配信日時 2025/09/23 18:59

「デンマーク」とはどんな国なのか? ー仕事が効率化された幸福度の高い国ー【カレッジサプリ】

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令和7年9月23日(第4228号)


「デンマーク」とはどんな国なのか? ー仕事が効率化された幸福度の高い国ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話  4452字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

ドイツから移動し、デンマークにやって参りました。旅の予定の4日目です。ここからが今回の旅の1番の目的である「デンマークの民主主義を学ぶスタディーツアー」への参加です。

デンマークに在住され、24年間デンマークの文化などを日本に配信されているニールセン北村朋子さんを案内人として、デンマークの代表的な場所を様々な解説や体験付きで案内いただくという、たいへん贅沢な時間です。

ここから何回か、デンマークを歩いて見て聞いて感じたことを配信していきたいと思います。

それではどうぞ!



■「デンマーク」という興味深い国

デンマークは、興味深い国です。

日本でも『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHP新書)の著書などが出版されたり、他にも「デンマークから学ぶ…」みたいな本は、Amazonでも複数見つかります。なんとなく気になる存在…という印象を持つ人も、いらっしゃるのではないでしょうか。

たとえばよく言われるのが「国民幸福度が高い」「高課税高福祉」「挑戦を許容する文化」「デジタル化の先進国」「労働生産性が高い」「16時には業務終了する」「長期休暇(1ヶ月)を取得する」などは、日本人が今、見習いたいと思うようなライフスタイルなのではないでしょうか。

▽▽▽

めちゃくちゃ個人的な話ですが、私は新卒入社した最初の仕事(飲食店)がとにかく長時間労働でした。その後の会社も長時間働くのが当然の時代背景であり、数字のプレッシャーも大きく、「頑張らねば」と自分を律しながら働いている「仕事の原体験」があります。

ゆえに、組織で働くことを支援する立場でありながら、「組織で働くのは怖い」という感覚が、どこかで刷り込まれていた気もします。それは、労働時間の長さだけでなく、「求められたときに良いことを言わなければいけない」「ルールにしっかりと従わなければいけない」といった、日本的な調和の強みが、同調圧力として過度に働いたことの弊害が、心身に刻まれていたからかもしれません。

そうした中で、人が違っていること、多様であることを国全体で尊重し、寛容さを制度化しているデンマークとはどんな国なのか?

実際に「見てみたい、感じてみたい」と思うようになりました。



■デンマークという国はどんな国か?

さて、そもそもデンマークはどんな国なのか、ハード面とソフト面、それぞれ簡単にまとめてみたいと思います。

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●デンマークの歴史
・8〜11世紀:ヴァイキング時代、北海・バルト海を支配、イングランドにも侵攻
・14世紀:カルマル同盟でスウェーデン・ノルウェーと連合
・17〜19世紀:スウェーデンとの戦争・ナポレオン戦争で領土縮小(ノルウェー喪失)
・20世紀:第二次世界大戦でドイツ占領、戦後は福祉国家化
・現代:EU加盟(1973年)、電子政府やグリーン成長で先進国モデルに

●国土・人口
・面積:約4.3万 km²(九州と同程度)
・人口:約590万人(千葉県630万人と同程度)
・首都:コペンハーゲン
・特徴:島国的(ユトランド半島+400以上の島)、平坦で農業に適した地形

● 議会制度・政治体制
・国家体制:立憲君主制(国王は象徴的存在、政治権限は持たない)
・議会:一院制
・政治の特徴:多党制・連立政権が常態 

●産業構造
・農業:酪農・豚肉輸出が強い(農産物輸出国)
・製造業:製薬(ノボノルディスク)、風力発電(ヴェスタス)、海運(マースク)
・サービス業:金融、デザイン、観光
・環境技術:再生可能エネルギー、グリーン経済で世界的リーダー

●国際競争力(強み)
・教育の質・学び直しの文化
・高福祉・高負担で安心して挑戦できる環境
・柔軟な労働市場(フレキシキュリティ)
・デジタル行政の徹底(電子政府世界1位)
・グリーン成長戦略と持続可能性
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日本と比較したときに、最大の違いは「デンマークは国の規模が小さいこと」です。日本は人口もGDPも大国であり、中央集権的になりやすい要素があります。また、規模の違いは、大型ジャンボジェットとセスナの違いのように、形にする上での機動力の高さの違いも生まれるでしょう。

それでも、立憲君主制・議会民主主義という同じ政治制度を持ちながら、戦後の歩みは違った展開をしてきました。もちろん、国の成り立ちが違うので、そのまま取り入れるのは難しいとはいえ、その違いのルーツを学ぶことは、多くの示唆があるように思います。



■日常が、電子化・効率化されている

デンマークに来て、まず感じた日常的な違いをいくつか書いてみたいと思います。


⑴ 領収書が電子化されている

初日は夜21時ごろにコペンハーゲンに到着し、ホテルにチェックインしました。翌朝、朝食を追加しようと支払いをすると、レセプションのお兄さんが「ここにメールアドレスを書いてね!」と陽気な雰囲気で言ってきました。曰く、「領収書はこのメールアドレスに電子で送られる」とのこと。

こうした「紙の領収書をもらう」という行為もデジタル完結していることに小さな驚きがあります。たしかに、日本ではスターバックスの定員さんが、毎回紙で書いています。こうした当たり前から「本当に必要なのか」を考えるのは重要だと思いました。

また、国会議事堂も見学にいきましたが、投票も電子化されていました。パネルに表示された議題に対して、その場でボタンを押すと即時にデジタルで記録されます。議場のモニターには瞬時に投票結果が反映されるとのこと。

さらに、駅の改札も日本とは異なり、アプリを通じての利用が盛んです。乗車前に「チェックイン」、降車時に「チェックアウト」のボタンを押すと、自動的に移動距離が計算され、クレジットカードから運賃が引き落とされます。もちろん定期的に検札があり、もしチェックインを忘れていたら罰金になるのですが、逆に言えば「わざわざ切符を買う」という行為そのものが非効率とも言えるとも思えました。

こういう細かい日常の積み重ねによって、効率化が進み、国全体が「人々の暮らしを楽にする方向」に動いているのだと感じました。



⑵ 16時過ぎに帰宅ラッシュ

デンマークの働き方は基本的に朝8時から16時までです。ランチは20〜30分程度で、簡単にサンドイッチを食べるスタイル。そのため、16時を過ぎると一斉に帰宅ラッシュが始まりました。

聞いていたものの、その光景を見たとき密かに感動しました。カフェでお茶をしていて外は明るい。16時にはぞろぞろと人が家に帰っていき、18時半ごろには街が静まり返り、家の中で食事をしている様子がうかがえます。19時過ぎが日の入りなので、外が明るいうちに街が静かになっていき、家族らとゆっくり過ごす姿を想像すると、とても幸福度が高そうだと感じました。

ちなみに、この背景には「生産性と幸福度をどちらも大事にする」という国全体の考え方があるようです。

余談ですが、歴史をひもとくと、ここに至るまでのいくつかの分岐点があったようです。

まず「女性の社会進出」についてですが、その背景には第二次世界大戦後の選択にあったそうです。デンマークはナチス・ドイツに占領されましたが、国土の焼失や大量の戦死を避け、比較的早く経済活動を再開できました。戦後の好景気に乗るなかで、当時は「男性が働き、女性は家庭を守る」というモデルが一般的でしたが、労働力不足が深刻化しました。

その段階で、政府は海外からの労働移民を受け入れると同時に、女性の社会進出を積極的に促す方向へ舵を切りました。よって、女性が担っていた育児や高齢者のケアを公共サービスに移行する必要がありました。

ここで社会民主党が掲げてきた「福祉国家の構想」とぴたりと一致し、1970年の地方自治体改革(Kommunalreformen)を通じて、医療・教育・福祉を公共サービスとして税金でまかなう体制が整えられたとのこと。完全に男女の労働市場への参画が半々くらいになるのは1990年代ですが、このあたりから一つの分岐があったように思われます(日本と比較して)。



加えて、「労働生産性」についても一つの分岐点があったようです。1980年代の石油危機や長期不況では、失業率や金利の上昇により厳しい時期を迎えます。ストライキ等大変なことも多々ありましたが、ここでデンマークで大事にされている「対話」によってその中で国と労働者が「週37時間労働」という労使協定を結び、労働時間を短くする代わりに業務の効率化を徹底したとのこと。この積み重ねが、現在の電子化やデジタル行政の徹底にもつながっているそうです。

つまり、デンマークの働き方は偶然そうなったのではなく、歴史の節目ごとに「幸福度を高める選択」を粘り強く続けてきた結果なのだと実感しました。



⑶ 仕事をしている人が楽しそう

もう一つ強く印象に残ったのは、働いている人がとても楽しそうだということです。

カフェの店員さん、ホテルのスタッフ、議会を案内してくれた人……皆びっくりするほど陽気で、ユーモアを交えて会話します。議会案内のスタッフは「45分です」と言いながら、気づけば1時間半も延長して熱心に話してくれました。今の仕事が本当に楽しい、という雰囲気が伝わってきました。

もちろん、これが国全体の姿だとは限りません。ただ、デンマークでは基本的に1人が7〜8回転職すると言われており、日本のような人事異動は存在しません。

「人事異動はその人の人生を大きく揺るがすもの。家族や子どもの環境まで変えてしまう。それを会社都合で通告するのは、人権を軽視する行為だ」という考えがあるそうです。

これを聞いたとき、日本の終身雇用・年功序列制度との対比が鮮やかに浮かびました。日本の制度は「組織への忠誠」「勤勉に働き社会を発展させる」という大義のもとで発展してきましたが、その仕組みが今では人を縛り、息苦しさを生んでいる面も否めません。

一方デンマークは、個人がキャリアを選び直す自由を当然のものとし、楽しそうに働いている人たちが街のあちこちにいる。これは私にとって大きな気づきでした。



■まとめ:日本とデンマークの哲学の違い

もちろん一部の印象に過ぎませんが、国の成り立ちや背景を見たときに感じる違いを整理すると、こんなイメージです。

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●日本のキーワード
・勤勉(努力・長時間労働の美徳)
・忠誠(会社や組織、上下関係への忠義)
・調和(和を乱さない、空気を読む)
・忍耐(我慢・耐えることで価値を生む)
・集団主義(個よりも全体を優先)

●デンマークのキーワード
・公平(民主主義、多党制の方向性共有)
・多様性(移民・性別・ライフスタイルの尊重)
・自由(自分らしい生き方の追求)
・幸福(国民幸福度ランキングの高さ)
・信頼(政府・社会・隣人との高い信頼関係)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日本は「努力と忍耐」「空気を読む」「勤勉さ」、デンマークは「公平さと自由」「多様性と共生」「幸福と信頼」のような軸としている哲学の違いを感じました。

一方、日本の勤勉性や調和性は強みでもありますが、時に自分たちを縛り苦しめている側面もあります。デンマークの哲学から学ぶことは多いと感じました。ということで、デンマーク初日の感想でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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 【編集後記】
◯今月のランニング:230km

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