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令和8年1月9日(第4338号)
「文学フィクション」を読むと、心を読む力が鍛えられる
ーニュースクール大学社会調査大学院の研究より
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3060字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は執筆活動、並びに研修の準備でした。
終日、創作に時間が取れたので、非常に贅沢な時間でした…!
その後、9kmのランニングをしてみましたが、
やはり足裏が痛み、いよいよ練習がまずい感じになっております。
整形外科に行ってみてもらおうかな、と思っている次第。体は資本です。
また夜は「自分らしさ」をテーマに、
東京大学の博士課程でビジュアルシンキングを研究されている方に、
実際にその手法で絵を描くという個人セッションを行っていただきました。
ものすごく気づきが多く、充実した時間で、これはまたどこかで
ご紹介させていただければと思います。
*
さて、本日のお話です。
性格の強みの中に「社会的知性(SQ)」と呼ばれるものがあります。
これは「他者の感情や意図を理解し、状況に応じて適切に行動する力」であり、人間関係を円滑にし、社会生活をうまく送るためにとても重要なスキルとされています。
要は、「空気を読んで、うまくあわせる力」ともいえます。
この力、「なんとなくセンスなんじゃないか」、「空気が読める人は読めるけど、読めない人は読めないよね」、で終わりそうなのですが、実はこの社会的知性に含まれる「相手の気持ちを読む力」について、高めるような方法があるようです。
今回ご紹介する研究は「文学を読むことが、他者理解を高める」という論文です。
科学誌に掲載された有名な論文ですが、社会的知性を考えるうえでも、非常に重要な示唆を与えてくれます。
それでは、早速まいりましょう!
■今回の論文
タイトル:Reading Literary Fiction Improves Theory of Mind
(文学的フィクションの読書は心の理論を向上させる)
著者:David Comer Kidd / Emanuele Castano
ジャーナル:Science(2013年10月18日号)
所属:The New School for Social Research(ニュースクール大学社会調査大学院)
■30秒でわかる要約
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・本研究は、「文学的フィクション」を読むことが、他者の心を理解する能力である「心の理論(Theory of Mind)」を高めるかどうかを検証した実験研究です。
・5つの実験を通じて、文学的フィクションを読んだ直後の参加者は、大衆小説やノンフィクション、あるいは何も読まなかった人と比べて、他者の感情や意図を正確に読み取る成績が有意に高くなりました。
・重要なのは、「フィクション一般」ではなく、「文学的フィクション」に特有の効果が示された点です。
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■研究目的/背景
◯心の理論(Theory of Mind)とは何か?
「心の理論(以下ToM)」とは、他者が何を感じ、何を考え、どんな意図をもって行動しているかを推測する能力のことです。
これは、共感、対人関係、協力、リーダーシップなど、人間関係のあらゆる場面の基盤となる能力です。
ToMには大きく2つの側面があります。
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・感情特ToM:他者の感情状態を理解する力
・認知的ToM:他者の信念・意図・考えを推論する力
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これまでの研究では、「読書量が多い人ほどToMが高い」という相関は示されていました。しかし、「どんな種類の読書が、ToMを高めるのか」は、はっきりしていませんでした。
そこで本研究では、読者に解釈を強いる『文学的フィクション』が、ToMを一時的に高めるのではないか、という仮説が立てられました。
■方法
本研究では、合計5つの実験が行われました。
◯読書条件(実験操作)
参加者は、以下のいずれかを短時間読みます。
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文学的フィクション: 文学賞受賞作や古典文学(登場人物が多義的で、心理描写が複雑。例:芥川賞受賞作品、夏目漱石『こころ』など)
大衆小説: ベストセラーのロマンスや冒険小説など
ノンフィクション: 雑誌記事など
読書なし(対照条件)
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◯ToMの測定尺度
読書後、以下のテストが実施されました。
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RMET:写真の「目元」だけを見て感情を読み取るテスト(感情的ToM)
DANVA2-AF:表情認識の正確さを測るテスト
誤信念課題:他者の誤った信念に基づく行動を予測する課題(認知的ToM)
Yoniテスト:言語的・視覚的手がかりを使って、他者の思考や感情を推論する課題
ART:これまでの読書経験を測る指標(統制変数)
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■主な結果(わかったこと)
結果は、非常に一貫していました。
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・文学的フィクションを読んだ参加者は、RMETやDANVA2-AFの成績が有意に向上した
・大衆小説・ノンフィクション群は、読書なし群とほぼ同程度だった
・誤信念課題(簡単なもの)では差が出なかったが、より複雑なYoniテストでは、文学的フィクション群が有意に高得点だった
・年齢・性別・教育歴・感情状態・没入感などでは、この効果は説明できなかった
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つまり、「何を読んだか」が決定的に重要だった、ということ。
そして「文学的フィクションを読んだ参加者は、相手の感情や表情を読み取る力が高まった」点が注目のポイントです。
■考察:なぜ文学的フィクションなのか
著者たちは、文学的フィクションの特性を次のように説明しています。
◯文学的フィクション=「書き手的テキスト」
文学的フィクションは、登場人物が単純ではなく、善悪や感情が曖昧です。
読者は、行間を読み、登場人物の内面を「自分で補完」する必要があります。
このプロセスそのものが、現実世界で他者の心を推測するプロセスとよく似ていると考えられるようです。
◯大衆小説=「読み手的テキスト」
一方、大衆小説は、登場人物が類型的で、展開も予測しやすいです。ゆえに、読者は「理解する」よりも、「確認する」読み方になりやすく、ToMを強く刺激しないと考えられました。
■限界と今後の課題
もちろん限界もあります。
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・効果は短期的なもの:長期的な読書習慣が能力として定着するかは未検証
・文学性の定義が主観的: 賞や専門家の判断に依存している
・高度な認知課題では、効果が限定的な可能性
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とのことです。とはいえ、科学誌に掲載された厳密な実験研究として、そのインパクトは大きいと感じます。
■実践に活かすヒント
この研究は、社会的知性を育てるヒントを与えてくれます。
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対話力や共感力を高めたい人は、「わかりやすい本」だけでなく、「解釈が必要な文学」に触れてみる
教育や人材育成の場で、文学作品を「感想共有」や「人物理解」の素材として使う
強み開発の文脈で、社会的知性を「経験+内省」で育てる一つの方法として活用する
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■まとめと感想
社会的知性というと、「人と関わる経験を積むこと」が真っ先に思い浮かびます。もちろんそれも大切です。
ただ、この研究を読んで感じたのは、直接的な対人経験だけが、他者理解を育てるわけではないということでした。
特に、小学校・中学校で、「国語」の授業をやりましたが、「作者は何を考えていたでしょうか?」というのも、まさにこの相手の心を推察する練習だったんだな、と気づきます。
文学を読むという行為が、実は他者の心を想像し続ける、社会的な営みであること。社会的知性は、「人と関わって育つ強み」であると同時に、「物語を通して育つ強み」でもあるんだな、そんなことを思いました。
私もつい「読書」というと、ビジネス書で役立つものばかり読んだり、興味のテーマに関わるものばかり読んでしまいがちですが、人々の心の機微が描かれる作品ももっと読んでみたい、そう思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
※ 本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。よろしければぜひご覧ください。
https://editor.note.com/notes/n741d1fb6fa6d/edit/
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【編集後記】
◯今月のランニング:66km
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