生きることは、他者の存在に責任を持つこと」

職業でも家庭でも、あるいは老親に対しても、ケアする(育児や介護)によって、他の世代と深く繋がり、世話をすることで成長発達していくのではないか、と述べています。

その昔、アイデンティティ研究で有名な若きエリクソンに、精神分析の祖であるフロイトは「大人になるとは、"働くことと愛すること"だ」と言ったそうな。まさに言い得て妙な言葉です。しびれます…!

■「ケアすること」が大変と感じる4つの理由

……とはいいつつ、正直なところ「育児」「介護」などにまつわる、他者の世話をすることは「大変」というイメージがついて回ります。その理由として、4つのことが本書でまとめられていました。

理由1:ケアという仕事はタフである
長時間労働で疲弊する、他の活動を制限されるので欲求不満になる、生存に関与するため緊張感がある、正解がないため不安要素が大きいなど。

理由2:ケアされる側の難しさ
ケアされる側の「子どもや高齢者」は、時に繊細な(時に横暴な)存在です。体質、病気、扱いにくさなどがついて回ります。

理由3:ケアする側の複雑な状況
ケアする側も、自分自身の体調、あるいは神経質や不安を感じやすいなどの性格、介護や育児に対する知識、人生観などの影響があります。

理由4:サポート不足
核家族に伴うサポート力の低下、母親一人、娘ひとりに負担が集中するなど。

確かに…です。人生の役割が多重になる40代頃は、育児・介護・仕事の役割、加えて子育ても共働きになると、大変でない理由のほうが少ないように思えてしまいます。。。

加えて、育児や介護は結果がでにくい(したがって評価されにくい)特性があるため、生産性を上げることを志向する社会の価値観にそぐわないのかも……とも述べられていました。

■母親役割だけでは足りない? 母親のアイデンティティの4タイプ

この章では親(特に母親)のアイデンティティ発達について述べられています。1970年代までは、母親の子育て最中期は「女性の人生の中で比較的安定した時期」と考えられていたとのこと。理由は「母親役割が自分の生活の中心であり、存在意義を確信できたから」です。

しかし、少子化社会により、その状況は変わりました。まずは1~2人の子どもを育てなければならないというプレッシャーの問題。そして、母親役割のみで安定していたアイデンティティが、今日ではそれだけでは自己を支えきれないという問題です。

加えて今日では、情報量が極めて多くなりました。SNSでは、幼い子どもを育てながら活き活きと仕事にその他に活動している母親たちが見えます。そうした比較もあり「自分も外で活動しなければ」「働かなければ」「せめてパートにでも」と思う主婦がいて、心は子どもにも家庭にあらず、では健全とは言えないかもしれない。

そうしたものも全て「母親役割だけでは自己のアイデンティティを支えきれない」という現象である、と本書では述べています。

その中で、育児期の母親がどのようなアイデンティティ葛藤を体験し、そして統合していくのかを4タイプで定義をしています。

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タイプ1:統合型
・個としてのアイデンティティ=高い/母親意識の高さ=高い
・個人アイデンティティと母親アイデンティティの両者を上手く両立させている。

タイプ2:伝統的母親型
・個としてのアイデンティティ=低い/母親意識の高さ=高い
・母親アイデンティティが、自分のアイデンティティの意識の中心を占めている。そのため葛藤は少ないと思われる。

タイプ3:独立的母親型
・個としてのアイデンティティ=高い/母親意識の高さ=低い
・アイデンティティの中核は「個」にある。母親としての意識は乏しい。4タイプの中で一番矛盾や葛藤を感じる事が多いと思われる。

タイプ4:未熟型
・個としてのアイデンティティ=低い/母親意識の高さ=低い
・両者の確立共に不十分なタイプ。両者の間の葛藤を体験することが多いと思われる。他のタイプに比べて、発達的に未熟であることが要因。
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たしかに、このタイプでわけてみると、どこかしら分類されるところがあるようにも思えます。そうすることで、それぞれの発達課題の特定がしやすくなりそうです。

■子どもを育てると、親の心はどう発達するのか

さて、こう見てみると、「ケアすること、親になること」は葛藤や悩みの火種が満載のように見えます。その中で、親はどのように成長していくのでしょうか。

柏木(1995)による研究で、親となることによる成長・発達に関する6因子と呼ばれるものが紹介されていました。子育てをすることにより、親の心はどのように発達していくのか。実に興味深いところです。

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因子1:柔軟さ
角が取れて丸くなった/考え方が柔軟になった/他人に対して寛大になった/精神的にタフになった、など)
因子2:自己抑制
(他人の迷惑にならないように心がけるようになった/自分のほしいものなどが我慢できるようになった/他人の立場や気持ちを汲み取るようになったなど)
因子3:視野の広がり
(日本や世界の将来について関心が増した/児童福祉や教育問題に関心を持つようになった/日本の政治に関心が増した など)
因子4:運命・信仰・伝統の受容
(物事を運命だと受け入れるようになった/運やめぐり合わせを考えるようになった/長幼の序は大切だと思うようになった など)
因子5:生き甲斐・存在感
(生きている張りが増した/長生きしなければとおもうようになった/自分がなくてはならない存在だと思うようになった など)
因子6:自己の強さ
(自分の健康に気をつけるようになった/多少他の人と摩擦があっても自分の主義は通すようになった など)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちなみに、この「親となることの成長・発達度」ですが「全ての因子において父親よりも母親のほうが、効果量が大きい」ことが示されています。(「育てること」に対する社会的な役割が、母親のほうが大きいことも影響しているのだろうな、と思われます)

子どもが生まれると「社会を良くしていかなければいけないと思うようになった」と語る友人が、私の周りにもいます。私も少なからず思いますが、いつかは子どもが社会に出たときに、社会全体がやさしく、あたたかい場所であることを願うことを、よりリアルに想像するからなのでしょう。

それが、「子ども」という、自分と切っても切り離せない存在を通して、自分の関心領域が拡張していくのですね。

■まとめ:社会的役割とアイデンティティは切り離せない

このパートを読みながら思ったことは2つあります。

1つ目が、「社会的役割」と「アイデンティティ」が切り離せないということ。かつては母親役割のみで、社会としても「そういうものである」と認めていたからこそ、そこに"揺らぎ"は生じづらかったのだと思います。(あくまでもアイデンティティの話)

今は、情報が流通して、比較ができてしまうからこそ、比較の沼に陥ると、自分のアイデンティティが揺さぶられ続けるような、そんな状態になるようにも感じました。

そして2つ目が「親の役割を引き受けることの重要さ」です。考えが今の時代と違うという前提で敢えてお伝えすると、相当昔、私が働いているときにある上司がこんな事を言っていたのが印象的です

「母親は、子どもが生まれた時に大変だった…と思えるくらいがちょうどいい。そのほうが、振り返った時に、母としても人としても強くなれるから」

親になったとき・親の役割を終えるときは、役割が増えたり、変わったりして、アイデンティティの揺らぎが"起きるべきとき"とも思えます。そのときに、きちんとその親の大変さを味わうことは、子どもと親の心の発達にとって貴重な「経験資源」だったとも思えます。

ゆえに、そうした機会を十分に味わえるように、適切に周りが支援をすること。(しなさすぎ、しすぎを抑える)そんなことの大切さも考えさせられた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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【編集後記】
◯今月のランニング:164km

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