配信日時 2025/11/18 06:09

読書レビュー『ユング心理学入門』ー第一章 タイプ(その1)ー【カレッジサプリ】

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令和7年11月18日(第4285号)


読書レビュー『ユング心理学入門』ー第一章 タイプ(その1)ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2143字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

さて早速ですが、ユング心理学の第1章について、本日は読み解いていきたいと思います。
第一章は「タイプ」と言うものです(類型論=タイプ論と記述します)。

いわゆるMBTIの原型になったユングのタイプ論というものが、いかなるものなのかについて、河合隼雄氏の説明で外観が述べられています。

タイプの分け方には「感覚」とか「直感」などの言葉が使われますが、これはいわゆる我々が日常で使っている言葉とは異なる意味を持つ概念になっているため、その辺は混乱を招くところがあります。
しかし「タイプ論がいかなるものなのか」の全体図を把握するには、とてもわかりやすい章だと感じました。

ということで、早速内容を見て参りましょう!



■自分の道を求めたユングが「タイプ論」にたどり着く

第一章が「タイプ」となっていますが、それはなぜなのでしょうか?

ユングは夢分析やコンプレックスなど、様々な考え方を提唱しましたが、その理由が、「ユングが最初に関心を持った領域だったから」とのこと。

1907年にフロイトと初めて会ったユング。最初は彼の協力者として道を歩むものの、両者の相違が明らかになり、決別することになっていきます。

決別後、ユングが「自分の道」を求めて苦闘する中で、最初に関心を持ったのが「人間のタイプ」について述べた本でした。
そこから多くの人が知ることになった「内向・外向」というタイプの言葉、そして現代では「MBTI」というタイプ論を元にした心理検査が広く知られるようになるなど、今に続くものになっていきます。

ちなみに、ユングがなぜタイプという考え方に至ったかと言うと、「フロイトとアドラーの違いについての考察」があったそうです。
その心理学の大家のごとき2人は「事象に対する基本的態度(外向や内向)が違っていた」と考えたことから話はスタートします。そしてそれを記述しようと試みたとのこと。

⋯ということで、ユングの代表的な考え方のはじまりがとしてタイプ論だった、とのこと。人に歴史ありですね。



■タイプ論は「人間の分類箱」ではない

タイプ論とは、人間の性格や気質を考え、その中に類型を見出そうとする試みであり、ヒポクラテスの気質論(紀元前460年頃)からクレッチマー、シェルドンなど、長きに亘る歴史的な流れがあります。

MBTI認定ユーザーの資格講座の中でタイプ論を学ぶ中で「なんとも難しく、混乱する」と、やきもきした感情がずっと流れていました。
そして未だにそれを理解できているとはとても言えません。

では、なぜそうしたもやもやが残るのか?

その理由が、この章で説明されている「タイプ論で起こる誤解や批判」を通じて、非常に腹に落ちた感覚がしました。

早速ですが、いくつか印象的だったキーワードを抜き出してみます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「タイプを当てる事は、ある個人の人格に接近するための方向付けを与える座標軸の設定であり、個人を分類するための分類箱を設定するものではないことを強調したい。(P2)」
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そしてタイプ論を初めて読んだ人は、「個人を分類するための分類箱」として、血液型占いのようにA型は几帳面、B型は雑、といった形で人を「箱」に閉じ込めるように扱ってしまいがちだと述べられています。

しかし、そうしてしまうとどうなるのか。

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「(人間が)昆虫箱にピンで止められた昆虫の標本のように、動きを失ってしまって、少なくとも我々心理療法家にとっては役立たないものになってしまう(P3)」
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「動きを失う」などと、述べられているように、人が非常に無機質な扱いになってしまうわけです。当然ながら人は静止したものではない。そして、「完全に内向の人」とか、「完全に外向の人」は正常な人であれば考えにくい、と述べます。

あくまでも「その人の座標軸(基準となるもの)」があり、そこを軸として個人の特性がどんなふうに動くのかを観察するのが重要なのであって、「箱の中に閉じ込める」、つまりレッテル貼りするものではないと述べられています。

しかしながら、“タイプ”という概念は非常にわかりやすいため、多くの場合は分類箱的に扱われがちなのも事実。河合氏も(少なくとも心理療法家にとっては)という補足を入れているので、一般の人が遊びとして使うのは止められないかもしれません。

ただ、人間という奥深い心を扱う上では、それはむしろマイナスになり得る——その点は知っておく必要があるのでしょう。


■タイプと行動は「一対一で対応するもの」ではない

そしてタイプ論の非常に厄介なところは、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人間の基本的態度(外向・内向など)は、外から観察される行動と必ずしも一対一で対応しない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という点です。

例えば、

・内向的態度の人は、人付き合いが悪い
・外向的態度の人は、行動的である

といった、わかりやすい置き換えは必ずしも成立しません。

内向的でも人付き合いが良い人はいるし、外向的でも1人で静かに読書を好む人はいます。
この「態度」と「行動」が必ずしも一致しないところが難しさです。

また、態度を説明しようとすると「行動的」「周りによく話しかける」など行動ベースの表現に寄ってしまうため、内向と外交どちらとも取れる説明になり、「じゃあ自分はどっちなの?」と混乱が生じるわけです。

もともとヨーロッパでは“人間の基本的態度(タイプ論)”を意識や内的体験として捉える文化が強かったのに対し、アメリカでは実験心理学・行動主義の発展により“観察できる行動”を重視する風潮が強くなったそう。この違いがいわゆる「特性論(ある特性の強い・弱い)」で表される特徴となります。

これは「いい悪い」ではなく、哲学的立場の違いが前提にあるとのこと。

やはり人のことを知ろうとすると、この両者の違いは知る必要があるな、と思ったのでした。



■タイプ論には「心の相補性」がある

さらに、タイプ論を難しくしているもう一つの理由として「心の相補性」がある、と述べています。それは、

人間の心には、そのタイプを補完する働きが内在している

ということです。

例えば、

・外向タイプの人は、内向的な働きを心の中に補完として持つ
・思慮深い人が突然感情を爆発させる
・引っ込み思案の人が大人数の前で歌い出す

などがあります。

これは“心の相補性”の現れです。つまり「目立つ行動だけでその人のタイプを判断するのは難しい」ということです。

ただし、この“補完性”を扱うことは心理療法家にとっては非常に価値が高い一方で、行動主義的に切り分けたいアメリカの研究者にとっては扱いにくいものでもある(すなわち、アメリカの影響を受けている日本もそう)、と述べられていました。これも、MBTIをわかりづらくしている要因だそうです。



■まとめと感想

この最初の「タイプ論」のわずか3ページ(!)だけで、あっという間に大変な文字数になってしまいました。
やはり濃厚で深い本というのは、1ページに凝縮されている内容が非常に深いのだと感じます。

MBTIで学んだ多くのタイプ論・特性論に関する誤解が、このページで見事に説明されていて、驚きとともに脳内を強く刺激された感覚でした。
全部読み終わるのがいつになるのだろう、という感じですが、ゆっくり進めていきたいと思います。

ということで、続きはまた次回に続けていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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 【編集後記】
◯今月のランニング:160km

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