配信日時 2025/09/02 12:00

「大切にしている価値」を聞いてあげるだけで、ストレスホルモンが減る ーカリフォルニア大学の論文よりー【カレッジサプリ】

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令和7年9月2日(第4208号)


「大切にしている価値」を聞いてあげるだけで、ストレスホルモンが減る ーカリフォルニア大学の論文よりー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話  2258字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

引き続き、宮崎に来ております。
また、朝に5kmのランニング。

その他、研修プログラムの作成と、
午後からコーチング&コンサルティングでした。



さて、本日のお話です。

本日はある論文のご紹介です。
割と日常的に使えそうな「ストレスの緩和」についての論文で、面白い内容でした。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて2005年に発表された論文で、「価値観を肯定されると、ストレスホルモンのコルチゾール値が有意に下がる」という自己肯定理論に基づく仮説を、身体的な変化を化学的に検証した研究がありました。

これまで私がよく見た論文では、「自己回答によるビフォーアフターで自尊心の変化を測定する」みたいなものが多かったのですが、この研究は、ストレスに関わるホルモンを採取し、ドライアイスでドイツの研究所に郵送して分析するという、実に化学的な測定方法を用いており、「おうおう、どうなるんだコレ…!」と、論文の概要を見たときに興奮しました。

引用数も798件となかなかの多さ。これまでに語られてきた「自己肯定理論」「認知的適応理論」など、1980年代の理論と一致する実証的な実験という点でも面白いものでした。

それでは、本文の概要について見て参りましょう!



■本日ご紹介の論文

タイトル:「Affirmation of Personal Values Buffers Neuroendocrine and Psychological Stress Responses」(個人的価値の肯定が神経内分泌および心理的ストレス反応を緩和する)
ジャーナル名と出版年:Psychological Science, 2005年
第一著者と最終著者(英語):J. David Creswell, Traci Mann
第一所属(英語):University of California, Los Angeles



■論文の概要

・この研究は、個人的価値の肯定がストレスに対する神経内分泌および心理的反応を緩和するかどうかを実験的に検討した。

・85名の被験者が、価値肯定課題または対照課題を行った後、ストレス課題に参加した。

・結果、価値を肯定した被験者は対照群よりも有意に低いコルチゾール反応を示した。さらに、自己資源(自尊心や楽観性など)が高い人は、価値肯定によって心理的ストレスが最も低かった。自己の価値を振り返ることがストレス反応の低減に寄与する可能性が示唆された。



■研究の方法

本研究の対象者はUCLAの学部生85名(男性35名、女性50名)。
価値肯定群と対照群にランダムに割り当て、Trier Social Stress Test(スピーチと暗算)を実施し、唾液コルチゾール(※)測定と心理的ストレス評価を行った。事前に自己資源(自尊心、自己拡張傾向、楽観性)を評価した。

※コルチゾールってなに?
コルチゾールとは、副腎皮質(腎臓の上にある副腎)から分泌されるステロイドホルモン(糖質コルチコイド)の一種。ストレスホルモンとも呼ばれ、ストレスに直面したときに分泌が増える。



■介入方法

では、具体的にどんな介入を行ったのか?
まず、被験者は実験開始前に 「Values Questionnaire(価値質問紙)」 を用いて、以下の5つの個人的価値(宗教、社会問題、政治、理論、美学)について評価・順位付けをしました。

そして、以下の2つの群にわけて、別々の質問をしました。

・価値肯定群(value-affirmation condition):
 「自分が最も重要だと評価した価値」に関連した質問に回答。

・対照群(control condition):
 「自分が最も重要ではないと評価した価値」に関連した質問に回答。

このように、肯定群は最も重要とした価値について回答することで「価値への共鳴を操作」した。



■結果わかったこと

⑴ 価値肯定群は対照群よりも有意に低いコルチゾール反応を示した(p = .03)。
=ストレスホルモンの値が低かった

⑵ 自己資源が高い人は、価値肯定によって心理的ストレス認識がより低下した(p < .001)。一方で、自己資源が低い人には効果がなかった。
=自己資源(自尊心、楽観性、自己強化など)が高いほど、価値肯定によるストレス認識が下がる



■研究からの示唆

・「価値の肯定」は、コルチゾール上昇を抑制し、心理的ストレス反応の低減にも効果がある。

・ただし心理的効果は、自己資源の高さに依存する可能性がある。なお、心拍などの身体的反応には影響が見られず、課題への関与度は両群で同等だったと考えられる。

・「価値の肯定」がストレス反応に与える影響を、初めて神経内分泌レベル(唾液中コルチゾール)で検証した点で新規性がある。



■まとめ:個人的な感想

個人的に特に興味深かったのは、「ストレスに対処する価値肯定の介入方法のシンプルさ」でした。

この研究における価値肯定への介入は「自分が大切だと思っていることについて質問される(=価値への共鳴)」だけです。相手を褒めたりポジティブな言葉をかけるわけでもなく、ただ本人が大事にしていることを聞いてあげるだけ。これで自己肯定感が高まるというのは、「えっ、これくらいで介入効果あるんだ…!」と、驚きがありました。

同時に、そう考えると、様々な人材開発や組織開発の介入で、ファシリテーターが質的調査で、肯定的に話を聞くだけで自尊心とか上がっちゃったりするのかなあ・・・と、調査が与える影響などもあるのかなと思ったり。

また、自己資源が高い人(自尊心や楽観性が高い人)は効果がある一方、もともと低い人には効果が乏しかったという点を踏まえると、長期的にはやはり運動・睡眠・健康習慣や、自尊心を「状態ではなく安定的に高める介入」が必要だと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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 【編集後記】
◯今月のランニング:15km

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