配信日時 2025/11/06 21:23

読書レビュー『カウンセリングとは何か』ー第1章 カウンセリングとは何か 心に突き当たるー【カレッジサプリ】

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令和7年11月6日(第4273号)


読書レビュー『カウンセリングとは何か』
ー第1章 カウンセリングとは何か 心に突き当たるー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2746字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、リーダーシップのコーチング3件の実施でした。
その他、12kmのランニングなど。



さて、本日のお話です。

「これは、絶対にじっくり読みたい!」と思う本に、しばしば出会うことがあります。一回だけで感想を書くのはもったいなさすぎる、というくらいの濃密な一冊だったりします。

そんな本として、東畑開人氏の最新の著書『カウンセリングとは何か 変化するということ』がまさにそんな本に当たります。

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『カウンセリングとは何か 変化するということ (講談社現代新書 2787)』

東畑開人/著
https://amzn.asia/d/79Celm3
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『居るのはつらいよ』『野の医者は笑う』など、臨床心理士という、日常生活からはなかなか見えづらい領域を、鮮やかかつユーモラスな筆致で描いた著者による本書。そのタイトル通り、「カウンセリングとは何か」という問いに迫る一冊です。

誰もが「カウンセリング」という言葉を耳にしたことはあるものの、その実態については意外と知られていません。
そんな中で、本書はカウンセリングの全体像を一般の人にも分かるように解説しており、非常に濃密な内容です。

ということで、今日から章ごとに読み進めながら、その内容と学びを共有していきたいと思います。
本日は「第1章 カウンセリングとは何か ー心に突き当たる」からご紹介します。

それでは、どうぞ!



■カウンセリングはあやしいもの?

「カウンセリング」という言葉を聞くと、どこか“あやしい”という印象を持つ人も少なくありません。

その理由として、著者は「カウンセリングは誰でも日常的にやっていることだから」と述べます。人の話を聞き、悩みを解消するようにサポートする――それ自体は私たちが普段から行っている行為です。

だからこそ、それを“お金をもらって行う”ということに違和感を覚える人がいる。あるいは、どのような理論に基づいて行っているのか分かりにくく、宗教や占いのような「なんとなく怪しい」印象を持たれがちだと指摘します。

カウンセリングは身近に存在しながらも、どこか胡散臭く感じられてしまう。本書は、そんな認識への問題提起から始まります。

著者はここで、「臨床心理学に基づいた専門的なカウンセリング」を中心に、歴史的なつながり(縦糸)と、さまざまな手法・学派(横糸)を整理しながら、その全体像を説明していきます。

また、「心理療法」「精神療法」といった紛らわしい用語の違い、「臨床心理士」と「公認心理師」という2つの資格の関係、さらには「臨床心理士」と「精神科医」の違い(精神科医は脳を扱い、薬を用いることができる専門家である)などにも触れられています。



■カウンセリングにも「学派」がある

カウンセリングには複数の“学派”があり、それぞれのカウンセラーが異なる理論や訓練を背景に活動しています。主な学派は次の4つです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⑴ 力動学派
 無意識という心の深層を扱う。フロイトの精神分析に端を発し、アドラーやユングなどがそこから独自の学派を形成した。

⑵ 認知行動学派
 無意識のような見えない領域を扱う精神分析に対し、観察可能な「行動」を重視。行動療法から発展し、現在の認知行動療法(CBT)につながった。

⑶ 人間性心理学派
 人と人との出会いに治療的価値を見出す。専門中心主義に陥った従来の療法を批判し、「人間らしさ」を回復しようとする流れ。
 一般的に「カウンセラーとは話を聞く人」というイメージは、この系譜からきている。

⑷ システム論学派
 心という内面ではなく、外部の人間関係に問題の根を見出し、関係性を変化させようとする。家庭療法などが代表例。
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余談ですが、これは現在の人材開発や組織開発にも似ていると感じます。
たとえば、パーソナル・コーチングでは「個人」に焦点を当てます。その中でも、幼い頃の記憶(無意識)的なところにフォーカスをする流派もあれば、成し遂げていきたいことにフォーカスをする流派もあります。
一方、システム・コーチングでは「関係性(システム)」に焦点を当てます。
どこに課題を見出すかによってアプローチが異なるのは、上記でいう、力動学派、システム論学派の違いにもにていると感じさせられます。



■カウンセリングの「メタ理論」ー医療人類学

多様な学派が存在する中で、著者は「カウンセリングとは何か」という“共通構造”を見出そうとします。

ここで登場するのが、「医療人類学」というメタ理論です。
医療人類学とは、さまざまな治療法を比較・検討し、その共通構造や差異を明らかにする学問とのこと。
著者は「カウンセリングの各学派に共通する要素を抽出すること」を、本著書での狙いとしていると述べます。その結果として導かれる定義が、次の一文です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
カウンセリングとは、心の問題で苦しむ人を心理学的に理解し、それに即した心理学的介入を行う専門的な営みである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

また、カウンセリングは「心の非常時」を扱う営みであるとも述べています。つまり、当事者が周囲から理解されず、孤立・孤独の中で悪循環に陥ってしまうような状態です。そうしたときにこそ、カウンセリングという専門的支援が必要になります。

通常であれば、友人との対話や生活の工夫で心のバランスを保てるかもしれません。しかし、それが難しくなったとき、人は医療や専門職、あるいは地域の民俗的セクター(たとえば沖縄のユタのような存在)に助けを求める――そう著者は説明します。

それらの専門性や民間、人間関係からのカウンセリングの「ヘルスケアシステム」の全体像も示されていたのも興味深いものでした。



■カウンセリングのテーマとは?

では、人はどのようなときに「カウンセリング」を活用するのでしょうか。著書では、心が苦しくなる原因は、大きく4つに分類できるといいます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1,症状の悩み(例:疲労感が抜けない)
2,不適応の悩み(例:不登校)
3,人間関係の悩み(例:相続問題)
4,生き方の悩み(例:自分らしさを見失う)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

人はまず、こうした問題に対して友人に相談したり、生活を変えてみたりと自力で対応しようとします。外部環境を変えてみたり、自分自身の生活パターンなどを変えたり、色々と試してみる。

しかし、どうにも解決できないとき、「心」という領域が姿を現す。自己や環境ではなく「心そのもの」がテーマとなるとき、カウンセリングの出番がやってくるのです。それを「自己ー心ー世界モデル」と述べており、そのような構造になっているのかと納得するものでした。



■まとめと感想

第1章だけでも、非常に濃厚で、カウンセリングにまつわる構造と背景が凝縮されていました。こうした全体像は、深い専門知識を持つ人が、丁寧に言葉にしてくれるからこそ理解できるものです。実にありがたい著書です。

今まで知らなかった「カウンセリング」というものが少しだけ垣間見えた気がしました。そして、次章からは、実際にカウンセリングの現場でどんなことが行われているのかが語られていきます。ということで、明日以降も続けてまいります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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 【編集後記】
◯今月のランニング:61km

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