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令和7年9月25日(第4230号)
対話はつらいよ ーデンマーク国会議事堂は対話の現実と葛藤が詰まっていたー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3450字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
引き続き、デンマークに来ております。
また変わらず先日は5kmのランニングでした。
人生初のデンマーク。美しく、歴史を感じる街並み。
青い空とレンガ造りの茶色の建物のアースカラーの対比を感じながら「美しい…」と芸もなく素直な感想を漏らしている今日この頃です。
*
さて、そんな中ですが、デンマークの民主主義、環境、教育などを感じるスタディツアーに参加しています。そして、その中でデンマークの民主主義の象徴でもある国会議事堂を訪れる機会がありました。
そこでの体験がすこぶる興味深く、民主主義と、その根幹である対話について考える大変貴重な機会になったのでした。
ということで、その内容についてお伝えしてみたいと思います。
それではどうぞ!
■「デンマークの国会議事堂」はこんな場所
デンマークの国会議事堂は「クリスチャンスボー城」というお城です。写真からも荘厳な様子が伝わります。
建造物としても美しいのですが、国会(フォルケティング)、首相府、最高裁判所が同じ建物に入っている世界でも珍しい施設だそう。
建築:バロック様式から新古典主義の要素を持つ壮大な建築。現在の建物は3代目(1907–1928完成)。
国会議事堂としてだけでなく、女王の公式行事を行う謁見の間や、王室の儀礼的行事、さらには国賓(ダライ・ラマなど)を迎える場としても使われる。
とのこと。その場所が国民にも、観光客にも開かれた場所になっています。実際に、議場へ議員の家族・友人・一般の人の見学席があるなど、仕組みとして開かれています。まさに透明性を体現しております。
■「議員になりきる体験」というプログラム
さて、デンマークの投票率は80%台です。特に20代でも投票率が70%後半から80%台と高いことが特徴です(ちなみに日本は30%台)。
そして、多くの人が参加しているその背景には、「日常に埋め込まれた政治教育」があるそうです。それが「議員になりきる体験」というプログラムです。これが、すこぶる興味深い。
◎プログラムの概要
デンマーク国会議事堂(クリスチャンスボー城)において、学生を対象とした公開型の議員体験プログラムが実施される。
実際の議会の流れを模したロールプレイ形式で、約3時間かけて体験する。
◎議員なりきり体験の流れ
実際の議員が行う議会プロセスを簡略化しながら、たとえば「遺伝子」「環境問題」のようにテーマを設定し、立場を分けて、以下のように議論を進めていきます。
⑴ 法案提出(架空の法案を出す)
⑵ 修正討議(提出された法案に対して修正や意見交換を行う)
⑶ 投票(最終的に可決・否決を決める投票を実施する)
参加者は4つの架空政党(デンマークを代表する想定)に分かれて、政党ごとに登録・記念写真を撮影し、その後議論に参加します。与党・野党の立場に分かれて討論するため、政治的な駆け引きもリアルに体験できます。
また、プレス(ニュース)などに取材されるような体験も組み込まれており、国会議事堂でな議員さながらの体験をすることができます。
◎どのような効果があるのか?
さて、このようなことが組み込まれていると、「政治を『自分ごと』として捉える」ことができるようになるそうです。また「民主主義の根幹である”対話”とはなにか」も考えさせられます。
議論を交わし、対話し、合意形成をはかる。プレス対応もし、その様子が放映される。そこには、決して簡単ではないけれど、そうして自分たちの生活に関わることが行われるという体験となり、圧倒的当事者意識が生まれるようです。
こうした教育が行き渡っていることは素晴らしく、政治が「自分ごと」になりやすいと感じました。その立場を知らないと、無遠慮に厳しい言葉(辞任せよ!といった話)を浴びせてしまうこともあります。
しかし、相手の立場を知ると、そこに配慮が生まれます。そういう意味で、議員という立場になりきる学習は、実に意義深いと感じました。
(日本だと”永田町の立ち回り”みたいな話も含まれて、なかなかピュアに行うのは難しいかもしれませんが、こういう教育の場は重要だと感じました)
■彫刻や絵、言葉の意味が奥深い
国会議事堂の職員の方に、約1時間半のツアーで案内してもらいました。そこかしこにある彫刻や言葉、肖像画には深い意味が込められており、「へー」「ほー」と感嘆しておりました。
◎「共に働け、しかし異なったままで」
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VIRK I FÆLLIG, MEN FORSKELLIG.
「共に働け、しかし異なったままで」
DRAG TIL MINDE: MAND ER MAND OG KVINDE KVINDE
「忘れるな:男は男であり、女は女である」
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男女の役割や本質的な違いを踏まえつつ協力する、というメッセージ。違いを消すのではなく抱えたまま共に働く。それは「平等」ではなく「公平」に近い考えを含んでいると感じました。
◎「実が熟す前に果実を摘んではならない」
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Pluk ikke frugten, før den er moden.
「実が熟す前に果実を摘んではならない」
Skal ukrudt luges op, så glem ej roden.
「雑草を取り除くなら、その根を忘れるな」
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「物事には時期がある。急ぎすぎるな。表面的な対応ではなく根本から解決せよ」。こうした教訓を含んだメッセージです。
対話は時間がかかります。また、なんでも浸透させるためには時間がかかります。別の場面で「1つのことを国として形にしていくには25年かかる」という話をされていましたが、急ぎすぎないこと、大切なことだからこそじっくり行うことを、国会議事堂に掲げられていることに、しびれました。
この言葉があるから「対話」もできるのではないか、と感じさせられます。
■コンバースを履いて「コンバセーションコーヒー」を飲む
国会議事堂には「コンバセーションルーム(対話の部屋)」という空間があります。ここはデンマーク民主主義の根幹である「対話」を象徴する部屋で、外国要人の応対や記者会見にも使われます。
壁画には初期の女性議員たちが描かれ、他の3つの壁画が男性ばかりなので、ここを女性にすることでバランスをとっています。現在の女性議員比率(約43%)にも通じます。
移民ルーツを持つ議員も描かれており、多様性を示すシンボルに。茶色のジャケットの女性は「コーヒーを囲んで対話する文化」を象徴し、さらに「コンバースの靴を履く→コンバセーション」というユーモラスな言葉遊びも重ねられていました。つまり「民主主義はコーヒーを飲みながら始まる」という比喩です。
■議場にある4つの像
議場には男女それぞれの像が4体配置され、「政治に不可欠な徳目」を示しています。
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・正義(Justice)=公平な裁きの象徴
・知恵(Wisdom)=熟慮と理性
・力(Strength / Courage)=勇気と国家を守る力
・節度(Moderation / Prudence)=権力の乱用を抑えバランスを重んじる
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対話は大変なことも多い。その中で、これらの徳目を場に刻むことで「大切な価値観を忘れない仕組み」を持っているのだと感じました。
■まとめ:対話はつらいよ
こうして国会議事堂のルーツや、細部に込められた意味を知り、その物語に唸らされました。人間は弱いものです。そんなときに、言葉で自分たちを律し、目指すべき理想に歩もうとする静かな覚悟と、それを受け入れるためのユーモアさを、国会議事堂という建造物から感じました。
そんなことを感じつつ、国会議事堂を後にし、ふと振り返ってその入口をみると、その中心には「苦悩する人々の像」が目に飛び込んできました。
民主主義を重んじ、対話を大切にするデンマークですが、その根底には「対話は大変で、めんどくさくて、時間もかかること」。「それでも大切にしなければならないこと」。そんな対話の現実を正面から捉えているように私には感じられました。
実際に議事堂で「移民大臣」とすれ違った際、眉間に深いシワを寄せて考え込んでいる姿が印象的でしたが、対話に向き合おうとする姿勢こそが大事である。そんなことを教えてくれる場所でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:253km
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