配信日時 2026/02/20 18:46

なぜ決めたことが実行できないのか? ー行動志向の代表的論文による解決策とはー【カレッジサプリ】

---------------------------------------------------------------------------
皆さまの1日を5%元気にするビジネス系メルマガ『カレッジサプリ』
---------------------------------------------------------------------------
令和8年2月20日(第4379号)


なぜ決めたことが実行できないのか? 
ー行動志向の代表的論文による解決策とはー


株式会社カレッジ 紀藤康行
---------------------------------------------------------------------------

※このメールは、メールマガジンにご登録頂いた方、名刺交換をさせていただいた方、研修にご参加頂いた方に配信をしております。
ご不要の場合は大変お手数ですが、メール下部の「配信停止はこちら」より解除くださいますようお願い申し上げます。

(本日のお話 3454字/読了時間5分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、1件のアポイント。
また、外部人事パートナーとして関わらせていただいているクライアント様への
コーチング&コンサルティングなどでした。

胃腸炎の発熱は復活しましたが、
相変わらず胃腸は少しお休みモードのようです。

もう少し様子を見つつ、
来週の東京マラソンに向けてコンディションを整えて参りたいと思います…!



さて、本日のお話です。

なぜ、決めたことが実行できないのか?
なぜ、やる気はあるのに、宿題を始められないのか?
なぜ、退屈と感じるYouTubeを観るのを止められないのか?

……こうした「行動できないこと」に悩みを感じる人は少なくないのではないでしょうか。
(私もしばしば感じます。課題とか本当にそうです汗)

そんな中で、「行動を起こす」ことのメカニズムを解き明かす論文はないのかな?と探していたところ、1992年の「行動志向(Action Orientation)」という代表的な理論があり その内容が勉強になるものでした。
子育て世代のお母さん・お父さんにも知っていただきたい内容でもあります。

ということで、早速中身をみてまいりましょう!それではどうぞ。


■今回の論文
タイトル:A theory of self-regulation: Action versus state orientation, self-discrimination, and some applications(自己調節の理論:行動志向と状態志向、自己差別化、およびいくつかの応用)
著者:Julius Kuhl(ユリウス・クール)
ジャーナル:Applied Psychology: An International Review(応用心理学:国際レビュー)、1992年
所属:オスナブリュック大学、ドイツ



■30秒でわかる論文のポイント

・決めたことを実行できる人とできない人の差は、「行動志向」と「状態志向」という性格特性にあります。

・「状態志向」の人は、自分の意図とは無関係な思考が頭に侵入し、脳の資源を浪費してしまいます。一方、「行動志向」の人は、目標の維持と諦める(離脱)のバランスが取れており、柔軟に行動できます。

・他者の期待や欲求を「自分のもの」と誤って思い込む(内面化)ことが、自己調整を妨げる大きな原因(=状態志向になる原因)になります。

・しかし、自己調整の具体的な「戦略知識」を学び活用することで、行動の効率を高めること(=行動志向に近づくこと)が可能です。



■研究の背景と目的

本研究は、意識的な選択や意図があるにもかかわらず、なぜ人間はそれに基づいた行動がとれないのか? こうした非合理的なメカニズムを解明することを目的としています。

従来の意志力や自我の強さといった概念を、情報処理の観点から「自己調整」の理論として再構築しようとする試みが本研究です。


■キーワード:「状態志向」と「行動志向」
ここで、2つの重要なキーワ―ドについて押さえておきます。

◯「状態志向(State Orientation)」とは:
現在の自己の意図(決めたこと)から乖離した精神活動が、制御不能な状態で生じている状態を指します。以下の3つの特徴があります。

・1.制御不能な離反:自分が今やろうとしていることとは無関係な考え(反芻など)が頭に侵入し、それを止めることができません。
・2.リソースの浪費:これらの意図しない精神活動は、脳の限られたキャパシティに大きな負荷をかけ、本来使うべきエネルギーを奪ってしまいます。
・3.3つの側面:失敗について考え続ける「執着(反芻)」 、行動に移せない「躊躇」 、活動をすぐ中断する「変動性(揮発性)」です。

◯「行動志向(Action Orientation)」とは:
現在の意図をスムーズに実行に移し、それを維持、あるいは必要に応じて適切に解除できる状態を指します。以下の3つの特徴があります。

・1.柔軟なバランス:目標に向かって「計画・実行・維持」を行う力と、状況に応じてその目標から「諦める(離脱する)」力のバランスが取れています。
・2.内部制御パターン:外部の刺激や一時的な感情に流されすぎず、自分が納得した意図に基づいて行動を制御できます。
・3.効率的な実行:失敗を経験しても、それを速やかに忘れて次の行動に集中することができます。


■研究の方法

本論文は、著者のユリウス・クール教授による複数の実験や理論を統合した包括的な要約論文です。

・デザイン:実験室実験、臨床データの分析、および発達心理学的アプローチを組み合わせた多角的研究。
・参加者:一般大学生、前頭葉損傷患者、恐怖症患者、および6〜12歳の子供たちなど多岐にわたります。
・使用した尺度・測定ツール:
 ー行動制御尺度(ACS:Action Control Scale)
 ー実際の行動制御分類システム(AACCS)
 ー子供向け自己関係テスト(SRTC:Self-Regulation Test for Children)
・分析手法:反応時間の測定(認識テスト)、脳電位の記録(神経生理学的指標)、相関分析など。


■主な結果(わかったこと)

◯わかったこと1:状態志向の人は「やる予定のことを切り離せない」

本論文の実験によれば、「状態志向」の人は、将来実行すべき意図に関連する情報を、文脈に関係なく頭の中に活性化させ続けてしまいます。

本論文の実験では、「後で実行するスクリプト(意図)」に関連する単語の認識時間を測定しました。
状態志向の人は、実行が延期されている状況でも保留にされている関連単語への反応が速く、意図(やらなければと思うこと)が頭の中に「固執」していることが示されました。

・効率の低下:本来は別の作業をすべき時間であっても、頭の片隅で「次にやること」が鳴りやまないため、現在の作業への集中が妨げられます。
・文脈不適切:状況に応じて意図をオン・オフする「自己制御」のスイッチがうまく機能していないことが証明されました。


◯わかったこと2:他者の期待の「誤った内面化」が行動を妨げる

状態志向の人は、他者の信念や期待を、自分の真の欲求と混同して「自己マーカー」を付与してしまう(誤った内面化)傾向があります。

実験において、実験者から割り当てられた活動を、後で「自分が選んだ活動」と誤認する割合が状態志向の人で有意に高いことが判明しました。
これにより、真に納得していない目標にリソースを割いてしまい、自己調整の効率が著しく損なわれます。


◯わかったこと3:戦略知識が自己制御を可能にする

子供を対象とした「モンキーレース」の実験(=バーを指示が出たら押す、そうすると報酬がもらえるというもの。
途中で「サルが降りてくる映像」が流れてくるので、報酬を手に入れるためには、気を散らせるサルの映像の誘惑に対して自己制御をする必要があるという実験)を行いました。

この実験では、自己調整能力は単なるやる気の問題ではなく、「戦略知識」の有無に依存することが示されました。
誘惑(サルの競争)がある状況でも、適切な制御戦略(注意制御など)を知っている子供は、作業の質を安定して維持できました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎「戦略知識」の具体例
・注意制御:誘惑(窓の外など)を見ないようにする工夫。
・意欲制御:「これが終われば気分が良くなる」と自分を鼓舞する考え方。
・感情制御:楽しいことを考えて、つらい作業を乗り切る技術。
・失敗制御:先週の失敗は頭の中から追い出すようにする
・符号化制御:仕事に関する手がかりを見つけ、着手する
・計画の簡素化 :始めるべき時に考え込むのはやめよう。まず始めよう
・環境制御:気が散るおもちゃを机から片付けるといった物理的な対処。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


■応用可能性(実践に活かすヒント)
・1. 教育:6〜12歳の「黄金期」に戦略を教える:
 自己調整戦略の習得には6〜12歳が最も敏感な時期です。 子供に対し、単に「集中しなさい」と叱るのではなく、上記の戦略知識を伝えるのが有効です。

・2. ビジネス:個人の特性に合わせた環境配置:
 組織において、状態志向の人は「慎重な意思決定」や「構造化された環境」で強みを発揮し、行動志向の人は「決定の迅速な実行」に優れています。
  チーム内で役割を分担することで、全体のパフォーマンスを最適化できます。

・3. 臨床:自己の再統合を促すアプローチ :
 「やりたいのにできない」という人には、他者の期待を排除し、真の自己コミットメントを強化するゲシュタルト療法や逆説的介入が効果的である可能性があります。


■まとめと感想

なかなかボリューミーな論文で、実験もいくつもありましたが、その中の実験が、子育てにも考えさせられるもので、示唆深いなと思っていました。

たとえば、モンキーレースの実験などは、まさに子どもが「あるある」の話です。
ご飯の最中にテレビを見たりすると、そちら側に気を取られて、食べることができなくなってしまう。
あるいは、着替え中に気をそらせるものがあると、そちら側に意識が行ってしまう、など。

こうしたことを 「戦略知識」としての、制御の方法を教えてあげることで、部屋にノイズをなくすようにするなどの工夫も、可能になるのだろうな、と思いました。

この習得に最もふさわしい時期が6〜12歳ぐらいであるとも書かれていましたが、我が家の散らかりっぷりをみると、「戦略知識」としての自己制御は程遠そうなので、まともな状態に近づけられるように頑張らないとな…などと思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。
https://note.com/courage_sapuri/n/nf56c67c266ba?app_launch=false
==========================

 【編集後記】
◯今月のランニング:136km

【メルマガのご感想について】
メルマガのご感想は、このメールに直接ご返信いただければ紀藤にのみ届きます。
皆さまのメッセージが励みになります!ぜひお気軽にメッセージくださいませ。

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
 メルマガ「カレッジサプリ」公式サイト https://www.courage-sapuri.jp/
 ★バックナンバーはこちらから読めます★  https://www.courage-sapuri.jp/backnumber/
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
このメールは、メールマガジンにご登録頂いた方、名刺交換をさせていただいた方、
研修にご参加頂いた方に配信をしております。
ご不要の場合はお手数ですが、メール下部の「配信停止はこちら」より解除くださいますようお願い申し上げます。

【メルマガ登録・解除について】
※メールアドレスの変更について
 ⇒「現在のメールアドレスの配信停止」→「新アドレスでの登録」にて
   ご対応お願い申し上げます。
※メルマガのご登録はこちらから
 ⇒ https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=HSfoIRnMfw
※メルマガの配信停止はこちらから
 ⇒ https://1lejend.com/stepmail/delf.php?no=HSfoIRnMfw
  (もし解除ができない場合は、こちらのメールに解除希望アドレスを送信ください)