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令和8年3月3日(第4389号)
大局観を鍛えるための4つの視点 ー「解釈レベル理論」からの学びー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2658字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、大学院の仲間で近所に住んでいる人と
焼肉会食でございました。
東京マラソン明けで、筋肉痛だらけで、タンパク質が身体に染み渡るようでした。
今回は完敗でしたので、回復をさせたら、早速練習を再開していきたいと思います。
そして、遅々として終わらない書籍も、ようやく初稿出しのゴールが見えてきました。
もう一息、頑張りたいと思います。
*
さて、本日はある論文のご紹介です。
話が変わりますが、以前あるマネジメントのセミナーで、こんな話を聞きました。
「役職が上がるほどに、視点が高くなる。
視点が高くなるというのは、時間的・空間的により遠くを想像して、判断ができるようになることだ」
そのときに、大いに納得したことを思い出しました。確かに、一般社員より管理職、管理職より経営者のほうが、遠く見ているよなあ、と。
では、どうすれば「視点の高さ」を得ることができるのでしょうか?
今日はそんな話にもつながる「高次元のものの見方(大局観)を可能にするヒント」について、ある心理学の論文をご紹介いたします。
キーワードは「心理的距離の解釈レベル理論」。
なんともすごそうな名前ですが、納得感のある興味深い内容でした。
ということで早速、中身をご紹介させていただければと思います。
それでは、どうぞ!
■今回の論文
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『Construal-level theory of psychological distance(心理的距離の解釈レベル理論)』
著者:Yaacov Trope / Nira Liberman
ジャーナル:Psychological Review、2010年
所属:ニューヨーク大学(Department of Psychology, New York University)
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◯30秒でわかる論文のポイント
・人は対象との「心理的距離」が遠くなるほど、「物事を抽象的・本質的に捉える(高次解釈できる)」ようになる。
・心理的距離には「時間」「空間」「社会」「仮定性」の4つの次元がある。
・遠い未来のことは「なぜ(目的)」を重視し、近い状況では「どのように(手段)」に意識が向く傾向がある。
・この距離を意識的に操作することで、目先の誘惑に負けず、本質を見抜く意思決定が可能になる。
というお話でした。
■研究の背景と目的
私たちは「今、ここ」にいない状況(=未来のことや、遠くの場所、他人の気持ちなど)を想像することができます。
本研究は、人間がどのようにして直接的な経験を超えて、抽象的な思考を行っているのかを解明することを目的としています。
ここで重要な概念となるのが、「解釈レベル理論(Construal-level theory:CLT)」と呼ばれるものです。
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※解釈レベル理論とは:
対象との心理的な距離が遠いほど、人はその対象を「抽象的・本質的」な特徴で捉え(高次解釈)、
距離が近いほど「具体的・細部的」な特徴で捉える(低次解釈)という心理学の理論です。
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■研究の方法
そして、本論文は、過去10年以上にわたる「解釈レベル理論(CLT)」の研究を統合・体系化した包括的なレビュー論文です。方
法は以下のプロセスとのことでした。
・デザイン:心理的距離の操作による認知・判断の変化を測定する実験群の分析
・参加者:主に大学生を対象とした複数の実験サンプル
・尺度・測定ツール:行動識別質問紙、ストループ課題、Navon課題など
・分析手法:反応時間の比較、分類カテゴリー数分析、属性の重み付け分析
■主な結果(わかったこと)
本論文のポイントは以下の通りです。ボリュームのある内容でしたので、一部のみ切り取ってとなりますが、ご紹介いたします。
◯わかったこと1:心理的距離を構成する「4つのスイッチ」がある
人間は以下の4つの次元を通じて、対象との距離を測り、解釈のレベルを切り替えています。
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・時間的距離: 「今」からどれくらい離れた未来や過去のことかという時間軸の距離。
・空間的距離: 「ここ」からどれくらい物理的に離れた場所で起きていることかという物理的な距離。
・社会的距離: 「自分」と他者の違いや、自分と似ているか遠い存在かという対人関係の距離。
・仮定性(仮説的距離): 「現実」に起きていることか、それとも「もしも」の可能性の話かという確実性の距離。
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◯わかったこと2:距離が遠いほど「目的」が、近いほど「手段」が目立つ
例えば、数ヶ月後の旅行(遠い距離)を考えるときは「リフレッシュしたい」という目的を重視しますが、明日の旅行(近い距離)では「荷造りをどうするか」という具体的な手段に意識が奪われます。
◯わかったこと3:4つの距離は互いに連動している
「遠い未来」の話をするとき、人は無意識に「遠い場所」や「他人の視点」を想像しやすくなるなど、これら4つの次元は脳内で密接に関連しています。
■応用可能性(実践に活かすヒント)
・ビジネスの意思決定: 目の前のトラブルにパニックになったときは、「10年後の自分ならどう見るか?」と時間的距離を置くことで、本質的な解決策が見えてくる。
・セルフコントロール: ダイエット中、目の前のケーキを「甘くて美味しい食べ物(具体的)」と見るのではなく、「健康を害する糖のかたまり(抽象的)」と解釈レベルを上げることで、誘惑を断ち切りやすくなる。
■まとめと感想
「距離を広げる」で、物事の本質が浮かび上がる。
よって「自分の視点は、近いか遠いか」とメタ認知をするためのフレームとして、解釈レベル理論は役立てられそうだな、とも感じました。
一方、言われたらそうだな、と思うものの、そうした距離を取るためには、「歴史を学ぶ」「地政学を学ぶ」「経済を学ぶ」「文化を学ぶ」など分野を隔てた知識を学ぶこと、
いわゆるリベラルアーツ的な視点が間違いなく必要になってくるだろう、とも思いました。
そうした前提の知識があるからこそ、対象と距離をおいた全体像を捉えることができるわけであり、そうしてこそ「解釈レベル理論」を使いこなせるのではないか、と思いました。
いずれにせよ、結局、学び続けることは必須のなのでしょう。
▽▽▽
最後にもう一つ余談ですが、昔 「桃太郎が仲間にした動物について、どういう順番だったか知っているか?」 と、ある外資系の経営者でもあった先輩から質問を受けた記憶があります。
「犬、サル、キジでしたっけ?」 と答えると、その理由として、その方の主張は「視点の高さが高くなるんだよ」とおっしゃっていました。
(つまり、犬は地面、サルは木の上から、キジは空から戦局をみて判断することができるんだ、という話)
「今・ここ・自分」から少し離れて、ヘリコプターで上空から見下ろすかのごとく、高い解釈レベルで物事を見る。それが、私たちが賢明な判断を下すための鍵なのだろう、そんなことを思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:42km
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