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令和7年11月12日(第4279号)
読書レビュー『カウンセリングとは何か』ー第4章 冒険としてのカウンセリング ー心を揺らすー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3358字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は2件のアポイント。また12kmのランニングでした。
先日より続けてきた読書レビュー『カウンセリングとは何か』について、本日も続けていきたいと思います。
本日は「第4章 冒険としてのカウンセリング ― 心を揺らす」です。
この章ですが、、、とにかくすごかった。
タイトルにもある「心を揺らす」という言葉ですが、そういう意図ではないとわかってはいるものの、私の心も揺れました。いろいろな感情や思考が駆け巡ると、言葉にできない感覚に襲われますが、まさにそんなイメージ。
「人生が死んでいるように感じる」。
そうした生きづらさに向き合い、その根にある本当の問題を探っていくという章は、生きるということの重たさを知ることでもありました。
本章においては、カウンセラーに対する「転移」(=人生で繰り返される脚本のようなものをカウンセラーに投影すること)を積極的に活用する精神分析的なアプローチが取られます。
とはいえ、カウンセラーも人間である以上、その劇場の中にカウンセラー自身もある意味で巻き込まれながら、クライアント(ユーザー)の心と向き合い、治療を進めていく。
ある意味で、カウンセラー自身が自分の心の一部をあえて侵食させながら進める――その覚悟と知性に圧倒されるような章でした。
それでは早速、この章で語られていたことを見ていきたいと思います。
それでは、どうぞ!
■「生きづらい」は贅沢な悩みなのか
「冒険としてのカウンセリング」とは、『実存』の問題を扱うものです。
対して『生存』とは、生活が壊れそうになったときにそれを対処すること。これは「作戦会議としてのカウンセリング」の範囲です。
『実存』とは「いかに生きるか」という問いに向き合うことです。人生が行き詰まり、ちゃんと生きている気がしない、無理をしている気がする、何かおかしい。このままでいいのかと感じるーーそのときに必要なのが、冒険としてのカウンセリングです。
本書では、こうした悩みを「贅沢な悩み」として批判的に見る声が、臨床心理学の中にもあったと紹介されています。元々経済的な豊かさがあった1970-80年代には「心の時代」として実存が注目されていましたが、2000年以降の停滞と格差の拡大により、「どう生き延びるか(生存)」のほうに焦点が移り、心の問題は後回しにされてきました。
それでも、「何のために生きているのか」「どう生きるのか」という苦悩は、いつの時代にも存在します。だからこそ、冒険としてのカウンセリングが必要である、そのように始められます。
■「冒険としてのカウンセリング」とは何か?
まず、このカウンセリングのルーツはフロイトにあるとのこと。
フロイトは「精神分析」という方法を編み出した人です。
本書は、「鎧とスライム」という比喩で、人の心を説明しています。
人が誕生したとき、心はドロドロした無意識のスライムのような存在。柔らかく、傷つきやすく、暴走しやすい。だからこそ成長とともに「鎧」を身につけていきます。
これは社会で生きるために必要な防御反応です。
しかし、幼少期のトラウマや暴力などの「破局的な体験」によって、その鎧が過剰に厚くなったり、心のスライム(柔らかさ)を凍結させてしまうことがある。
つまり「生き延びるために心の一部を殺さざるを得なかった」状態です。これが「生きづらさ」「自分じゃない感じ」に繋がります。
そこで必要なのが、鎧を少しずつ緩め、凍ったスライムを再び生き直すという二つのプロセス――それが冒険としてのカウンセリングです。
▽▽▽
この過程では、1週間に1度など高頻度で半年から数年以上の時間をかけて面談が行われます。
その中で、愛憎や嫉妬、依存といった感情を再び経験しながら、スライムとしての柔らかい自分を取り戻していくとのこと。
ユング心理学では、夢や箱庭、絵画、遊びなどがスライム(無意識)を表す手段として活用されると述べられています。
■冒険としてのカウンセリングを必要とするとき
冒険としてのカウンセリングが必要になるのは、主に次の3つの場合です。
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1.慢性的な症状
長年続く生きづらさを本人も自覚しているが、根本的に変えられず不自由を感じている。
(例:対人緊張が強い、常に不安であるなど)
2.親密な関係の不全
家族や恋人など、人生を共にする他者との関係に危機がある。あるいは、そうした相手がいない孤独に苦しむ。
(例:夫婦間の断絶、子どもを愛せないなど)
3.自分への違和感
他者ではなく自分とのつながりに問題がある。
仕事も家庭もこなしているが、生きている感じがしない。偽りの人生を生きているように思える。
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これらはいわゆる「中年の危機」にも近いものです。社会的には問題にならなくても、本人にとっては深い実存の問題です。
さらに、この冒険のカウンセリングが有効であると判断するには、
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・生活の安定(経済的・家庭的に土台があること)
・古傷の存在(過去の痛みが今の生き方を縛っていること)
・死と麻痺の気配(心の一部が凍っている感覚があること)
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――この3つの要素をカウンセラーが見極めます。
現代は「生きていけるならそれでいい」という空気が強い時代ですが、その裏で多くの人が心を麻痺させ、他者に冷たくなってしまっている。
この指摘が非常に印象的でした。
■冒険としてのカウンセリングで行われること
まず「インテーク面接」の後に、アセスメント面接が行われます。
これは5〜6回にわたって生育歴を丁寧に聞いていくプロセスで、人間関係のパターン(人生の脚本)を見出していきます。
その上で、契約面接によって、今後どの問題に取り組むかを双方で確認し合い、安全な土台をつくります。
続いて行われるのが、精神分析的カウンセリングです。ここで中心となる概念が「転移」です。
父親を憎んでいた人がカウンセラーを憎む、母親を愛していた人がカウンセラーを愛する――そうした感情の置き換えを通じて、過去の脚本を再演し、心の未発達な部分を再び発達させていきます。
カウンセリングの鍵は、「自由連想」。心に浮かんだことを抑えずに語り、カウンセラーがそれを「解釈」していく。
クライアントとカウンセラー、それぞれの物語が並行して進み、ぶつかり、共鳴する中で、心が揺れていくこの過程そのものが「冒険」となります。
著者は、冒険としてのカウンセリングを「演劇」のようなものだと表現します。鎧を緩め、凍結された物語を再起動させる。その中で様々な感情が動き出す――それが「転移」です。
カウンセラーはその転移を受け止め、共に物語を演じ直していきます。
■冒険としてのカウンセリングの進行プロセス
さて、そうした精神分析を通じてカウンセリングは進行しますが、この言葉にできないドロドロしたプロセスにこそ、凄みがあります。
この迫力たるや⋯。胸がぎゅっとされるような、そんな物語に繋がっていきます。
とはいえ、どのような流れでカウンセリングが進行するのか、著書では以下の4つのプロセスを紹介しています。
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1.晴れの船出(信頼関係の構築)
2.雨雲が集まる(転移の発展)
3.嵐の夜(破局の危機)
4.凪いだ朝(心の再発達)
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この4つのプロセスを経て、心は少しずつ変化していきます。
これがどういう意味なのかは、本書をぜひお読みいただきたいです。
個人的に、この章の、この物語は、ぜひ読んでいただきたい。一見強く見える人間でも、人間とは、こういうところがあると深く感じることができる、そんな章のように思いました。
そして何より、こうした心の冒険に伴走するカウンセラーという職業に、心から敬意を抱きます。一見強く見える人ほど、心の奥にスライムのような柔らかさを抱えている。そのことを深く思い知らされる章でした。
■まとめと感想
ここまでで、本書の約8割を読み終えたことになります。
残すは「カウンセリングをどう終えるか」です。
それでもすでに、カウンセリングの世界観とプロセスの全体像が見えてくる素晴らしい内容でした。
「カウンセリング=怪しい」「とっつきにくい」という先入観が、いかに表面的なものだったかを痛感します。
「冒険としてのカウンセリング」は、誰にとっても人生のどこかで必要になる。そう感じさせられました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:112km
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