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令和8年1月13日(第4342号)
「もっと良い選択」があなたを不幸にする ──“Maximizer”という罠
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 1887字/読了時間2分)
■こんにちは。紀藤です。
本日も、「強み」に関する論文のご紹介です。
最近、ひたすら強みの概念にまつわる論文を探しまくっております……。
そんな中で、一つ、興味深い論文がありました。
そのテーマは「最大化者(Maximizer)」についての論文です。
「最大化者」とは、あらゆる選択肢の中での「客観的な最善」を選びたい人たちのことです。
外部・相対的な基準、つまり、他者や他の選択肢との比較の中で「最も良いもの」を選びたくなる傾向があり、その結果、幸福感が低いという特徴があるとされています。
たまたまですが、クリフトンストレングスの資質に「最上志向(Maximizer)」という名前がついたものがあります。
これも「最上志向を目指したい」「卓越を求めたい」という強みであり、一部ではありますが「最大化者」の持つ行動パターンと重なるところもあると感じます。
余談ですが、クリフトンストレングスの私の1位資質も、まさに「最上志向」です。
そんな意味で、自分にとっても気になるテーマでした。
…ということで、少しマニアックですが、今回は「最大化者」の心理的メカニズムと幸福度との関係に迫った論文を深掘りしていきたいと思います。
それでは、どうぞ!
■今回の論文
タイトル:Maximizing Versus Satisficing: Happiness Is a Matter of Choice (最大化 vs 満足化:幸福は選択の問題である)
著者:Barry Schwartz, Andrew Ward, Sonja Lyubomirsky, John Monterosso, Katherine White, Darrin R. Lehman
ジャーナル:Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 83, No. 5, 1178–1197 (2002)
所属:スワースモア大学、カリフォルニア大学リバーサイド校、ペンシルベニア大学、ブリティッシュコロンビア大学
■30秒でわかる要約
・本研究は、「選択肢が多いと人はより幸福になる」という前提に疑問を投げかけた画期的な論文です。
・最善の選択を追い求める「最大化者(Maximizer)」は、ある程度で満足できる「満足化者(Satisficer)」に比べ、幸福度・自己肯定感が低く、後悔や抑うつの傾向が強いことが明らかになりました。
・研究では、最大化傾向を測定する尺度を新たに開発し、4つの異なる実験でその心理的・行動的影響を検証しました。
・結論として、「最大化者はより良い選択をしているように見えて、主観的には不幸になりやすい」という逆説的な現象が浮かび上がりました。
■研究の背景と目的
これまでの経済学や合理的選択理論では、「選択肢が多い=良いこと」とされてきました。しかし近年、「選択肢の過多」がむしろ不安や後悔を生むのではないか、という指摘も増えています。
本研究の目的は、H.A.サイモンが提唱した「満足化(Satisficing)」という考え方を心理学的に発展させ、「最大化傾向」と人の幸福感・後悔・社会的比較の感情との関連を明らかにすることです。
そのために、最大化傾向を測定する新しい尺度を開発し、4つの実証的研究を通して多面的に検証を行いました。
■研究の方法とデザイン
4つの研究が段階的に行われました。
◯研究1:最大化尺度と後悔尺度の開発 1,747名を対象に、新たに開発した「最大化尺度(Maximization Scale)」および「後悔尺度(Regret Scale)」を用いて、幸福感・抑うつ傾向・完璧主義などの心理特性との相関を分析。
◯研究2:購買行動における比較と後悔 401名の大学生を対象に、実際の買い物の際における選択後の満足度や後悔、社会的比較行動の傾向を調査。
◯研究3:社会的比較実験 54名の学生にアナグラム課題を実施し、隣で自分より速くor遅く解く“サクラ”を配置。社会的比較が自己評価や気分に与える影響を分析。
◯研究4:意思決定ゲーム(最後通牒ゲーム) 84名を対象に、交渉ゲームにおいて後悔を生じやすい条件を設定し、最大化者がどう反応するかを検証。
■主な結果
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・最大化傾向が強い人ほど、幸福度・自己肯定感・楽観性が低く、抑うつや後悔の傾向が高い。
・最大化者は社会的比較に対して敏感であり、他者の方が良い結果を得ていると感じると自己評価が下がる。
・客観的には良い選択をしていても、主観的満足度が低い傾向にある。
・「後悔のしやすさ」が最大化傾向と抑うつ・幸福感の低さとの間を媒介していた(間接的要因として機能)。
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■考察:最大化の代償
最大化者は「より良いものを」と探索し続ける傾向がありますが、現代社会のように選択肢が無限に近い世界では、その探索が終わらない苦しみになるとのこと。
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・終わらない比較のループ:どれだけ良い選択をしても、「もっと良いものがあったかも…」という思考が頭をよぎる
・自己責任化が生む抑うつ:選択肢が少なければ「仕方ない」と思えるのに、無限に選べる社会では、うまくいかない原因をすべて「自分の選択眼」に帰属しがち。
・適応の罠:たとえ素晴らしい選択をしても、人はそれに慣れてしまう(適応)。期待値の高い最大化者にとっては、この「慣れ」がより強い不満を生む。
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■「最大化者」と「卓越性」の追求の違いとは?
この研究を読んでいてふと思ったのが、「最大化(Maximizer)」と「卓越性の追求(Striving for Excellence)」は似ているな、ということでした。
ただ、よく見てみると少し異なる概念のようです。 まとめると、こんな感じです。
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【最大化者 (Maximizer)】
目標:外部的な“最善”の選択を目指す
判断基準:他者との比較/相対的
幸福感:低い(後悔・不満を感じやすい)
選択行動:選択肢が増えるほど苦痛が増す
【卓越性の追求 (Excellence)】
目標:自らに課した高い基準の達成を目指す
判断基準:自己基準/絶対的
幸福感:比較的高い(達成感が得られやすい)
選択行動:選択肢の多寡に左右されにくい
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■まとめと感想
最大化は「世の中のベストを手に入れること」に執着するため、終わりのない探索と比較のループに陥りやすいようです。
そうすると幸福は遠のいていくというのは、当たり前のようですが大事なポイントだと感じました。
本論文は「選択」という観点ですが、共通して言えることは「外部的な最善との比較」「他者との比較」をする限りにおいて、幸福は遠のいていくというのは、共通して言えることだと思います。
まだまだ、と思っても「世の中のベスト」ではなく、「自分の中でのベスト」を目指すこと。そんなことが大事なのだなあ、しみじみ思う論文でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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【編集後記】
◯今月のランニング:90km
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