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令和7年9月29日(第4234号)
デンマーク教育は、学力でなく「生きる力を身につける」を大切にしていた
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 4435字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日より、デンマークよりチェコに移動し、16kmのランニングでした。
天に向かう鋭い戦闘や細い柱など荘厳な建物が多く、
デンマークの素朴だけど美しい建物とは少し違った趣でした。
中世の繁栄を再現したたてもので
中世ゴシック建築の要素であるとのこと、
歴史を感じ、こちらも勉強になります。
*
さて、本日のお話ですが、引き続き、デンマークのスタディツアーからの学びをお伝えします。
本日は「デンマークの教育」がテーマです。
学力偏重ではない、幸福度を育むデンマークの教育システムは、私たちに『教育の目的とは何か』という根本的な問いを投げかけます。
これまで「フォルケホイスコーレ(成人教育、リベラルアーツなど学べる)などがデンマークであるよ!」みたいな話は耳にしていたものの、具体的にどのようなことを行っているのかはよくわかりませんでした。
今日は、実際にデンマークの学校を見学して感じたことを書いてみたいと思います。
■デンマークの教育システムの構造
まず、デンマークの教育を構造から見てみます。
幼児教育から小中学校、高校、専門職教育、大学、そして成人教育に至るまでの、おおまかな流れは以下の通りです。
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<1.就学前教育>
「森のようちえん」など。遊びと自然、人間形成と社会性、自己選択を尊重する。
⇩
<2.フォルケスコーレ>
義務教育10年間=小中学校にあたる。対話と共同生活、内省を重視。勉強ができるようになるではなく「人として生きる力を育む」ことが目的。
⇩
<3.エフタスコーレ>
10年生のタイミングで通う私立の全寮制学校。自分の好きや得意を見つける場。自己発見、自立を促す。
⇩
<4.後期中等教育>
大学を目指すギムナジウム=高校、または職業訓練課程にわかれる。校舎内の学習だけでなく企業での実習も行える。
⇩
<5.フォルケホイスコーレ>
成人教育。人生の休憩期間としての学び直しや、次のステップへの移行期間に利用される。
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それでは、各教育段階を詳しく見ていきましょう。
■1.就学前教育(森のようちえんなど)
さて、デンマークにも就学前教育はあります。幼稚園や保育園にあたる部分です。共働きなので、1歳からようちえんに預けて、両親ともに働くというのも普通だそう。
「ペタゴー」と呼ばれる幼児教育の専門職が関わり、子どもの社会性や自己肯定感を育成することをサポートする存在とされています。様々なタイプの就学前教育があるそうですが、いくつか共通するポイントがあります。
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<デンマークの就学前教育のポイント>
⑴ 遊びと自然
天候にかかわらず屋外活動を重視。自然との触れ合いを通じて体や五感を育む。森の幼稚園のスタイルも広く取り入れられている。
⑵ 人間形成と社会性
「何を教えるか」ではなく「どのように関わるか」を重視。対話・共感・協調性・自立性を育む。
⑶ 自己選択・決定の尊重
遊びや食事などを子ども自身が選ぶことを大切にし、大人はその意思を尊重する。食事は一緒にするが、おやつの時間などを自分で選べる
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■森のようちえんでの体験記 ー子どもが子ライオンのようだったー
実際に訪れた森の幼稚園では、木のブランコや焚き火があちこちにあり、先生がナタで薪を割るのを子どもが手伝っていたりしました。
日本なら「危ない!」と止められそうな場面でも、思い切り挑戦させている姿が印象的でした。たとえば、ノコギリで幼稚園児が木をガンガン切ったり、時に振り回していて、えっ!と二度見する場面もありましたが、みんな日常のようでした。
5歳くらいの子どもがガンガン木を切ってました
ある子どもは森の中を子ライオンのように駆け回ったり、別の子どもは虫や葉っぱを観察して静かに時間を過ごす子もいたり。先生は「監督者」ではなく、「一緒に遊ぶ仲間」のような存在で、まるで田舎のおじいちゃんが木の実の取り方や火のつけ方を教えてくれるような立ち位置にも見えました。
みんなで焚き火をして薪を切って、自然と遊びます
また、子ども同士で衝突やトラブルがあっても、大人は必要以上に介入していませんでした。社会性を育む場であるからこそ、意図的に干渉しないとのこと。
日本では「親が無責任に見られるのでは」という体裁を気にしてしまいがちですが、こうした考えは、子どもの社会性を育む上では障害になりうるな…と思ったのでした(自戒を込めて…)。
ちなみに、雨が降ろうが雪が降ろうが必ず外に出るそうです
■2.フォルケスコーレ(Folkeskole)
義務教育を担う公立学校で、日本の小中学校にあたるのが、フォルケスコーレ(Folkeskole)です。全体の児童・生徒の約8割が通います。
特徴的なのは、「9年生まで点数や成績がつかない」こと。教師の観察や対話を通じて成長を評価するそうです。では、何を指標にしているのか?というと「子どもの幸福度」であるとのこと。へー!と唸らされました。
◎フォルケスコーレを見学する ー子どもたちは自由で多様だった
さて、こちらも実際に見に行きました。見学したのは比較的低所得層が多い地域の公立学校で1クラス20人ほど。まず、目を引いたのが視覚過敏や聴覚過敏の子どもが集中できるように個別のスペースやヘッドホン、環境調整が整えられていたこと。
集中できず動き回る子は校庭で自由に遊んで構わない、という柔軟さもあります。正直、授業中なのか休憩中なのかわからないほど自由な様子に驚きました。日本の「先生が話し、子どもが聞く」一方通行のスタイルとは全く異なります。
教師には、動き回る子を含めて場をファシリテートする力が求められるとも言えます。小さい頃から自分の意見を言い、対話する練習をすることが、大人になっても発言できる土台になるのだと実感しました。
◎「先生の働き方」に余裕があった
また、注目すべきは「先生の働き方」です。まず、担任は2人体制で責任が分散されています。目標は「子どもの幸福度」とされ、お伝えしたように学力を偏重するものではありません。
科目ごとに教師が分かれているため日本のような過重労働になりにくく、採点や授業の準備など追われることも少ないそうです。加えて、給与水準も高めとのこと。
先生は、クラスごとに、その生徒たちが学びたい内容を自由に設計するので、共通したテキストやカリキュラムはないそうです。これも「学力を身につける場」ではなく「教育を届ける場(人として生きる力を身につける)」ことをしているので、実現されているようでした。
先生自身の働き方が保障されていることは非常に重要だと感じましたし、この点は日本も見習うべきことが非常に多いと思います。教育と、教育に関わる人が幸せではない国に未来はないのですから…。
■3.エフタスコーレ(Efterskole)
義務教育から後期中等教育への移行期にあたる10代の若者(14〜18歳頃)が、親元を離れて共同生活を送る寄宿制の私立学校です。
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<エフタスコーレの特徴>
・自立心を育てる共同生活
・多様な選択科目(音楽・デザイン・スポーツなど)で「好き」や「得意」を発見
・国の補助もあり、経済的負担は軽減されている
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見学に行ったフォルケスコーレでも、「エフタスコーレには興味がある」と子どもがいっていたのも印象的でした。
■4.後期中等教育
義務教育終了後、約16歳から次の道に進みます。
パターンとしては、以下の2つがあるそうです。
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⑴ 大学進学を目指す:STX, HHX, HTX, HFなどのギムナジウム(高校)で3年間学ぶ
⑵ 専門職を目指す:職業教育訓練課程(VET)で実習と学習を行い、資格を取得
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まず、高校になると、めちゃくちゃ勉強するそうです。フォルケスコーレ(小中学校)で勉強せずとも、ここでガッツリ学ぶので大丈夫のよう。なので高校卒業のときは、盛大にパーティーをするのが慣例とのこと。
ここまでは、「自己肯定感と社会性を育む時間(森のようちえん等)」→「対話や共同生活と内省で、生きるための力を育む時間(フォルケスコーレ)」→「自分の好きや得意を見つける自己発見の時間(エフタスコーレ)」ときて、ここで定まったらしっかり学ぶ、ということなのかもしれません。
また職業訓練過程では、実際の職場でインターンのような実際に働く期間があります。エフタスコーレと合わせて、自分の進路を早くから模索できる仕組みが整っています。
■5.フォルケホイスコーレ(Folkehøjskole)
思想家N.F.S.グルントヴィが提唱した北欧独自の成人教育機関です。
試験や成績はなく、数週間から数カ月滞在して学びます。対象は17.5歳以上なら誰でも可。対話や共同生活を通じて「人として生きる力」を養い、市民としての成長を促す場です。
失業をしても最大4年給付手当が出るので、じっくり腰を据えて学ぶことができるとのこと。よって、成人のリスキリング(学び直し)も仕組みとして取り組みやすいそうです。挑戦を促す土台になっているとも言えます。
■デンマークの教育観こそが要:幸福度を育む教育
こうした仕組みを支えているのは、「教育=勉強を教える場ではない」という国全体の共通認識です。
小中学校を「受験のための場」とするのか、それとも「共同生活や対話、社会性を育む場」とするのか。ここに教育観の決定的な違いがあるように感じました。
私自身、自分の子どもには受験勉強に追われるのではなく、小さい頃から「生きる喜び」を感じてほしいなと思いつつ、日本で仕事をするには、こうしたルールに乗らなければいけないのかも…と考えていました。
しかし、子どもは子どもらしく過ごしても、きちんと必要な時期に社会性とルールを大切にできるように育ち、その結果、幸福度高く、楽しく働けるようになるものだ、とデンマークの社会を見て感じました。
■まとめ:日本がデンマークから学ぶべき教育観
改めて、自分の子どもの教育を考えると、東京では小学校高学年から塾に通い、中学受験に備える場面も見られます。順位や偏差値がつき始める中学生んいなると、勉強がストレスに変わることも多いといわれます。こうした制度は、日本・中国・韓国に多いようです。
デンマークでは19世紀に「立身出世のための学校」を「死の学校」と問題視した歴史があります。そこから現在の教育制度が形づくられたと思うと、こうした問題意識の先にある教育の姿が、今のデンマークの教育のようにも思えました。
もちろん、日本の仕組みの中でも輝く人はいます。ただ、その仕組みに適応できず苦しむ子どもたちも多いのです。だからこそ、職業訓練校など多様な選択肢に、もっと光を当ててもいいように思いました。
隣の芝は青く見えるものかもしれませんが、率直に、今の日本に足りないのはまさにこうした「デンマーク的な教育観」だとも感じています。
一人ひとりが自分の好きや得意を大切にし、仕事に貴賎はなく、未来のために今を犠牲にするのではなく「今この瞬間を楽しむ」。そんな生き方を私自身もしたいと思いましたし、そのための一助になれたらと願った次第です。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:289km
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