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令和8年1月6日(第4335号)
「希望理論」:希望を高める3つの要素とは? ーカンザス大学の研究ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3456 文字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、年明けが明けて、世の中も動き出してきた感じがします。
今日は、そんな新年にふさわしい論文(?)をご紹介いたします。
*
「希望」。
新年の書き初めで出てきそうな言葉にランキングしそうなこの言葉。
老若男女問わず、そこに含まれる明るい未来を想像させるこの言葉は、多くの人にとって、馴染みあるものではないかと思います。
そして同時に「希望」とは、心理学の中でも、とても重要なキーワードでもあります。
たとえば、組織の中でも、目標達成への力にもなる『心理的資本』でも「希望」は登場します。
またポジティブ心理学の「性格の強み」の中でも「希望」という概念が紹介されています。
そんな「希望」について、カンザス大学の元心理学教授のC.R.スナイダーが提唱した 「希望理論」なるものがあります。7000件以上の引用数を誇る非常に有名な論文です。
「希望とは何か?」「どのような効果があるのか?」「どうすれば高められるのか?」などを整理しており、「なるほど……!」と大変納得させられたのでした。
ということで、早速中身をみてまいりましょう。それでは、どうぞ!
■今回の論文
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英語タイトル:Hope theory: Rainbows in the mind
日本語タイトル:希望理論:心の虹
掲載誌と出版年:Psychological Inquiry(心理学的探究)、2002年、第13巻第4号、249–275頁
著者:C.R. Snyder
所属機関:カンザス大学ローレンス校
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■30秒でわかる要約
・本論文は、C.R.スナイダーが提唱した「希望理論」を体系的に整理したレビュー論文です。
・希望を「目標」「経路思考」「主体性思考」という3要素からなる認知的プロセスとして定義し、その発達背景、測定尺度、他の心理学概念との違い、学業・健康・心理療法など多領域における効果を包括的に論じています。
・希望は感情ではなく「考え方の構造」であり、人生の成果を支える中核的な心理資源であることが示されました。
■研究背景と理論の起源
希望理論は1980年代半ば、スナイダーが「言い訳(excuses)」の研究を行っていた際、参加者が頻繁に語った「前向きな目標への到達欲求」に着想を得て生まれました。
理論得的背景には、
・クレイグ(1943)の「脳の目的は因果関係を理解すること」という考え
・ミラーらの計画と行動に関する研究
・認知革命以降の「人はどのように考えるか」への関心
があります。また、精神科医カール・メニンガーからの助言を受け、希望を感情ではなく認知(思考様式)として定義した点が、本理論の大きな特徴です。
■「希望」とはなにか
さて、まずこの「希望」とはなにかについて紐解いていきましょう。
最初に、辞書で調べてみると、希望とはこのように書かれていました。
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きぼう【希望】《名・ス他》
・未来に望みをかけること。
・こうなればよい、なってほしいと願うこと。また、その事柄の内容。
・望みどおりになるだろうというよい見通し。
Oxford Languages
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一方、研究者らが述べる「希望」の定義はこちらです。
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希望とは(a)主体性(目標指向のエネルギー )と(b)経路(目標達成のための計画)の成功感という相互的に導き出された感覚に基づく、積極的な動機づけ状態である
Snyder, Irving, & Anderson,(1991)
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ううん、よくわかりませんね…。なんだか、急に複雑になりましたので、どういうことなのかを続く論文で見ていきましょう。
■希望の三要素
本論文の重要なポイントですが、「希望」とは、以下の3つの相互に関連する要素から構成されると述べます。これを見ると、上記の定義も、なるほどねと感じられるかと思います。
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(1)目標(Goals)
行動の標的となるものです。
価値があり、具体的で、かつ達成にある程度の不確実性を伴う目標が、希望を生み出します。
(2)経路思考(Pathways Thoughts)
目標達成のために「どうやってそこに行くか」を考える力です。
地点Aから地点Bに至るための複数のルートを思い描く認知的能力を指します。
(3)主体性思考(Agency Thoughts)
目標に向かって行動を開始し、維持するための精神的エネルギーです。
「私はこれをやり遂げられる」という自信(自己効力感)を伴います。
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■希望理論のプロセス・モデル
次に「希望理論」のプロセスについて述べていきます。
希望の「目標」に至る道筋の中で、希望の三要素がどのように展開していくかを示したモデルです。以下、図の流れに沿って整理します。
●STEP1:学習の歴史(Learning History)
人は幼少期からの経験を通して、因果関係を理解する力(経路思考)、目標に向かうエネルギー(主体性思考)などを学習していきます。
これまでの目標追求経験の結果は「感情」として蓄積され、新しい目標に取り組む際の「感情(自信・安心感、あるいは不安・無力感)」を形成します。
たとえば、「目標を何度も目指したけど、その度に何度も打ち砕かれてきた」とすると、この「希望」を持ちづらくなるというイメージです。
●STEP2:事前の出来事(Pre-event:分析段階)
まず、「その目標に取り組む価値があるか(結果価値)」が判断されます。
重要だと判断された場合にのみ、精神的エネルギーが投入されます。
この段階では、
・「経路思考(どうやるか)」
・「主体性思考(やれるか)」
が反復的に行き来しながら、目標達成のプランと動機づけが強化されます。
予期しない出来事(サプライズ)は一時的に感情を喚起しますが、高希望者はそれを迅速に目標と経路に結び直します。
●STEP3: 事象の連鎖(Sequence of Events)
目標追求の途中で障害(ストレッサー)が生じます。
・高希望者:障害を「挑戦」と捉え、代替経路を生成
・低希望者:障害を「脅威」と捉え、反芻と思考停止に陥る
目標達成・未達成の結果とそれに伴う感情は、再び学習の歴史へとフィードバックされ、次の希望水準に影響を与えます。
■他概念との比較(楽観主義、自尊心など)
希望理論は他の心理学概念と似ているようで、明確な違いを持ちます。
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<楽観主義(セリグマン)>
楽観主義は「否定的結果」をどう説明するかに焦点を当てます。
一方、希望理論は「肯定的結果」を実現するための主体性と経路を明示的に扱います。
<楽観主義(シェイアーら)>
結果期待(主体性に近い)を重視します。
希望理論では経路思考を不可欠な要素として同等に位置づけます。
<自己効力感(バンデューラ)>
自己効力感は「その状況でできるか(can)」の評価です。
希望理論は、より状況横断的な意志(will)と経路構築を含みます。
<問題解決(ヘップナーら)>
問題解決は経路の発見に強みがあります。
それを動かす主体性の役割は希望理論の方が明確です。
<自尊心>
自尊心は自己価値という「結果的な感情」です。
希望理論は、その感情を生み出す目標追求プロセスそのものに焦点を当てます。
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■主な研究結果
・学業:知能を統制しても、希望はGPAや卒業率を予測
・運動:能力を除外しても、高希望者は成績・継続意欲が高い
・健康:疼痛耐性は高希望者で約2倍、服薬遵守率も高い
・心理的適応:生活満足度・活力と正の相関、抑うつ等と負の相関
・心理療法:主体性+経路で合計1.02SDという非常に大きな効果
■まとめと感想
今回の論文で「希望の3要素」にわけること、またその「希望理論のパス図」を明確にすることで、どうすれば高めることができるのか、が明確になったように感じました。
「目標はある」「やる気もある」「しかしどうすればそこにたどり着けるのかわからない」とすると、「経路が不明」と分析ができます。
そんな風に、希望の三要素を高め、目標に近づくための方法としても考えることができると思いました。
同時に、それを教えてくれる「師」のような存在が、大事なのではないか、と個人的には思いました。
たとえば「師匠」と呼べる人が見つかると、希望の3要素が一気に満たせる感覚もします。
師事することで「目標」についても明確になりやすく、「経路」「主体性思考」の高まりが感じられ、「いける!」と感じる気持ちが高まる。そんなことを感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:56km
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