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令和7年9月1日(第4207号)
「日本の人事制度の移り変わり」を整理してみました。
ー『人事管理入門』第3章 社員区分制度と社員格付け制度ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3256字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
引き続き、宮崎に来ております。
法事でしたが、ひたすら皆が集まって、
食って、食って、食いまくるパーティーのようでした。
上は97歳から、下は0歳で、4世代が集まるのも、
なかなかレアだな、と感じます。
「法事とは、故人を思ってあつまり、
残された人が、その縁を確かめるためのもの」
とお坊さんがいっていましたが、まさにそうなのだろうな、と思いました。
その他、20kmのランニングなど。
*
さて、先日より読み解いている『人事管理入門』について、本日も続けてお伝えしたいと思います。
今日ご紹介する内容は、一言で言えば「日本の人事制度の移り変わりを一気に読みとく」といったものです。
タイトルは「第三章 社員区分制度と社員格付け制度」と、やや硬い印象を受けるテーマですが、その内容は人事管理の基盤システムとも呼べるコアな領域です。めっちゃ面白かったです…!
特に、企業で働く方にとっては、自分事と紐付けやすく、また「職能資格制度」「職務分類制度」「成果主義制度」「役割等級制度」「ジョブ型制度」といった複雑に絡み合う概念を整理できる章だと感じました。
本書は2002年初版ということもあり、少し古い情報も含まれています。そこで本記事では、その内容に加えて適宜アップデートした情報も補足しながらまとめていきます。
それでは早速、中身を見ていきましょう!
■社員の多様化が、人事システムを変えてきた
よく知られているように、日本の労働市場は長らく『正社員を中心とした、終身雇用・年功序列・転勤前提・男性中心』という仕組みで成り立ってきました。
それが時代とともに、パート社員・アルバイト・契約社員・派遣社員といった非正社員が増え、正社員の中でも総合職・地域限定職・専門職といった区分が導入されるようになりました。
こうした「社員の多様化」が広がるにつれ、人事管理の基盤を見直さざるを得なくなってきたという歴史があります。
■何で人を評価するのか
昔であれば、正社員・男性・転勤可能といったシンプルな条件が前提で、評価基準もわかりやすいものでした。年功制度であれば「長く勤めること」がそのまま価値となり、給与体系もそれに紐づけて設計しやすかった、というように。
しかし現在は「何をもって良しとするか」が非常に複雑です。
経営視点から見れば「利益への貢献度」が基準となりますが、経理部門の社員と営業社員をどう比較するのか、短期的な利益を出す人と中長期的に会社を支える人の価値をどう測るのか──こうした問いは簡単ではありません。
評価基準を誤れば公平感が損なわれ、不満に直結します。さらに、市場の変化や他社の動きにも左右されるため、制度は常に見直しが求められます。
ある人事の部長は「人事制度は新しいモノを作った瞬間に、陳腐化がはじまる」と言っていましたが、まさにそうなのでしょう。
■「人事管理の基盤システム」の2つの要素
⑴ 社員区分制度
まず1つ目は、社員の多様性をどう区分するかという点です。代表的な方法として以下の4つが挙げられます。
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・職種による区分(例:技能職と事務職)
・将来のキャリアに対する期待の違い(例:幹部候補層と補助的業務を担う層、キャリアとノンキャリア)
・キャリア段階による区分(例:新人期・一人前期・拡充期・管理職期など)
・企業が期待する働き方の違い(例:全国転勤可能社員と地域限定社員、時短のパート社員など)
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こうした区分は、その後の評価や報酬体系の基盤になります。
⑵ 社員格付け制度
社員格付け制度とは、社員を「企業にとっての重要度」でランク付けする仕組みです。
評価の基盤には3つの考え方があります。
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・人間系:労働力や潜在能力といった「人」に着目
・仕事系:与えられた仕事や発揮された能力に着目
・市場系:最終的な成果に着目
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日本では長らく「人間系」が中心でした。年功制度や職能資格制度はその典型です。社員の雇用を保障し、社内での能力開発を重視する仕組みです。
一方、アメリカは「市場系」に近い成果主義やジョブ型を採用しています。何を基準に「偉さ」を測るのかによって、人事制度は大きく変わるのです。
ただし、これは国の雇用流動性や文化にも依存するため、単純にアメリカ型を導入してもうまく機能するわけではありません。
■日本の人事制度の変遷と現状
ここから先は、本書の内容を整理しながら、現状をまとめてみました。
◎1. 職能資格制度(1960〜1990年代中心)
・登場の背景:長期雇用・年功序列にマッチ。異動やゼネラリスト育成と親和性が高かった。
・仕組み:社員を「能力」に基づいて1~11等級などに格付け。「絶対的な能力」があると仮定して能力を評価するため、「仕事と給与」を分ける事が可能になる(よって職種の異動があっても、給与が変わらない)。
・課題:年齢・勤続で自動的に昇格する傾向が強まり、硬直化。成果や役割との連動が弱い。
・現状:新規導入は少なくなった。ただし製造業・技能職・インフラ業種では依然として基盤制度として残存。ホワイトカラー層では縮小傾向。
◎2. 役割等級制度(2000年代以降)
・登場の背景:アメリカ型の職務分類制度をそのまま導入するには「評価が複雑」「コスト高」「雇用流動性の低さで機能しにくい」という課題があった。その代替策として日本型に適応したのが役割等級制度。
・仕組み:職務ほど細分化せず、「担う役割の大きさ・責任」に応じて等級を決める。
・特徴:柔軟性を保ちながらも「年功的」から「役割的」へシフト。
・現状:大企業を含め、多くの企業の“標準制度”として定着。
◎3. ジョブ型制度(2010年代後半〜現在)
・背景:グローバル化、DX、専門職活用の必要性。
・仕組み:ジョブディスクリプション(職務記述書)を明確にし、人を「仕事」に割り当てる。
・導入事例:富士通、日立、KDDIなどが導入。
・実態:完全なアメリカ型ではなく、役割等級制度+ジョブ要素のハイブリッドが中心。
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ブルーカラー=職能資格制度が残存
ホワイトカラー=役割等級+ジョブ型要素
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◎(参考)アメリカ型「職務分類制度」
・特徴:職務ごとに価値を定義し、報酬や等級を決める。
・評価の考え方(「ヘイ・システム」の3要素の場合)
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・ノウハウ(専門的知識、管理運営、人間関係スキル)
・問題解決(思考環境、思考挑戦度)
・アカウンタビリティ(行動自由度、マグニチュード、インパクト)
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・メリット:合理的で国際的に通用。市場流動性が高い米国では適合。
・日本での課題:職務の細分化・固定化が人事異動と相性が悪い/運用コストが高く、雇用慣行と噛み合わない。
■まとめ
ちなみに、日本の現状をまとめると、人事制度は以下のような形といえるようです。
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・職能資格制度:古い側面が強いが、製造業や技能職では依然残存
・役割等級制度:依然として日本企業のベース
・ジョブ型制度:専門職・グローバル人材で導入拡大。ただし完全移行は難しく「役割等級+ジョブ型」が実態
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本章を読んでみて、これまで「職能資格制度」「役割等級制度」「ジョブ型制度」「職務分類制度」が頭の中でごちゃごちゃしていました。しかし「社員区分制度」「社員格付け制度」という根本から整理することで理解が深まったように思います。
また、個人的には「職能資格制度=絶対的な能力で評価する」という考え方に強い抵抗感がありました。なぜなら、「能力とは環境との相互作用でしか測れないもの」と私は思うからです。しかし、異動やゼネラリスト育成が求められていた時代には、合理性があったんだと理解いたしました。
(ただ、個人的にはこの日本的雇用慣行の文脈の合理性が”呪縛”のようになっている感じがします…汗)
結局のところ、人事制度とは「短期的な利益を評価するのか」「長期的な成長を評価するのか」という問いであり、文化や雇用の歴史とも深く結びついています。だからこそ制度の輸入は単純にはいかず、日本なりの進化形を模索し続けているのでしょう。
背景を理解することは、自分自身の評価を冷静に眺めるためにも大切な視点だと改めて感じた次第です。大変勉強になりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯今月のランニング:0km
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