配信日時 2025/09/16 18:10

「人生の目的意識」を持つと、学業成績は上がるのか? ー767人の学生への調査からわかったことー 【カレッジサプリ】

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令和7年9月16日(第4221号)



「人生の目的意識」を持つと、学業成績は上がるのか? 
ー767人の学生への調査からわかったことー



株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話  2534字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日、日曜日は朝から31キロのランニング。

5月のウルトラマラソン以来のロング走でしたが、
比較的負荷もあまり感じずに練習ができて
走力が高まっていることを感じました。

引き続き、こちらもレベルアップを目指していきたいと思います。



さて、本日のお話です。

本日も強みに関連する論文のご紹介をしたいと思います。

イギリスの応用ポジティブ心理研究センター(CAPP)のストレングスプロファイルという強み診断では、「ミッション(≒目的意識)」という強みが設定されています。

「人生に目的意識を持つ」ということは、重要であると言われることもしばしば。100年時代という文脈でも、こうしたメッセージはしばしば用いられるようにも思います。

しかし、この目的意識が実際にどのような価値を生むのか?
ここについては、実はあまり明確な科学的な根拠は知りませんでした。

ということで、「目的意識(sense of purpose)」に関する論文を調べてみたところ、いくつか見つかりました。
その中で興味深い結果を報告しているものがありましたので、本日はその内容をご紹介したいと思います。

それではどうぞ!


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<本日の論文>
・Title(英語・日本語)
 Sense of Purpose in Life Predicts University Performance and Attrition
 人生の目的意識は大学の成績および中退率を予測する
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■目的意識(Sense of Purpose)とは

本論文では、冒頭に「目的意識」がこれまでどのような結果につながるのかという先行研究がまとめられています。

結論からいえば、「目的意識は、目標の選択と維持、努力するために自己規制を行う、忍耐力が高い」などの傾向があるという話です。

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・大学生の定着と達成に関する理論では、より大きな目標コミットメントを示す学生は、学位を取得する可能性が高いとされている (Tinto, 1975)。また、忍耐力は大学継続の重要な予測因子であることが示されている (Bowman et al.)。

・目的意識の効果に関する理論は、目標の選択や維持、自己規制の側面を含んでいる (Lewis, 2020; McKnight & Kashdan, 2009)。人は長期的で包括的な目標を設定することで、複数のサブ目標を見出し、必要な戦略や自己調整を行う傾向がある。

・別の言い方をすれば、目的意識が強い人は意味のある目標を設定し、それに向かって努力する自己調整技法を用いやすい (Pfund et al.)。
実際に、目的意識の高い大学生は、1学期の間に高い忍耐力やその向上を報告する傾向がある (Hill, Burrow & Bronk, 2016; Sharma & Yukhymenko-Lescroart, 2022)。
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なるほど、言われてみればそんな感じだろうな、と思うことが改めて文字にされているような感じがします。



■研究の概要

・本研究では、大学入学前における「人生の目的意識(sense of purpose)」が、大学での学業成績や中退にどのように影響するかを調査した。

・769人の学生を対象に、入学前の夏にベースライン調査を実施し、その後3年間にわたり追跡した。

・目的意識が高い学生は、GPAが高く、取得単位数が多く、履修取り下げが少なく、大学に継続して在籍する確率も高かった。

・また、目的意識は、入学試験スコアが低い学生における学業成績の低下を緩和する効果も示した。



■研究の方法

・対象者:3,855人の新入生から無作為に選ばれた775人(最終的な分析対象は769人)
・調査時期:2019年夏(入学前)
・測定項目:目的意識(Hillらによる4項目尺度)、ACT/SATスコア、GPA、取得単位数、履修取り下げ数、大学在籍状況(3年間)
・分析手法:線形回帰分析、ロジスティック回帰分析、ピアソン相関、ZIP(Zero Inflated Poisson)モデル


◎目的意識の尺度
ちなみに、「目的意識」をどのように測定するかは様々な方法があるようですが、ここではHillらの4項目が用いられていました。参加者は以下の4項目について、1(強く不同意)〜5または7(強く同意)のリッカート尺度で回答します。

<Brief Purpose-in-Life 4項目尺度>
・自分の人生には方向性がある。(There is a direction in my life.)
・自分の将来の計画は、自分の本当の興味や価値観と一致している。(My plans for the future match with my true interests and values)
・自分が人生で進んでいく方向がどこか分かっている。(I know which direction I am going to follow in my life.)
・私の人生は明確な約束(コミットメント)によって導かれている。(My life is guided by a set of clear commitments.)



■結果(わかったこと)

研究の結果から、以下のようなことがわかりました。

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⑴ 目的意識が高い学生は、学業成績(GPA)が高い
→1学期および1年目のGPAが有意に高かった

⑵ 目的意識が高い学生は、在籍率が高い
→3年間での継続在籍率が20%高かった

⑶ 目的意識が高い学生は、単位取得率が高い
→72単位以上の取得(5年以内の卒業見込み)に関連
 履修取り下げ経験がない学生の割合が高い
 ACT/SATスコアが平均以下の学生において、目的意識が高いとGPAの低下が緩和された(交互作用効果が有意)
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■考察と応用

これらの結果から、「目的意識」は、大学生のGPA、単位取得、中退率といった多面的な学業成果にポジティブな影響を与えることが明らかとなりました。

では、どう活用するか?ですが、たとえば「入学前オリエンテーション等で目的意識を育成するプログラムを導入する」ことで、中退率の低下や学業成績の向上を目指すなどが、本論文では提案されていました。

(また「PATHSモデル(Purpose as Trait, Habit, and State)」なる介入手法らしきものもあるようで、これもまた後日調べてみたいなと思いました)



■まとめと感想

「目的意識が高い学生は学業成績や単位取得率に良い影響を与える」。この結果は、たしかにそうだろうなと思える内容でした。

こうしたものをデータとして明確に示されると「目的意識を育むことには一定の価値がある」と改めて理解できます。したがって、目的意識やミッションは、自己啓発的な話ではなく、教育カリキュラムの一環として提供することが重要であることが示されるのは、大切なことだと感じました。

一方で、日本人は文化的に「ミッション」を掲げにくい側面もあるように思います。協調性や調和性を重んじる文化特性があるため、「目的意識を持ちましょう」とそのまま伝えても、しっくりこない場合もあるでしょう。文化的背景を含めた研究があれば、ぜひ読んでみたいと感じました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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 【編集後記】
◯今月のランニング:167km

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