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令和8年2月6日(第4366号)
職場のストレスを「災害」と考えて数値化してみよう
ーデュイスブルク・エッセン大学の研究ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3154字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、外部人事パートナーとして関わらせていただいた会社様への、
コーチング&コンサルティングでした。
また、月1度、「最近読んだ本の紹介」という勉強会があるのですが、
毎回のことながら、他の方が読んだ本の内容など、
知らないこともたくさんあるな…と非常に勉強になります。
表面的な話だけでなく、もっと深く、じっくり学んでいきたい、
そんな事を考える今日このごろです。
*
さて、本日のお話です。
皆様は「リスクマトリクス」なるものをご存知でしょうか?
私はその昔、生命保険に加入するときなどにライフプランナーの方に教えてもらったような記憶があります。
「交通事故などで致命的なダメージを負う」などの場合、それはめったにない。
しかし、そのハザード(災害)のインパクトは、働けなくなる→収入が途絶えるなど、相当な破壊力があります。
一方、ちょっとした風邪などは、軽微なインパクトだけれど、頻度は高い。だから「手洗いうがい」といったリスク対策の仕組みは大事です。
このように、リスクマトリクスは、ハザードと頻度のバランスを考えることで、適切にリスクの評価と対策を考えることができる方法として有用です。
今日は、そんな有名な「リスクマトリクス」を「職場の心理社会的ハザード」の頻度に着目したという興味深い論文がありました。
本日はその内容についてご紹介させていただきます。
それでは、早速まいりましょう!
■今回の論文
・『Applying risk matrices for assessing the risk of psychosocial hazards at work(職場における心理社会的ハザードのリスク評価のためのリスクマトリックスの適用)』
・著者:Yacine Taibi / Andreas Müller
・ジャーナル:Frontiers in Public Health、2022年
・所属:デュイスブルク・エッセン大学 心理学研究所 労働・組織心理学部門(Department of Work and Organizational Psychology, Institute of Psychology, University of Duisburg-Essen, Essen, Germany)
■30秒でわかる論文のポイント
・職場のメンタルヘルス対策(心理社会的リスク評価)において、製造現場などで使われる「リスクマトリックス」を応用する理論的な枠組みを提案した論文です。
・「心理社会的ハザード(ストレス要因)」が起きる頻度と、それが健康に与える「危害(ダメージ)」の深刻さを掛け合わせることで、対策の優先順位を「見える化」します。
・「オッズ比(ある要因があるとき、ないときと比べてどれだけ結果が起きやすくなるかの指標)」を用いることで、客観的で統計的なリスク評価を可能にしています 。
・これにより、単に「ストレスが高い」と判断するだけでなく、どの要因が最も深刻な健康被害につながるかを論理的に特定できるようになります。
■研究の背景と目的
現代の職場では、デジタル化やサービス業の増加により、心理社会的な負荷が急増しています。多くの国で「心理社会的リスク評価」が義務化されていますが、実は「どうやって評価し、優先順位をつけるべきか」という具体的な手法については、今もなお議論が続いています。
物理的な危険(騒音や熱など)には確立された評価法があるのに、心理的ストレスについては「何となく高い・低い」で終わってしまいがちです。
そこで本研究は、物理的な安全管理で実績のある「リスクマトリックス」を心理社会的要因に適用し、理論的・統計的な裏付けを持った評価モデルを構築することを目的としました。(ここで言う「心理社会的ハザード」とは、従業員の健康や安全に有害な結果をもたらす可能性のある「作業特性」のことを指します)
■研究の方法
本研究は、既存の理論や統計手法を統合した「概念的なフレームワークの提案」です。
・デザイン:理論的考察および3×3のリスクマトリックスの構築。
・使用された枠組み:健全な仕事設計に関する心理学的理論(職務要求・資源モデルなど)。
・ハザードの測定:COPSOQ(コペンハーゲン心理社会的アンケート)などの標準化された質問票を想定 。
・分析手法:二項ロジスティック回帰分析を用いて「オッズ比」を算出する方法を提案。
具体的には、ハザードの発生確率(時々、頻繁、常に)と、危害の深刻度(軽微、中程度、重大)の2軸でマトリックスを作成します。
■主な結果(わかったこと)
◯わかったこと1:心理社会的ハザードは多岐にわたり、複数のモデルで整理できる
論文内では、表に基づき、以下のような主要なハザード(職務特性)が整理されています。
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・主要な理論に基づくもの:技能の多様性、仕事の要求度(負荷)、裁量権の欠如、報酬(雇用安定やキャリア)の不均衡、役割の曖昧さなど。
・リーダーシップと対人関係:破壊的リーダーシップ、フィードバックの欠如、いじめ、ハラスメント。
・労働時間と強度:残業、労働の強度、感情的要求(感情労働)。
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※作業特性=危険因子(ハザード)と捉えます
◯わかったこと2:健康への「危害(ダメージ)」は発現期間で分類可能
疲労や単調さ、一時的な血圧上昇などは「軽微」な短期的な害。心身症やバーンアウト、中期的な欠勤は「中程度」。
そして、うつ病や心血管疾患、筋骨格系障害などの診断名は「重大」な長期的な害として分類することを提案しています。
◯わかったこと3:オッズ比によって「対策の緊急度」が明確になる
統計的に有意な「オッズ比」を用いることで、例えば「社会的支援の欠如が『常に』ある場合、重大な健康障害のリスクが3.6倍になる」といった具体的な数値化が可能になります。
これにより、限られたリソースをどこに集中すべきかが一目でわかります。
■応用可能性(実践に活かすヒント)
この手法は、ビジネス現場の安全戦略に直結します。
・組織の優先順位付け:単に従業員の満足度が低い項目を改善するのではなく、「どのストレス要因が、実際の病欠や離職(重大な危害)に最も強く結びついているか」を数値で示せるため、経営陣への説得力が増します。
・心理社会的安全の醸成:こうした透明性の高い評価手法を導入することで、「会社は私たちのメンタルヘルスを真剣に守ろうとしている」という信頼感が生まれ、組織全体の安全文化が高まります 。
・早期警戒システム:短期的な「疲労(軽微な害)」の段階でリスクマトリクス上の黄色信号を検知することで、重大な疾患(赤信号)になる前の予防措置が可能になります。
■まとめと感想
かつては、物理的環境のみを「ハザード」とみなしていたようですが、確かに、「仕事の負荷が高すぎる」とか、一方「技能の多様性が低すぎる」あるいは「職場の上司支援が不足している」などは、組織行動からバーンアウト、モチベーションの低下、離職などに繋がることが知られています。
そう思うと、「心理的なハザードである」と認識して妥当だと思いますし、これらを職場やチームごとに「起こりがちなハザード」として捉えて整理することで、未然に防ぐべきもの、として共通理解を得られるツールとなるように感じました。
昭和的な時代では、気合・根性で乗り切るべきものを「ハザードであり、リスクである」とラベルを貼ると、真剣に取り組む一助にもなるのだろうな、そんなことを思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:20km
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