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令和7年7月6日(第4150号)
今週の一冊『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2775字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は、朝から20kmのランニング。
その他、大学院のイベントへの参加、家族とお出かけ等でした。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日は、今週読んだ本の中から一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナー。今週ご紹介の一冊はこちらです。
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『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』
齊藤ジン
https://amzn.asia/d/i8uB6GS
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こちらの著書は、米ワシントンで30年にわたってヘッジファンドに助言してきた投資コンサルタントによる著書です。
著者の齊藤ジンさんは、米トップ校のSAISで修士号を取得後、G7グループでの機関投資家や政府への助言を経験してきた学術・金融・政府関係分野を横断的にわたるキャリアを築いてきたプロフェッショナルです。
そんな彼女が、初の著書として書いたのがこちらの一冊。
「日本は今、数十年に一度のチャンスを迎えている。それを伝えたいと思って本書を書きました」
という冒頭のメッセージとともに始まります。
こうした”つかみ”は、正直よく聞く話ではあると思いつつ、実際に読んでみたところ、「めちゃくちゃ面白かった…」という感想です。
ということで、早速中身をみてまいりましょう!
■本書の概要
本書の主張の出発点は「新自由主義というゲームのルールが崩れ始めている」という視点から始まります。
ちなみに、新自由主義(neoliberalism)とは、”「市場の自由」を最大限に尊重し、国家の介入を最小限に抑えることが経済成長や効率性を高めるという考え方”です。(乱暴にいえば「市場に任せれば、うまくいく」という考え方です)
1980年代以降、世界を覆ってきた「市場原理万能(新自由主義)」の空気。それが今、終わりつつあると述べます。
なぜなら、その新自由主義により、格差と分断が起こったことを始め、そして「新自由主義とはコンフィデンス・ゲーム(信頼だけで成り立つゲーム)だった」という表現で言い表します。
そして現在は、むしろ「国家の関与」が求められている。ウクライナとロシア問題にせよ、半導体の生産量にせよ、市場に国が積極的に関わり、調整を始めるようなゲームチェンジが始まるフェーズに入ったと述べます。
そんな現実が、金融市場と地政学の両面から描かれていました。
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・はじめに 日本復活の大チャンスが到来した
ー新自由主義の終わり/米国主導の“カジノ”
・第1章 新自由主義とは何だったのか?
ーコンフィデンスゲーム/小さな政府→大きな政府
・第2章 私はいかにして新自由主義の申し子になったのか
ー著者のキャリアと市場観
・第3章 「失われた30年」の本質
ー雇用死守と成長停滞/構造的課題
・第4章 中国は投資対象ではなくなった
ー人口減速/国家資本主義のリスク
・第5章 強い日本の復活
ー資本再配置/半導体・防衛・GXへの機会
・第6章 新しい世界にどう備えるか
ー外交・安保戦略/投資ポートフォリオの組み替え
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■主なメッセージ
◎新自由主義は「コンフィデンス・ゲーム」であり、瓦解する
過度な市場万能主義は「コンフィデンス・ゲーム(信認ゲーム)」に過ぎず、格差拡大と価値観の分断が臨界点を越えたことでルール自体が書き換えられつつある。
これは1970~1980年代から世界で起こってきた流れだが、日本はそこに乗らなかった。「雇用を守る」というディフェンシブなことを行ってきたゆえの低成長もあったと言える。しかし世界的にすでに「大きな政府」への振り子の揺り戻しが見られている。
◎米国の柔軟性は覇権を維持する、中国の構造的衰退が起こる
米国はドル基軸と軍事力で“カジノのオーナー”たる地位を保ち続ける。
カジノのオーナーは「ゴールポスト」を変更できるのが強みである。
覇権国家はGDPの50%を超えるようになると、”締め付け(つぶし)”にかかる。そのことによって、日本も1930年と1980年代にエネルギーや輸出にまつわる規制が起こり、「失われた30年」に突入することになった。
そして、米国では、国内で大きな政府へ回帰している。小さな市場が格差や分断を生み、臨界点を超え始めたからである。
対照的に、中国は人口動態・技術・資本流入の三重苦に直面し「投資対象」から外れ始めている、米中対立における「マラソン対決」では、人口・技術等の比較から、米国が勝つ確率が非常に高い。
◎「失われた30年」は“雇用の死守”による社会的コストだった
日本の長期停滞は必ずしも失敗ではなく、世界が新自由主義にいた中、雇用を守り、社会安定を優先した結果と位置づけられる。
失われた30年というが、蓄積が合ったから致命的なダメージにはなっていない。ここから、周回遅れで新秩序に合流できる好機になりうる。
◎日本復活の鍵は「防衛・エネルギー・先端製造」への選択と集中
日米安保環境の激変で米国との役割分担が明確化した。特に、中国という共通の目標があることで、日本は”カジノのオーナー”に勝たせてもらいやすい(あまり言いたくない表現ですが)状況である。
はしごを外されることがなく、強い日本を求められているという中では、マクロな流れとして、順風の市場環境となる。また解雇なども以前より叩かれづらくなり、またゾンビ社員も退職し、労働力不足となり、生産性も高めざるを得ない状況になっている。
これは視点を変えれば、好機と捉えられる。
◎個人・企業が取るべき行動
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・地政学リスクを踏まえた資産分散
・国際サプライチェーンの再構築と友好国シフト
・英語圏+アジア複線化による人的ネットワーク強化
・「日本発ソリューション」への投資・研究開発強化
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■まとめと感想
読んでみて率直に、「視野が広がった」という感覚を持っています。
私のような地政学、金融市場などはほぼ素人のような人が読んでも、面白くスイスイ読める内容です。…にも関わらず、マクロ視点で世界情勢がどう変わってきて、これからどう変わっていくのかの全体像がイメージできるのが、素晴らしく面白かったです。
加えて、著者の主張に関わるそれぞれの具体的な数字(人口動態、雇用統計)や政治的なやりとり(習近平やプーチン、トランプらの発言)、そしてその考えられる背景(ファンドマネジャーのやりとり、政府機関でのやりとり)なども端的に引用し、物語として構成しています。
陰謀論的な書き方ではなく、「事実を扱いつつ、物語として伝える」という客観的な視点も説得力がありましたし、齊藤ジンさんがトランスジェンダーであるという個人的な話を語りながら、世界と個人をつなぐように物語に温度を加えられているのも、世界という壮大な話を私たちの日常に根を伸ばす感じがしたのも、とても良いと感じます。
概念的には、”世界情勢のマクロな動きが、日本の経済に影響し、そしてそれが生活にも影響する”という話はわかっているものの、事実ベースで、どのような歴史軸・空間軸での連鎖が起こるのかは、正直よくわかっていませんでした。
しかし、それを一般の人がわかる知識の範囲内で、超一流の頭脳と知識と経験の持ち主が物語として、要約してくれたと感じた一冊でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯強み文献おかわり100本ノック:91本目
◯今月の健康&運動習慣:7月のランニング距離 25km
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