配信日時 2025/11/08 17:26

読書レビュー『カウンセリングとは何か』ー第3章 作戦会議としてのカウンセリング ー現実を動かすー【カレッジサプリ】

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令和7年11月8日(第4275号)


読書レビュー『カウンセリングとは何か』
ー第3章 作戦会議としてのカウンセリング ー現実を動かすー



株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2657字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は朝から12kmのランニング(インターバル走)。
その他、コーチング他3件のアポイントでした。
また書籍の執筆など。



さて、本日のお話です。

先日に引き続き、『カウンセリングとは何か』の読書レビューをお届けしたいと思います。本日は「第3章 作戦会議としてのカウンセリング ― 現実を動かす」です。

前回までは、いわゆる初診である「インテーク面接」において、クライアント(以下、ユーザー)とカウンセラーが合意形成を行うところまでを扱っていました。今回の章では、いよいよ実際のカウンセリングが始まります。

読んでいて驚いたのは、カウンセラーがユーザーに提案をするとき、その背景にこれほどまでに網羅的で構造化された枠組みがあるのか、ということでした。「現実を動かす」ためのカウンセリングの精緻なアプローチに、思わず唸らされました。それでは、内容を見ていきましょう!



■「生存」と「実存」のどちらを目指すのか

インテーク面接では、ユーザーの状況が「緊急性を要するもの」なのか、それとも「時間をかけて取り組むべきもの」なのかを見極めるアセスメントが行われます。

そして、火急的に現実へアプローチしていく「作戦会議としてのカウンセリング」。そして、心の奥深くを見ていく「冒険としてのカウンセリング」という二つの形があると述べられていました。

では、どちらから入るのかという見極めにおいて、メタ理論としてのフレームとして掲げられていたのが、「生存」と「実存」という考えでした。

「生存」とは、困難な状況の中で生き残ること。

「実存」とは、その人らしい生き方――つまり、限りある世界の中で「どのように生きるのか」という価値観や人生観に関わることを指します。

以前、ある臨床心理士の方がこう話していました。

「人は災害などの緊急時には、まず目の前の痛みをなんとかしてほしいと思うものです。『自分らしく生きたい』という問いは、その後にやってくる。トイレも食事もない状況であれば、まずそれを整えてほしい――それが人間なんですよ」

まさに、その話と重なります。生活は物理的・身体的・経済的なものであり、日常が危機的な状況にあるとき、その破局の脅威からまず守ること。
そのための介入が「作戦会議としてのカウンセリング」です。

一方で、「冒険としてのカウンセリング」は、「何のためにいきるのか」「自分とは何者か」などの問いを含めて、自分の物語を紡ぎ直す試みです。

この二つの関係を、著者は「二つの国」として比喩的に描きます。

沿岸沿いにあるのが「作戦会議としてのカウンセリングの国」。
その奥の山岳地帯にあるのが「冒険としてのカウンセリングの国」。海から入って、国の奥地へ訪れる。

この順番が大事で、その比喩が印象的でした。



■「作戦会議としてのカウンセリング」で行うこと

「作戦会議としてのカウンセリングは、生活を立て直し、生存を確保するためにある。つまり『現実を動かすため』にある」。

これがどういうことかというと、眠れない、食べられない、会社や学校に行けない、対人関係で暴力に遭っている⋯などなどです。そうした喫緊の“生活の破綻”をまず立て直すことが、「現実を動かす」ことになります。

そして、そのための介入には次のような方法が示されていました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
A. バイオロジカルな介入(生物学的介入)
→ 身体を整える(薬や休養、運動などを含み、物理的に身体に影響を与えていく介入を意味する)。そのための介入として
1.医療の活用、2、休養のすすめ、3、運動と生活リズムの回復
などを提案する含まれる。

B. ソマティックな介入(身体感覚的介入)
→ 「主観的なからだ」に働きかける(五感・感覚のレベルであるところが「身体」との違いである)。頭が重い、胸がドキドキするなどがこれに当たる。そのために
1.からだへの配慮(早く寝る、美味しいものを食べる、軽い運動をする)2.記憶への対処(トラウマ対応。氷を握るなどで“今ここ”に戻す)

C. サイコロジカルな介入(心理的介入)
→ 心の内側に変化を起こす(本章では語られていない))

D. コグニティブな介入(認知的介入)
→ 自分と世界の境界を変える。視点を変えること。コグニティブ=認知的という意味。たとば、「自分を傷つけた相手にも、同じように痛みがあった」と感じられるようになることなど。

E. ソーシャルな介入(社会的介入)
→ 世界そのものを変える。家族・学校・職場・行政などに働きかけ、環境を調整する。社会的支援を増やすなど。以下の介入の種類がある
・引き算:暴力など危険を減らす。
・足し算:ケアを増やす(経済的・生活支援など)。
・掛け算:人とのつながりを増やす。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして、介入の原則は「外側から内側へ」行っていきます。具体的には、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・STEP1:現実を整える(A.ソーシャルな介入、E.バイオロジカルな介入)
・STEP2:現実と付き合う(B.ソマティックな介入、D.コグニティブな介入)
・STEP3:心を揺らす(C.サイコロジカルな介入)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

の順で行っていくのがセオリーです。つまり、身体や環境の調整を先に行い、そのうえで心の深部に入っていくとのこと。

そして、カウンセラーは、ユーザーがリングで戦うボクサーだとしたら、そばにいるセコンドのように、戦場の状況を冷静に見極め、助言を与えるような関わりをするそうです。
ユーザーは次のラウンドでその助言を実行し、結果を報告し、二人で振り返って次の手を考える。まさに“作戦会議”のように、現実を一歩ずつ動かしていくとのことでした。



■まとめと感想

心理学的な介入にはさまざまな流派がありますが、それらを体系的かつ理論的に整理し、実践の枠組みとして提示している点に、深い感銘を受けました。

特に本書のすばらしさは、実際のカウンセリングのケースが描かれていることです。

ここでは詳細を省きますが、「カナタさん」という登場人物――仕事の悩みからソーシャルゲームに重課金し、借金を抱え、眠れなくなってしまった方―の事例を通して、どのように介入が行われるのかが示されます。

経済的・身体的な危機に直面したとき、何からどう始めるのか。そのプロセスが“種明かし”的に展開されていく構成は、まるで小説のように引き込まれます。(ぜひ本書を読んでみてください)

そして、作戦会議としてのカウンセリングを終えたあと、次に訪れるのがついに「冒険としてのカウンセリング」です。心の深層へと進む旅路への期待が、膨んでおります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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 【編集後記】
◯今月のランニング:73km

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