配信日時 2025/11/13 18:10

読書レビュー『カウンセリングとは何か』ー第5章 カウンセリングとは何だったのか 終わりながら考えるー【カレッジサプリ】

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令和7年11月13日(第4280号)


読書レビュー『カウンセリングとは何か』ー第5章 カウンセリングとは何だったのか 終わりながら考えるー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2543字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は2件の打ち合わせ。また執筆など。
6kmのランニングでした。

また、夜から沖縄に移動しております。
2年半にわたって続けてきた「沖縄に拠点生活」がこれにて終了になるので、
それらの”お片付け”を含めての移動でした。



さて、本日のお話です。

先日より読書レビューをしてきた「カウンセリングとは何か」について本日も続けます。
本日はいよいよ最終章の「第5章 カウンセリングとは何だったのか? -終わりながら考える」です。

カウンセリングは心の問題を扱うわけですが、ではそれはどのように終わっていくのか、その終わり方のパターンについて整理をし、そして考察をしている章です。

「終わりとは、さみしいことである」「孤立と自立に向き合う」「古い物語を終え、新しい物語を始める」「喪失とは、小さく死ぬこと」。
そんな印象的なキーワードがたくさんある、心がぎゅっとするような、切なさも感じる章でした。いよいよ最後。それでは中身を見ていきたいと思います。


■終わることはさみしい

本書で書かれていたことの中で、印象的だったことが「根源的なさみしさ」がカウンセリングにはあると言うことです。

深い友人や家族にも話さないような非常に深い話をするのにもかかわらず、時間が来たら「はい、終わり」。そして領収書とお金を渡して終わる。この1個1個の「短い終わり」の中に、職業的なやりとりであると言うことが突きつけられる。そこに”さみしさ”が毎回ついて回るわけです。

特にカウンセリングは、人間関係が中心のテーマになります。そこでは人とつながっていたいけれども、そうできない「孤立」のさみしさがついて回る。その中で、カウンセリングで毎回それを経験するわけです。

そこには、終わると言うことは「自立」であるとともに「孤立」も感じる、「他人であることの根源的なさみしさ」を含むと語られています。

「転移」という言葉を前回しましたが、こうした感情を味わうと、カウンセラーに対して「結局あなたのお仕事のために私は通っていたんです!」という自分の”脚本”が色濃くでることもあるようです。(この場合は陰転移)


■カウンセリングの4つの「終わり方」

では、具体的に終わり方にはどんなケースがあるのか、本書では4つの割り方について言及されていました。

特に私が読んでいて感じたのは「ユーザが終わりたいと言った後で、その真意がどこにあるのかによっては安易に迎合はしない」ということでした。

「終わりたいんです」と言う言葉に、ちょっとした戸惑いや寂しさのようなものが感じられるとき。
その時はユーザがまだ自分自身の課題に向き合い切れておらず、それをカウンセラーに対してぶつけていると言う可能性もある。
そういう時は慎重に「なぜ終わりたいのか」と言うことを話し合っておいていく必要があると言うことです。

ゆえに「急に今日で終わります」で終わるのではなく「半年位かけてゆっくり終わっていく」ということが通常であると言うことです。
しっかりと合意しておいていく、心の問題である上で歩行したプロセスがとても大事であるということが述べられていました。

では、具体的にどんなパターンがあるのかを見ていきましょう。


(1)はじまらなかった終わり
これは最初のインテーク面接の段階で終了したケースです。カウンセリングが役に立たなそうだと判断したときに、始まることなく終わる。
別の専門家を紹介することもあれば、初回の面談だけで自分の中で答えがあったことがあぶり出されて「しばらくやってみます」と言うこともあるそうです。

(2)終われなかった終わり
これは「中断」のことです。「来週また来ます」と言いつつ、忙しくなったなどの理由でスケジュールがキャンセルになり、そのまま来なくなると言うパターンです。
カウンセラーとしての失敗を感じざるを得ない場面とも述べられます。中断の理由は複雑で、一言には語れない難しさを含めて、著者の苦悩が現れていました。これだけで一冊の本にできる、とのこと。

(3)終わりなき終わり
頻度を徐々に下げていくことで「自立」の濃度を高めていき、そして最終的に会わなくなっていく。
何かが終わると言う事は「孤立」と言うことを感じるわけなので、それを少しずつフェードアウトしていくようなイメージです。そして「もし何かあった時は連絡してもいいですか?」と言うのはそんな形で終える。
しかしながら興味深いのが、そういうケースで実際にもう一度連絡する事はあまりないそうです。
古い物語はその時で終了し、暖かい記憶になる。そしてもし新しい物語を持った時は、また新たなカウンセラーに相談する。
そんなように古い物語を終えて新しい物語が始まるのです。

(4)終わり切る終わり
冒険としてのカウンセリング、すなわち心の根源的な部分を見ていくカウンセリングは、作戦会議のカウンセリングと違って終わるのは難しいところがあります。
その時に重視されるのが「計画性と徹底性」と言うものであると述べました。計画性とは何月何日に終わると言うふうに日時を決めること。
ちなみに、「キリが悪いところで決める」そうです。今年いっぱいでとか、他のイベントに合わせて終えることを「敢えてしない」。

それは「孤立と自立」と向き合うため。誰かのイベントに合わせて終わりを設定すると、それにより一つの物語を終わらせたと言う決意のようなものを薄めてしまうからであると述べます。
そして終わりが迎えたら、それ以降は一切会わないと「徹底」する。
ここでは「繰り返される脚本に生きている」というユーザーが古い物語を終えて、新しい物語に踏み出していくことを静かに応援していく決意です。
古い物語を終え、新しい物語を始めると言う事は「喪失」を意味します。小さく死ぬこと。
そのために「別れ」を強く意識させる。そこには寂しさも痛みも伴います。でもやらなければならない、と言うカウンセラーの覚悟のようなものも感じる終わり方である。私にはそのように感じられました。


■まとめと感想

すべての章を読んできて、まさに「1つの物語が終わった」そんなような独特の読後感を得ています。

本でこういった読後感を得られるのは少なく、著者が20年間かけて向き合ってきた「心とは何なのか」「カウンセリングとは何なのか」と言うことを、一般の人がわかるように本気で伝えてくれた、極めて希少な本であると感じました。

この本に出会えてよかったな、とつくづく感じています。そして著者の東畑さんを始め、関わられた多くの方に、陰ながら感謝と敬意を送りたいと感じた次第です。少しでも多く届きますように。そんなことを願っております。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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 【編集後記】
◯今月のランニング:112km

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