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令和7年10月10日(第4246号)
「自分で思う強み」と「テスト結果の強み」はどれくらいズレるのか? ー論文レビュー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3483字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、強み本の執筆など。
また妻が実家に帰っている中で、
子どもがインフルエンザで発熱とのことで、急遽お迎えにいっていました。
現在、保育園などでも流行っているようですね、皆様お気をつけください。
その他、夜は10kmのランニング。
4分10秒/1kmで走れるようになりました。
成長を感じております。まだまだ、頑張ります。
*
さて、本日のお話です。
本日は、強みに関する論文レビューをお届けしたいと思います。
今日の論文は「性格の強み」研究の第一人者であるニーエミック博士による最新の論文です。テーマは、「自分で思う強みとテスト結果の強みは、どれくらいズレるのか?」というものです。
もっといえば、強み診断テストの「VIA-IS」の受験者30,000人以上の大規模データを基に、テスト結果で選ばれた上位の強みと、自分で「これだ」と申告した強みを比較し、その乖離の傾向を明らかにしたという内容です。
結論を言ってしまうと、「テスト結果と自己申告の強みは、上位5つのうち平均で約2つしか一致しない」という事実がありました。また、過小評価されやすい強み、過大評価されやすい強み、あるいは文化的な傾向などが、大規模データとして明らかにされています。
自己理解とは、やはり一筋縄ではいかないものだなぁ、と改めて感じた論文。ということで、早速中身を見てまいりましょう。
それでは、どうぞ!
■今回の論文
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・タイトル:| Discrepancies in Signature Strengths Identification: Insights from Self-Nomination and VIA Assessment Across a Global Sample (特徴的強みの同定における乖離:自己申告とVIA評価の国際比較からの洞察) | |
・著者: Piotr Bialowolski / Ryan M. Niemiec (最終著者)
・掲載誌・出版年: Applied Research in Quality of Life, 2025年
・第一所属機関: Harvard T.H. Chan School of Public Health, Harvard University |
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■研究の背景と目的
・まず、この論文で取り上げられている「特徴的強み(Signature Strengths, SS)」とは、その人のアイデンティティに深く関わり、自然と、そして頻繁に使われる性格的長所のことを指します。
・従来、このSSを特定する方法としては、VIA-IS(VIA Inventory of Strengths)という心理テストで高スコアだった上位の強みをSSと見なす方法が主流でした。一方で、「自分でこれこそが自分の強みだ」と申告する方法も存在します。
・本研究は、この「VIA-ISによる強み(VIA-SS)」と「自己申告による強み(S-SS)」の間にどれほどの乖離(ズレ)があるのか**、そしてその**乖離に影響を与える要因(個人の属性や文化的要因)**は何か、という点に焦点を当てています。
■研究の方法
・データ収集:VIA InstituteのWebサイト上でオンライン調査を実施。
・サンプル:142か国、18歳以上でVIA-IS(96項目)を完了し、さらに24の性格的強みから5つを自己選択した31,527名。
・測定と分析:VIA-ISによるスコアの上位5つ(VIA-SS)と、自己申告で選ばれた5つのSS(S-SS)を比較。相関係数や順位差、そして乖離に影響を与える要因を統計的に分析しています。
■研究の結果
◎わかったこと⑴:一致率は平均2.1個
・S-SS(自己申告)とVIA-SS(テスト結果)が一致したのは、平均して「2.1個」だったそうです。上位5つのうち、約2つしか共通していなかったというのは、「自己認識」と「心理測定的な結果」の間には、想像以上に大きな隔たりがあることを示しています。
さらに、強みによって過小評価されやすいものと過大評価されやすいものの傾向が、鮮明に浮かび上がってきました。
◎わかったこと⑵.過小評価されやすい強み
「テスト結果上位でも自己申告では見落とされがちな強み」は以下でした。
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・公平さ(Fairness)
・審美眼(Appreciation of Beauty & Excellence)
・慎み深さ(Prudence)
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これらは、VIA-ISでは上位に来やすいにもかかわらず、自分で「これが私の強みだ」とは認識されにくい傾向にあったようです。「審美眼」や「慎み深さ」などは、当たり前すぎて強みと意識されない、あるいは地味で目立たないと感じられているのかもしれませんね。
◎わかったこと⑶.過大評価されやすい強み
「自己申告では高評価でもテスト結果では低スコアの強み」は以下のものでした。
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・忍耐力(Perseverance)
・創造性(Creativity)
・勇敢さ(Bravery)
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これらは自分で「ある」と思いがちですが、客観的なテスト結果としては必ずしも高スコアではない傾向が見られました。特に「創造性」や「勇敢さ」は、社会的な望ましさや自己イメージの理想が反映されやすいのかもしれません。
◎わかったこと⑷:一致しやすい強み
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・謙虚さ(Humility)
・ユーモア(Humor)
・判断力(Judgment)
・リーダーシップ(Leadership)
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これらの強みは、自己申告とテスト結果の評価が比較的、一致しやすい傾向にあったとのこと。特に「リーダーシップ」などは、社会的な役割や発揮機会が明確なため自己認識と客観的な測定のズレが少ないのかもしれません。
▽▽▽
その他、「文化や性別による影響」もありました。たとえば、
・個人主義が高い国では、精神性(Spirituality)や希望(Hope)が過大評価され、リーダーシップ、誠実さ、学習への愛は過小評価される傾向。
・女性は、「愛情(Love)」や「親切心(Kindness)」を特徴的強みとして自己申告する傾向が強く、VIAとの乖離も大きい。
「個人主義の国で精神性が過大評価される」というのは、自己の内面に深く目を向け、自分自身で「意味」や「目的」を見出そうとする傾向が反映されているのかもしれません。
■考察:自己理解は「併用」で深まる
論文の考察では、この乖離があるからこそ、それぞれの測定方法に利点と限界があると述べられています。
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自己申告は、個人の主観的認識を反映しやすいが、バイアスも含まれやすい。
VIA-ISは、心理測定的に妥当だが、自己認識とずれる可能性がある。
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だからこそ、結論として「両者の併用によって、より正確かつ個別化された強みの把握が可能となる」と示唆されています。自己認識と客観的なデータ、両方の視点を持つことの重要性を強く示しています。
■まとめと感想:テストは「始まり」である
この結果を見て、改めて「自己理解というものは、やっぱり単純ではないな…」と、率直に思いました。
もしテストを受けて、その結果を鵜呑みにするだけで自分のことがわかれば、確かにラクです。今回の論文が明らかにしたように、テスト結果で示されたものと自分で思う強みというのは、やはりある程度ズレるようです。
自分で見る自分には、社会的な望ましさや客観性を欠いた、主観的なバイアスがどうしても含まれてしまいます。一方、テスト結果は心理測定的には妥当だとしても、自分の中で「よくわからないなぁ」「ピンとこないなぁ」となってしまえば、その結果を腹落ちさせて受け取ることは、なかなか難しいものです。
そういう意味では、当然といえば当然の結果なのかもしれません。
つまり、テスト結果を手にしながら、一方ではそれを時に批判的にも見ながら、自分でゼロベースで考えたときに、どれが自分の強みなのかということを丁寧に検証していくプロセスこそが、本当に大事なのでしょう。
過去の自分の体験だったり、あるいは他人の意見だったりなどなどを加味して、バイアスにとらわれず、他者の視点も得て、また心理測定的な観点も得て、自分らしい強み、つまり特徴的な強みを受け取っていく。この多角的な検証のプロセスが、自己理解の深さにつながるのだと思います。
今、MBTIというテストも非常に流行っていますが、これもあくまでも「検査」であり、その結果をもとに自分の中で「これだ」というベストフィットタイプを確定させていくプロセスが重要であると、専門家も述べていました。
「何かを受けておしまい」というテストはありえない。今回の論文は、こうした「自分のことを知るための自己理解のテスト」との向き合い方を、改めて考えさせられるきっかけとなったと感じた次第です。
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【編集後記】
◯今月のランニング:38km
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