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令和7年11月10日(第4277号)
「アートからの学びを考えるワークショップ」に参加して思ったこと
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2546字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日に日曜日は、執筆活動。
雨でしたが、途中で止んだので21kmの一人ハーフマラソンを行い、
4分11秒ペースで走ることができました。(今のところの自己ベスト)
とはいえ、まだまだ鍛えられるところが見つかってきたので
こちらもマラソンシーズンに向けて、頑張りたいと思います。
*
さて、本日のお橋です。
先日の週末、東京大学で開催された、グラフィックレコーディングの研究者の仲沢実桜さんらによる
「アートから生じる学びを考えるワークショップ」に参加させていただきました。
タイトルからなんとも面白そうなワークショップ。身体を使ったり、踊ったり歌ったりはありましたが、「アート」は初めてで新鮮かつ面白い体験でした。
ということで、今日はその体験からの学びについて、思うところを書いてみたいと思います。
それでは、どうぞ!
■「手段」としてのアートが流行っている
近年、「アートがビジネスに活きる」という言説が流行っているように見えます。
山口周さんの著作(『なぜ世界のエリートは美意識を鍛えるのか』等)などを通じて、「アートを学ぶことで物事の見方の解像度が高まる」とか、「歴史的思考が鍛えられる」「着眼点が磨かれる」──そんな考え方が広がってきた印象があります。
わかる、わかるよ!と共感の声が集まるものの、正直なところ、「確かにそうだよね」と、浅いところで終わっている感覚もなくもない。
そこからもう一歩進んで、「アートからの学び」を深めることは、依然できていないような気がします。
では「なぜアートが難しいのか?」を考えてみると「自分がどう感じるかと問われても、浅い感想しか出てこない」こともあるようです。
私は美術館とは縁遠い人間です(憧れはあるものの)。最近はオーケストラなど音楽の面白さを少しずつ感じられるようになってきましたが、まだまだ経験も知識も浅いと感じます。
一方で、デザイナーでもある妻は「もっと気軽に、『きれいだな』『なんか好きだな』くらいで楽しめばいいんだよ」と言います。
しかし「きれいだな」「丁寧に作られているな」「いつ誰が描いたんだろう」といった浅い感想しか浮かばず、作品の背景や時代性、他の作品との比較といった「アートを見るための枠組み」が自分の中に少なすぎる中で、本当に「アートから学んでるとか、活かしている」といっていいのだろうか⋯。
そんな疑問もあり、今回はこの「アートから生じる学びを考えるワークショップ」に参加してみたのでした。
結論から言えば、非常に考えさせられると同時に、まだすっきりしない部分も残る──そんな、アートの奥深さを探る時間になりました。
■「アート」を通じて人は何をしているのか
2時間のワークショップではまず、「アートとは何か」「人はどのように表現し、どのように受け取るのか」といった“アートを通じたコミュニケーションの構造”が、論文を通じて紹介されました。
アーティスト(表現者)は、「何らかの意図」を持って作品を生み出します。芸術の創造です。アートとは絵や音楽、舞踊など、具体的な形を持つ表現のこと。
一方、見る人(鑑賞者)はそこから新しいアイデアを得たり、自分の視点で意味を読み取ったりします。芸術の鑑賞です。
「見る・感じるというプロセス」と、「考えるというプロセス」を行き来しながら進む、また見ることで新しいアイデアが生まれたりと、アートを通じたコミュニケーションが生まれていく。
ファシリテーターの研究者の方は、あるアーティスト同士の会話として、「ざっくり切られた三角形を見て、お互いが『何か重厚なものを感じる』『ああ、そうだね』と共感し合う不思議なやりとりがある」と紹介されていました。
ただ、初学者にはハイコンテクストすぎて理解が難しかったりもしますが、あれが「アート・コミュニケーション」なるものだそうです。
ちなみに、アートに親しんでいる人(アーティスト)は抽象的な作品を好む傾向があり、経験の少ない人は写実的で明確なものを好む傾向があるとのこと。なんだかよくわかる気がします。
■アートワールドに置かれると「アート」になる
表現者と観察者のやりとりが生まれるとしても、それが「アートである」という文脈に置かれていなければ、アートとして成立しません。
たとえば道路の信号機や標識は、通常は「アートワールド」に置かれていないため、アートとはみなされません。
しかし、便器に「泉」というタイトルをつけて美術館に展示すれば、それはアート作品として評価される。1917年のマルセル・デュシャンという美術家の作品です。
つまり、「意味づけを与えることでアートとして成立する」という、非常に奥深い世界があるようです。
何とでも言えるやんけ!と言えそうですが、そういう新規性も含めて、アートだそうです。
いずれにせよ、「文脈を含めて」「具体的なモノに対して」「それを表現&解釈し」「認識をしていく」というステップがアートなようです。
そういう意味では、これまでのアートの流れを知っている人同士だと「アートだね」とコミュニケーション出来る話はあるのでしょうが、あまり馴染みがない人だと、わかりやすい絵を見て「アートだね」とな理想だな、とも感じるのでした。
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1917年 マルセル・デュシャンの泉
https://logmi.jp/knowledge_culture/culture/162760
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■カードゲームから「アートから生じる学び」を考える
さて、こうしたアートの見方を学んだうえで、いよいよワークショップ本編です。
内容は「DiXit(ディクシット)」というカードゲームを通じて、抽象的な絵をどう意味づけ、どう解釈するかを体験するものでした。
このゲームのカードには、「どんなふうにも取れるような抽象的な絵」が描かれています。
ゲームのルールはこんな感じです。
6人のプレイヤーのうち1人が、その絵について自由に説明をします。単語でも、物語でも、歌やジェスチャーでも構いません。
ただし、その説明があまりにも具体的だとアウト。例えば「右上に人が3人いて…」などと細かく説明すると、全員が正解してしまい、得点になりません。
他のプレイヤーは、その説明に合いそうな別のカードを出し、全員のカードを混ぜて並べます。誰のカードか分からない状態で投票し、正しく推測されるとポイントが入る──そんな仕組みです。
(まあわかりづらいですが、やってみるとなるほどね、となります)
ポイントは「抽象的な絵をどう説明し、他者がどう解釈するか」を楽しむゲーム。まさに先程の「アート・コミュニケーション」です。
自分の説明が独創的すぎると誰も共感できず、かといって具体的すぎるとゲームが成立しない。
微妙なバランスの中で、相手の背景や価値観を想像しながら選ぶ必要があります。
この構造がとても興味深く、参加者それぞれの文化・教育・経験・職業・趣味といった文脈が説明や解釈に表れていました。
結果として、「同じものを見ても、まったく違う世界が立ち上がる」ということを体感しました。
■「解釈の正解」が人を窮屈にさせる(のかも)
このワークを通して改めて感じたのは、初対面の人たちが、事前情報なしで同じものを語り合っても、「意見が一致することもあれば、まったくずれることも多い」ということです。
これはアートにおいて、どう解釈するかは、幅広い可能性を持つことと同じように思えます。
アートとは、表現者と鑑賞者の間に、どれだけ共通のコンテクストを共有できるかに左右されますが、それは熟練者(アーティスト)と初心者では大いに異なりそうです。
一方、相手の意図を読み取るのが得意な人もいれば、なかなか寄せられない人もいる。
そして怖いのは、全然うまく相手の考えを推測できない人、言葉にできない人、そして得点が入らなかった人が、なんだか「空気を読めない人」という印象を持たれてしまう可能性も感じました。
これはアートに対して見当違いな解釈を素直にすると「わかってねえな」と思われそうな不安に通ずる気もします。
「自由に解釈していいよ」といいながら、解釈の正解があるようで「やっぱりどこかで自由ではない」と感じるのと似ているなと。解釈の正解が暗にあることで、人は窮屈さを感じます。
ただ、「解釈の正解」ではなく、「解釈の理由」に光をあてて、その違いを素直に見つめ、語り合えると、少なくともお互いの事をしる事ができるコミュニケーションになるとは思いました。
チームビルディングの観点からも、こうした「違いを通じた対話」は非常に有効だと感じます。
ということで、抽象的でまとまりのない話になりましたが、新しい視点を得られた、とても面白い体験でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:99km
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